狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「どうした?」とギデオンがリオの顔をのぞき込む。
 リオは「アンが何か言ってる」とギデオンを見上げ、再びアンを見た。しかしアンの声は、もう聞こえない。
 アンは順番にリオとギデオンを見ると、その場に伏せて目を閉じてしまった。
「アン?」と声をかけるけど反応は無い。

「話す気はないようだな。アンは何と?」
「うん…嫌な気配だ、だって」
「ふむ。それだけではよくわからぬ」
「隣国の話をしてたから、ギデオンが招待された国のことを言ってるのかも」
「なるほど」
「ギデオン、ほんとに行くの?」
「いや、なんとか断る」
「そっかぁ」

 リオは何となく不安に感じていた。だからもしギデオンが行くなら、使用人としてついて行くつもりだった。でも行かないで済むなら、それがいい。
 そもそも、招待されるなら王族じゃないのか?ギデオンは貴族だろ?たぶん優秀な人物として名が知られてるのだろうけど、行く必要ないよね?
 リオは、そう勝手に判断した。
 詳しくは王城に着いてからでないとわからない。今はただ、こうやってギデオンの傍で過ごしたい。
 しかしリオの願いむなしく、二日後には王都へと出発したのである。


「わあ、寒い時期でも賑やかだね!」
「まあな。国で一番、何でも揃ってる都市だからな」
「あ、あそこ!前に来た時にはなかった店がある。後で行ってもいい?」
「いいが、俺はたやすく王城を出られな…」
「大丈夫です。俺が一緒に行きます」

 リオはギデオンと共に王都に来た。他にはアトラスやジス、ニコラと他三名の騎士の総勢八名の一行だ。
 馬上でのリオとギデオンの会話に、アトラスが入ってきた。前に座るリオを大事そうに抱くギデオンに睨まれたが、アトラスはひるまない。リオがギデオンの傍にいる限り、ひどくは怒られないと学習したのだ。

「いやいや、だってギデオン様やニコラさんは、王城内に部屋を与えてもらえますけど、俺達は王城には泊まれません。王都で待つことになるでしょう?だから待ってる間に、リオにつき合います。リオ、それでいいよな?」
「うん、いいよ。いつもありがとう、アトラス」
「いいってことよ」
「アトラス」

 へへっと笑っていたアトラスだが、低い声で名を呼ばれて肩を揺らし、ギデオンの斜め後ろにいた馬を更に後ろに下げた。そして聞き取れないほどの小さな声で返事をした。

「はい…なんでしょうか」
「リオに何かあったら…わかってるだろうな?」
「もっ、もちろんですよ!それにジスやアンもいるから大丈夫です!」
「まあそうだな。アンがいるから大丈夫か」
「え…アンだけ信頼されてる…?」

 リオは、ギデオンにめられるアトラスを心配して見ていたけど、最後の言葉に思わず吹き出した。

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