狼領主は俺を抱いて眠りたい

明樹

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「旅の護衛にビクターを連れて行ってもよいぞ?」
「いりません。邪魔です」
「ははっ!そうか。では目立たぬよう、お忍びで行くといい」
「そうします。あ、それと遅くなりましたが、立太子の儀のおりの騒動についてですが」

 早く話を終わらせ部屋を出ようとしたのか、腰を浮かしかけていたギデオンが、再び腰を下ろして口を開く。
 しかし王が、行っていいというように、手を振る。

「ああいい。その件に関しては報告書をもらっているし、ローランやビクターからも聞いている。それよりも早く中庭に行け。軽食を用意してある。ローランもそこにいるだろう。皆でゆったりと過ごせ」
「わかりました。ありがとうございます」

 ギデオンが礼を言う。
 リオも、「ありがとうございます」とギデオンにならって頭を下げた。

「リオ、旅に必要な物があれば、遠慮なく言え。なんでも揃えてやる」
「え…そんな。いいのですか?」
「当然だ。ギデオンは自分で揃えろ」
「は?俺とあなたは血縁関係では?それなのにリオと態度が違う」
「そうだが、リオの方がかわいくてな。ローランもリオを好ましく思っているようだが、わかる気がする。リオ、ギデオンがいなくとも、いつでもここに遊びに来るといい」
「え?あ…はい」

 リオは答えて、そっとギデオンを見上げる。
 ギデオンは、震え上がるような怖い顔で、王を睨んでいる。
 いくら血縁関係であっても、失礼すぎじゃないのか?えーどうしよう。王が怒ったら、俺じゃ止められないよ?
 しかし心配するまでもなく、王が困ったように笑った。

「そのような怖い顔をするな。当然、おまえも大事な甥だ。ほら、早く行け。皆が待ってる。夜は共に食事をしよう」
「…はい。では、失礼します」
「失礼します!」

 ギデオンとリオは、同時に立ち上がり、王に挨拶をして部屋を出た。
 廊下に控えていた騎士にも軽く頭を下げて、部屋を離れる。リオは、ギデオンの少し後ろを歩いていたが、ギデオンに手を引かれ、隣に並んだ。
 リオは、ギデオンの手を握り返して小さく聞く。

「ギデオン、怒ってる?」
「…怒ってはいない」
「明らかに怒ってるじゃん。妬いてるの?」
「そうだ…。俺のリオなのに、誰もが構いにきて面白くない」
「ふふっ、大丈夫だよ。俺が最も好きなのは、ギデオンだから」
「…わかっている。すぐに機嫌を損ねて、俺は情けないな」
「ううん。そういう姿も見せてくれて嬉しい。そういうところも好きだよ」
「ありがとう。俺も好きだ」
「うん。ねぇ、旅が楽しみだな。出会った時も旅の途中だったもんね」
「そうだな。あの時のリオは、怪しかった」
「ええっ!そんなふうに思ってたのかよっ。ギデオンの方が怪しくて怖かった!」
「あの頃は不眠で、常に機嫌も悪かったからな。怖がらせて悪かった。今はどうだ?」
「今は怖くないよ。優しいしくまもなくなってかっこいい。だからもう、俺が一緒に寝なくても眠れるんじゃ…」
「無理だ。リオがいないと眠れない。いや、リオがいないと息もできない」

 
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