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ふう、とロジェさんが息を吐いた。穏やかな瞳。肩の荷を下ろしたかのよう。
「これで気兼ねなく君を抱けるな」
ロジェさんがその両手で僕の頭を抱えて、くしゃくしゃに混ぜた。
「な、ロジェさん。なに、やめ」
ぐわんぐわんに揺られる頭を抑えるため、ロジェさんの手首を掴む。何その犬を撫でるみたいなの。
「悪い、照れ隠しだ」
「もう、ロジェさんってば」
「嬉しくてな。これほど心穏やかなのはいつぶりだろうかと思ってね」
頬を、耳を撫でていく。指先から愛おしさが伝わってくる。よくよく心情を話してくれるのは、これまで抑圧されていた反動だろうか。本当はたくさん話す人だったのかもしれない。それが、一人のわがままのせいで……。
「ロジェさん」
「ん」
「続き、しましょうよ」
ご飯? そんなもの今はいい。こちとらお預け食らって不完全燃焼だったんだ。ちゃんと落とし前をつけてもらいたい。
「いいのか。今の私だと、加減はできそうにないぞ」
「望むところです。ロジェさんの本気とやらを見せていただきましょうか」
「なんだそれは」
立ち上がった僕は、扉の施錠を確認した。振り向いたときには、ロジェさんは背中を向けて高い窓を見上げていた。月の光が差し込み始めていた。
「ロジェさん」
彼がゆっくりと振り返る。炎が揺れてロジェさんの横顔を薄暗い中で浮かび上がらせた。
僕は歩み寄る。広げられた両腕に絡め捕られ、彼に頬を摺り寄せた。
額の横の脈動を感じる。ゆったりとした呼吸が耳にかかる。
それだけでも僕は熱くなっていた。たまらなくなって、身体全体で彼を抱いた。
俄かに顎を掴まれる。その性急さに歯がぶつかり合って、ガチガチと何度も鳴った。それでも止められなかった。欲しくて、その舌が欲しくて追いかけて、背中を搔き抱いた。
唇の端を噛み、舌を絡めて、吸い上げる。
お互いが譲らず、ロジェさんは僕の頭を抱えてきた。
「ロ、ジェ……ん」
「ナ……セルッ」
抑え込まれ、なすがままに吸われる。
はやく、はやく。早く欲しい。
ロジェさんの精悍な背中をこの腕に感じて、僕はもう我慢なんてできなくなっていた。
「ン……ああッ」
ロジェさんの手が、服の中に回っていた。腹を撫でられて、胸を掴まれて僕は喘いだ。
引っぺがされるようにシャツが奪われる。そのまま腰を抱かれて、寝台に押し倒された。
息もつけないまま、また舌が絡み合った。首に手を回してロジェさんを抱く。擦り合わせ、舐めとり、噛みつく。
それでも足りなかった。全然足りなかった。どうやったら、ロジェさんをもっと感じられるのか、解らなかった。
重なり合った身体が熱い。むずがゆいそこを押し付けて擦り合う。
抱いた背中の固さが好きで好きでたまらなかった。肩を動かすたび、身体を捩じるたびにその筋がしなやかに形を変えるのだ。この気持ちどうしたらいい。
掌でロジェさんを感じている間に、僕の下履きも取り払われていた。興奮したそれが、ロジェさんを見上げて濡れそぼっていた。身体を起こしたロジェさんも素早く上下とも脱いでしまった。
両腕を挙げた時の脇から腰にかけての影に僕は軽くめまいがした。美しい。これほどに完璧な造形はあるだろうか。しかもそれが、目の前に在る。ロジェさんが被さってくる前に抱き着いた。
「ナセル」
困惑気味のロジェさんに構わず、その筋を撫で上げ、唇を押し付けた。頬ずりしてしがみ付く。
「最高です。ありがとうございました」
「なんだ。まだ、始まるところだろうに」
彼は顔をクシャと綻ばせ笑った。あ、もう。幸せ。
手さぐりに香油を取ったロジェさんが僕の腹に垂らしてきた。暖かい掌で腹と腰を撫でまわす。それだけでもイッてしまいそうになる。腰がビクビクと跳ねている。腹の上に垂らされたそれを僕も指にとり、ロジェさんに擦りつけようと手を伸ばした。
「ぅわ、ナセル」
驚く口に、唇を押し付ける。隙ありですよ。唇ごと舐めとって、歯茎に舌を滑らせる。並びのいい歯に甘噛みされてもみる。
香油でべたべたになった両手でロジェさんの腰を撫でて、茂みの先へ探った。それは熱く硬く腫れていた。
「ぐ……うぅ」
ロジェさんが呻いた。耳が、耳から脳髄が解けていくかと思った。
呻いたロジェさんは、耐えきれなくなったのか、僕の胸に額をこすりつけた。
「これで気兼ねなく君を抱けるな」
ロジェさんがその両手で僕の頭を抱えて、くしゃくしゃに混ぜた。
「な、ロジェさん。なに、やめ」
ぐわんぐわんに揺られる頭を抑えるため、ロジェさんの手首を掴む。何その犬を撫でるみたいなの。
「悪い、照れ隠しだ」
「もう、ロジェさんってば」
「嬉しくてな。これほど心穏やかなのはいつぶりだろうかと思ってね」
頬を、耳を撫でていく。指先から愛おしさが伝わってくる。よくよく心情を話してくれるのは、これまで抑圧されていた反動だろうか。本当はたくさん話す人だったのかもしれない。それが、一人のわがままのせいで……。
「ロジェさん」
「ん」
「続き、しましょうよ」
ご飯? そんなもの今はいい。こちとらお預け食らって不完全燃焼だったんだ。ちゃんと落とし前をつけてもらいたい。
「いいのか。今の私だと、加減はできそうにないぞ」
「望むところです。ロジェさんの本気とやらを見せていただきましょうか」
「なんだそれは」
立ち上がった僕は、扉の施錠を確認した。振り向いたときには、ロジェさんは背中を向けて高い窓を見上げていた。月の光が差し込み始めていた。
「ロジェさん」
彼がゆっくりと振り返る。炎が揺れてロジェさんの横顔を薄暗い中で浮かび上がらせた。
僕は歩み寄る。広げられた両腕に絡め捕られ、彼に頬を摺り寄せた。
額の横の脈動を感じる。ゆったりとした呼吸が耳にかかる。
それだけでも僕は熱くなっていた。たまらなくなって、身体全体で彼を抱いた。
俄かに顎を掴まれる。その性急さに歯がぶつかり合って、ガチガチと何度も鳴った。それでも止められなかった。欲しくて、その舌が欲しくて追いかけて、背中を搔き抱いた。
唇の端を噛み、舌を絡めて、吸い上げる。
お互いが譲らず、ロジェさんは僕の頭を抱えてきた。
「ロ、ジェ……ん」
「ナ……セルッ」
抑え込まれ、なすがままに吸われる。
はやく、はやく。早く欲しい。
ロジェさんの精悍な背中をこの腕に感じて、僕はもう我慢なんてできなくなっていた。
「ン……ああッ」
ロジェさんの手が、服の中に回っていた。腹を撫でられて、胸を掴まれて僕は喘いだ。
引っぺがされるようにシャツが奪われる。そのまま腰を抱かれて、寝台に押し倒された。
息もつけないまま、また舌が絡み合った。首に手を回してロジェさんを抱く。擦り合わせ、舐めとり、噛みつく。
それでも足りなかった。全然足りなかった。どうやったら、ロジェさんをもっと感じられるのか、解らなかった。
重なり合った身体が熱い。むずがゆいそこを押し付けて擦り合う。
抱いた背中の固さが好きで好きでたまらなかった。肩を動かすたび、身体を捩じるたびにその筋がしなやかに形を変えるのだ。この気持ちどうしたらいい。
掌でロジェさんを感じている間に、僕の下履きも取り払われていた。興奮したそれが、ロジェさんを見上げて濡れそぼっていた。身体を起こしたロジェさんも素早く上下とも脱いでしまった。
両腕を挙げた時の脇から腰にかけての影に僕は軽くめまいがした。美しい。これほどに完璧な造形はあるだろうか。しかもそれが、目の前に在る。ロジェさんが被さってくる前に抱き着いた。
「ナセル」
困惑気味のロジェさんに構わず、その筋を撫で上げ、唇を押し付けた。頬ずりしてしがみ付く。
「最高です。ありがとうございました」
「なんだ。まだ、始まるところだろうに」
彼は顔をクシャと綻ばせ笑った。あ、もう。幸せ。
手さぐりに香油を取ったロジェさんが僕の腹に垂らしてきた。暖かい掌で腹と腰を撫でまわす。それだけでもイッてしまいそうになる。腰がビクビクと跳ねている。腹の上に垂らされたそれを僕も指にとり、ロジェさんに擦りつけようと手を伸ばした。
「ぅわ、ナセル」
驚く口に、唇を押し付ける。隙ありですよ。唇ごと舐めとって、歯茎に舌を滑らせる。並びのいい歯に甘噛みされてもみる。
香油でべたべたになった両手でロジェさんの腰を撫でて、茂みの先へ探った。それは熱く硬く腫れていた。
「ぐ……うぅ」
ロジェさんが呻いた。耳が、耳から脳髄が解けていくかと思った。
呻いたロジェさんは、耐えきれなくなったのか、僕の胸に額をこすりつけた。
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