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城主がグラスを煽り飲み干す。
「これだって、恩恵だろうに。しっかし、こんなむさ苦しいところで出されてもな」
含み笑いにロジェさんが、若干戸惑っている。僕だって気にしていないわけじゃない。僕のについては途中で水で割っていたが、それでも彼ら二人が魅力的に見えてきていたのは気づいていた。ただ、ロジェさんと将軍のはストレートだ。
「俺に関しては、元々中てられているからちょっと元気にさせてもらった程度だが、カントナ君は大丈夫か」
「はァ」
受け答えはしっかりしているが要領を得ない返事ではある。さすがロジェさん鉄壁の自律心である。
「なんだ、影響がないのならいいが」
「滋養強壮だとは聞いていますが」
ボトルに視線を落とす。一度は干からびたそれが酒の中で揺られていた。
「そうか」
将軍がこっちを向く。とぼけて頭を掻くしかない。言うタイミングを逃しただけです。
「まぁいいさ。さて、だいぶ夜も更けてしまったな。そろそろ戻るか」
そう言って立ち上がる彼の足元はぐらついていた。咄嗟に身体を支える。熱いくらいの体温が伝わってきて、むせるような汗の匂いにめまいを覚える。
「すまないな。魔力には大丈夫なんだが、酒精にはあまり強く無くてな」
「だったらあまり飲まないでくださいよ」
「すまんすまん。久しぶりにアルディ以外との事だったからね」
預けられた体重に身体が沈む。さらに背中を叩かれてふらついた。これであの煙突の中を帰ることができるのか、不安になる。何だったら、夜遅い今なら外を歩いてもいいんじゃないだろうか。と言うか、なんで皆の前に出ないのか聞きそびれた。
「副官を呼びましょうか」
ロジェさんが提案する。反対側を支えようと将軍の腕を掴んでいた。
「ダメダメ。もっと怒られる、っとォ」
派手にふらついて、態勢を崩してしまう。
「長官」
支えようとしたロジェさんの腕をすり抜け、僕の方に倒れてきた。その躯体に引きずられるまま倒れ込んでしまう。
「うわ」
「あはは、すまんすまん」
下敷きになった僕は、将軍の頭を胸で抱いていた。自重を支えようともしない彼の体重をもろに受けて潰れそうだ。立派な体躯を感じて、惚れ惚れとしそうになるがそれどころではない。
「ブルイエ長官」
ロジェさんが彼をひっぱり起こし、やっと身動きができるようになる。なのに、藻掻く僕を愉快そうに笑って太い腕が撫でまわしていた。
「な、に、やめてください」
髪の毛ををわしゃわしゃに混ぜられ困惑する。身体を起こしても、その厳つい掌で弄ばれていた。
「いやァ、可愛いかったから、つい」
「長官」
ロジェさんの声。それに対しても長官は豪快に笑って返す。
「ちゃんと撫でてやるから怒ってくれるな。何、君らは兄弟みたいに仲良くて、羨ましいな」
仲良くない兄弟もいるんですよ、気を付けてください。ほらロジェさんが、困惑しているじゃないですか。
「いやァ、懐かしい」
よいしょ、と立ち上がる。宣言通りロジェさんの頭も撫でている。珍しい絵を見れたと興奮しそうになるが、僕は水を汲んだコップを将軍に差し出した。
「俺にも幼いころから助け合ってきた親友がいたんだ。まぁ、あの事件に巻き込まれてどうなったかわからなくなってしまったが」
水を飲み干した顔は素面かと思うくらい、澄んだ表情だった。
「これだって、恩恵だろうに。しっかし、こんなむさ苦しいところで出されてもな」
含み笑いにロジェさんが、若干戸惑っている。僕だって気にしていないわけじゃない。僕のについては途中で水で割っていたが、それでも彼ら二人が魅力的に見えてきていたのは気づいていた。ただ、ロジェさんと将軍のはストレートだ。
「俺に関しては、元々中てられているからちょっと元気にさせてもらった程度だが、カントナ君は大丈夫か」
「はァ」
受け答えはしっかりしているが要領を得ない返事ではある。さすがロジェさん鉄壁の自律心である。
「なんだ、影響がないのならいいが」
「滋養強壮だとは聞いていますが」
ボトルに視線を落とす。一度は干からびたそれが酒の中で揺られていた。
「そうか」
将軍がこっちを向く。とぼけて頭を掻くしかない。言うタイミングを逃しただけです。
「まぁいいさ。さて、だいぶ夜も更けてしまったな。そろそろ戻るか」
そう言って立ち上がる彼の足元はぐらついていた。咄嗟に身体を支える。熱いくらいの体温が伝わってきて、むせるような汗の匂いにめまいを覚える。
「すまないな。魔力には大丈夫なんだが、酒精にはあまり強く無くてな」
「だったらあまり飲まないでくださいよ」
「すまんすまん。久しぶりにアルディ以外との事だったからね」
預けられた体重に身体が沈む。さらに背中を叩かれてふらついた。これであの煙突の中を帰ることができるのか、不安になる。何だったら、夜遅い今なら外を歩いてもいいんじゃないだろうか。と言うか、なんで皆の前に出ないのか聞きそびれた。
「副官を呼びましょうか」
ロジェさんが提案する。反対側を支えようと将軍の腕を掴んでいた。
「ダメダメ。もっと怒られる、っとォ」
派手にふらついて、態勢を崩してしまう。
「長官」
支えようとしたロジェさんの腕をすり抜け、僕の方に倒れてきた。その躯体に引きずられるまま倒れ込んでしまう。
「うわ」
「あはは、すまんすまん」
下敷きになった僕は、将軍の頭を胸で抱いていた。自重を支えようともしない彼の体重をもろに受けて潰れそうだ。立派な体躯を感じて、惚れ惚れとしそうになるがそれどころではない。
「ブルイエ長官」
ロジェさんが彼をひっぱり起こし、やっと身動きができるようになる。なのに、藻掻く僕を愉快そうに笑って太い腕が撫でまわしていた。
「な、に、やめてください」
髪の毛ををわしゃわしゃに混ぜられ困惑する。身体を起こしても、その厳つい掌で弄ばれていた。
「いやァ、可愛いかったから、つい」
「長官」
ロジェさんの声。それに対しても長官は豪快に笑って返す。
「ちゃんと撫でてやるから怒ってくれるな。何、君らは兄弟みたいに仲良くて、羨ましいな」
仲良くない兄弟もいるんですよ、気を付けてください。ほらロジェさんが、困惑しているじゃないですか。
「いやァ、懐かしい」
よいしょ、と立ち上がる。宣言通りロジェさんの頭も撫でている。珍しい絵を見れたと興奮しそうになるが、僕は水を汲んだコップを将軍に差し出した。
「俺にも幼いころから助け合ってきた親友がいたんだ。まぁ、あの事件に巻き込まれてどうなったかわからなくなってしまったが」
水を飲み干した顔は素面かと思うくらい、澄んだ表情だった。
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