妊娠したのにカレが責任を取らない上に他の女と付き合うことにしたとか言ってきた

赤茄子橄

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私の手元には体温計に似た形の白い棒状の検査キット。
その中央「終了」と「判定」という文字の隣には、どちらもくっきりと赤の縦線が表示されている。

「やったぁ!とうとうデキたぁ~!」

私は軽い吐き気を感じて優れない体調の中、買い物に来ていたデパートの御手洗いで、小さくガッツポーズをする。

ここしばらく、彼に子どもを妊娠してほしいって言われていたし、私ももう28歳でちょうどいい頃合いなのもあって、彼の子どもがほしかったから、とっても嬉しい。
ここのところ、彼とスるとき、というかこの2ヶ月くらいはほぼ毎日、ずっとナマでシてたし、そろそろ当たると思ってたんだよね~。

彼になんて報告しようかな~。子どもができたら今までよりもっとたくさん愛してくれるって言ってたし、どんな報告しても喜んでくれるだろうな。

これからは子どもが居る生活に変わっていくことになるんだろうけど、カレもカレの実家もお金持ちだから私達はお金の心配をする必要はない。
それに、カレは子どもが好きだからきっとこの子の面倒もしっかり見てくれるだろうな。
だから、不安はほとんどないんだぁ。

あードキドキするなぁ。どんな表情をするかなぁ。
まだ結婚はしてないけど、この妊娠検査薬を見せて子どもができたことを伝えたら、カレはきっと「結婚しよう」って言って受け入れてくれるはず。
本当は子どもができる前に籍を入れたかったんだけど、カレが「今はまだサプライズを準備してるから待ってほしい」って言っていたから、私は「それを言っちゃったらサプライズじゃなくなるじゃん」なんていって笑いながらも、「しょうがないなぁ~」なんて待ってあげることにしたんだよね。

そんな話をしてから、もうすぐ半年が経つ。でも未だに何も音沙汰がなかったから、最近はちょっと不安になっていたところだったの。
でもさすがのカレも、子どもができたら四の五の言ってられないよね。
サプライズを待ってあげられないかもしれないのはちょっと申し訳ないけど、こんなに私を待たせたあなたが悪いんだからねっ。
それにカレはそれくらいのことはきっと笑って許してくれる。しょんぼりした顔をしながら「待たせちゃってごめんね」なんて言ってさ。だってカレはとっても優しい人だから。


*****


「ねぇねぇ、私、とうとうデキちゃったみたいなんだ!」

私は検査薬を見せながら、彼との愛の結晶がデキたことを伝えた。
いろんな驚かし方を考えたけど、ここは変に話がこじれたりしないよう、奇をてらわずにストレートに伝えることにした。

「そうなんだ!おめでとう!とうとうデキたんだ!よかったね!」

いつも表情が乏しいカレだけど、このときはいつもより少しだけ表情筋がよく動いて微笑んでいるようにも見えた。それだけ喜んでくれてるのだろう。
うふふ、伝える前はどんな反応されるかちょっと怖かったけど、このいい雰囲気なら結婚の話をだしても大丈夫そうねっ。

「うん、ありがとぉ。それでね?子どももできるんだし......私達、そろそろ......籍を入れないかしら?」

思い切って伝えると、カレはそのぎこちなく微笑んだ表情を崩さないまま、「あー」と言ってから、しばらく固まってしまった。
サプライズのタイミングとか、いま私にどう声をかけるかとか悩んでるのかな?

カレは昔からそうだもんね。いろんな意思決定のたびにすっごく悩んで答えを出そうとする。
だから私はいつも、カレが答えをだすのを、話し出すのを待ってあげることにしてるんだぁ。




今私達が居るのはカレの部屋。だから周りには誰も居なくてカレを邪魔するものはなんにもない。
部屋の中に沈黙が流れ出してもうすぐ5分は経つ。

流石にそろそろ長すぎないかな?
もしかして、まさかと思うけど、私の質問忘れちゃってる?ふふっ、おバカなんだから♫
今回は待つだけじゃなく、もう一回質問をしてあげる。

「ねぇ?結婚......しましょう?」

声をかけると、カレの肩はピクッと小さく跳ねたけど表情は変わらず、数瞬だけ間を開けた後、口を開いた。

「は?結婚なんてしないけど?ってか、もうお前との関係は終わらせて、他の女と一緒になるから」


*****


思えばカレと付き合い始めたのはもう10年も前。大学1年生のときにサークルで出会って、面倒見も人当たりも良くて皆に慕われていたカレに惹かれて私から告白した。
初キスも処女も、高校生で付き合った彼氏に全部あげちゃってたから、カレにはなんにもあげることはなかったけど、カレはそんなことは気にしないと、私をたくさん甘やかしてくれたし、いろんなものを買ってくれたし、いっぱい愛してくれた。

カレは顔もいいし、お金もあるし、人当たりも良好。しかも実家は由緒正しい血筋だという。表情が少し硬いのと男根がちょっとだけ小さくて早いの以外に目立った欠点はない人。
そんな人だったからいろんな女の子がカレを狙って近寄ってきてたけど、カレがちゃんと適度な距離を保つよう心がけてくれたおかげで大きな問題にはならなかった。
カレにはとても仲のいい女の子の幼馴染もいて、何かと相談にのったりしてたみたいなんだけど、そのことも節度ある関係を保ってくれていたから大きく心配はしていなかった。

ただ大学4年生の時、1回だけ浮気が明らかになって喧嘩になっちゃったことはあった。
だけど、そのときもなんだかんだで仲直りして危機を乗り越えたんだよね。

そんなカレは大学を卒業して、一流商社の営業マンとしてバリバリ働いてる。
そこで今や28歳にしてすでに課長に昇進するほどの驚異的な成果をあげている。

私はというと、大学を卒業した後、1年くらいは事務職をしてた。
だけど、いろいろとしんどくて結局退職してからは健康系の仕事をほそぼそとしているくらい。

30歳も近づいてきたし、結婚して安定したい気持ちが強くなってきていたところだったし、彼も子どもを孕んでほしいって言ってくれていた。
そんな中判明した今回の妊娠だった。

だからまさか、責任をとってもらえないどころか、他の女と付き合うことにしたなんて言われるとは思ってもみなかった。

あれからカレとはいくつか言葉を交わしたけど、結婚する気はないらしい......。
新しい女は昔から仲の良かった幼馴染だという。
そんな素振りはなかったのに......。

だけど、もしかしたらカレも子どもができたとわかって、改めて考えたら不安になっちゃってそういうことを言っちゃったのかもしれない。
少し間を開けて話せばわかってくれるかもしれない。だから......。

「......また落ち着いてから話そう......?」

 そう伝えると、カレも「そうだな、話さないとな」と素直に聞いてくれたので、ひとまず帰ることにした。



*****


あれから1日が経った。

今日も彼の家に来ている。
改めて妊娠したことから話すと、彼は落ち着いた様子で少し硬い笑みを浮かべながら「結婚、するんだろ?」と言う。

私が「そのつもりだよ」って伝えると、彼はそれまで以上に口元を歪ませながら喜んでくれる。
これからのことをひとしきり話し合った後、ご飯を食べてゆっくりと雑談して過ごした。

そしてその夜。いつもと同じようにベッドに誘われる。

「ふふっ。でも、今はお腹に子どもがいるから後ろの穴でねっ」

そうだ。私のお腹の中には私達の子どもが居るんだからね♫

私はほんの少しだけお腹に気を遣いながらも、明日が2人とも休みであるのをいいことに、いつもとは違うプレイを中心に彼と朝まで繋がった。


*****


次の朝、私は彼の腕の中で目を覚ます。しっかりした腕に抱かれているととても気持ちがいい。

今日は休みなんだけど、いつまでも寝たままじゃ駄目だと思い、彼をキスで起こす。
2人とも生まれたままの姿だったので、そのまま1回戦をしてから、適当に服を着てご飯を食べた。

もうすぐ時計の針が頂上で重なるという頃、ピンポーンと部屋の呼び鈴が1つ鳴った。

宅配便かなにかかな?

残念ながらこの部屋にはインターホンがないので、直接ドアを開けて対応するしかないのがちょっと面倒なんだよね。

心の中でちょっとした愚痴をこぼしながら「はいはーい」とドアを開ける。





そこには警察が............いたりしたわけじゃなかった。
郵便、というにはすごい量の荷物が届いていた。

軽トラックの荷台には、たくさんの見覚えのある荷物が積まれていた。
私の荷物だ。

カレ・・の部屋に置いていたはずの荷物が一式、今、目の前の、つまりの部屋の前に運ばれてきている。

私が状況を整理しきれず冷や汗を流していると、トラックの運転手さんが「今日すごく暑いんで、すみませんが早く搬入れさせてもらえますかね」と急かしてきた。

ちゃんと意味が理解できないまま、いや、本当はわかっていたけどわからないふりををして、荷物をの部屋の中に搬入する。
1Kしかなく狭いその部屋に荷物がぎゅうぎゅうに詰め込まれていく。その間、当然、彼も困惑していた。

「はい、最後にこれね。それじゃあ、ありがとうございました~」

すべての荷物を詰め込んだあと、トラックの運転手さんたちは私に1通の封筒を渡して帰っていった。

中身なんてほとんど想像がついていた。
封筒には送り主の名前はなく、宛名に私の名前が記されているだけ。

恐る恐る封筒を開けると、そこには1通の手紙が封入されている。

送り主は、予想通りカレ・・だったようだ。
そこに書かれていたのは......。









「お前の子どもが、そこにいるクズ男の種でできた子だっていうのは調べがついてる。
俺とお前はここしばらく行為に及んでいないし、お前がその男に毎日種を仕込まれてるのも判明している。
お前の浮気には半年前頃から気づいて探偵を雇ったり、いろいろしてたからな。
というか、こんな状況で俺が気づかないと思ってるとか、いくらなんでも俺のこと舐めすぎだろ。

これからはそいつとうまくヤると良い。さぞ上手くて気持ちいいんだろ?
もっとも、その男の陰茎はすぐにウチの手のものが切除するだろうから、この手紙を読んだらすぐにでもヤっとかないと、その後はできなくなるぜ。
お前もその男も、俺とウチの力で全力で叩き落とすから、幸せを感じられるのかは知らんが。
どこに逃げても無駄だぜ。ウチがこの国でできないことなんて、監視できないところなんてないからな。

昨日も伝えたように、俺は幼馴染と一緒になる。
だから2度と俺に接触してくるんじゃねぇぞ。

まぁ、お前みたいなクソ女がいるって教えてくれたおかげで、これから一緒になるヒトがさらに最高に輝いて見えるようになったことにだけは、感謝してやるよ。

それじゃあな、永遠に、さよなら」





あぁ......全部バレてたんだ。

絶望感に力が抜け、手紙をはらりと落としてしまう。
遠くで彼がなにか叫んでるような気がするけど、私にはもう聞こえない。

なんだか閉まってたドアが勢いよく開く音も聞こえる気がする......。
黒い服を来た男の人が一気に部屋に押し寄せてきているような気もする。

でも、もうどうでもいいや、もうオワリだもんね。

(完)








_____
** あとがき

わざわざ書くまでもないかもしれませんが、一応。

私:主人公。浮気女。大学4年の浮気もこいつ。健康系(デリヘル)で働いている。
カレ:表情の硬さと男の象徴の大きさが人並み以下なことを除けばハイスペックな彼氏君。
彼:主人公(浮気女)の浮気相手。男根の大きさとテクニックだけのチャラ男。もともと借金まみれのクズだったところに、カレ君とその実家の力により一生日の目を見ることができなくなる。
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