本能のままに

揚羽

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本能寺の変

鉄砲

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明智勢が本能寺を攻撃してから間もなく1時間が経過しようとしていた。もとより織田方は30人に対し明智方は1万人を超えており信長が奮戦しても形勢が変わることはなかった。

「やはり信長様であってもこの差を変えることはできないか。」

「光秀様いかがなされたのです。まるで信長に生きていてほしいと思っているような顔ですぞ。」

「あぁ、すまぬな利三。だがお主の言うとおり私は信長様に生きていてほしいと思ってしまうのだ。討ち取ろうとしている本人がだぞ。」

「いくら光秀様が願ってももうこの戦いは決着が着いたようなものです。あとは突撃を仕掛ければ、もう終わりでしょう。」

「そうだな、あともう一息だ。」


本能寺内部

「信長様!もうお逃げください!これ以上戦ってもこちら側の兵力がなくなるだけにございます!」

(やはり、俺よりも光秀のほうが一枚上手であったか。ならば…)

「蘭丸、鼓を打て。俺の最期の舞だ。」

「なっ…わ、分かりました…」

信長は燃え盛る本能寺内部へと入っていった。 

「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。一度生を享け、滅せるもののあるべき─」

ダーン…

「何だ、今の火縄の音は。普通のではなかったようだが…」


明智軍 本陣

「これより本能寺に突撃を仕掛ける。信長の首を取ったものは最大級の褒美をやろう。」

「皆の者!突撃!」

おぉぉぉ~~!!!

ダーン…

「ぐはっ…」

「おい!利三!大丈夫か!」

「光秀、様、急いで、お隠れ、くださ、い。」

「利三!!」 

(これだけの兵がいながら正確に利三を撃ち抜きおった。こんなことをできるのはこの日の本に一人しかおらん。)




「鈴木重秀!」


明智軍後方 

「おぉ、うまい具合に当たったなぁ!」

「何を浮かれておる、重秀。敵は山程いるのだぞ。」

「分かっておるわ。ていうか、なぜ重朝のほうが立場が上のようになっておる?わしは雑賀の頭領だぞ。」

「今はそんなことをどうでも良かろう。それよりも我らはすぐに本能寺へと向かいあの中にいる信長を助けねばならんのだ。それがあの方のご命令であろう?」

「どうでも良いって…まぁそれが命令であるし、すぐに本能寺へと向うぞ!」


明智軍本陣

「光秀様!急いでお逃げください!ここも雑賀の射程圏内でございます!」

「しかし、まだ信長を討てておらんではないか!」

「信長は本能寺の奥へと入っていきました!もう死んでいるでしょう!それよりも今は一度引き、信忠を討つべきです!」

「致し方ないか。皆の者!我らは一度引く!付いて参れ!」


本能寺内部

「信長様!敵が引いていきます!何があったんでしょうか…」

その時いきなりふすまが開いた。

「お主は織田信長であるか?」

「いかにも織田信長であるが貴様は誰だ。」

「わしは雑賀衆頭領鈴木重秀。お主を助けに参った。とにかくここは逃げるぞ!」

信長と蘭丸は雑賀衆に引かれ本能寺を後にした。



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