上 下
19 / 20

10 給食 ①

しおりを挟む
10 給食

①園児達にとって楽しい給食の時間だ,好き嫌いは多少あっても全員が楽しみにしている。エプロンを着けて,配膳が終わるまでうきうきだ。ちょっとでも触りたくてスプーンでつっつく園児も見受けられるけど、食べずに待っている。
 お調子者の太郎君は,みんなを笑わせようとするけど,あまり調子にのらないように保育士は声かけを毎日する。しかし、みんなが笑ってくれるのがうれしくてマシンガントークになってしまうことも時々あるのだ。保育補助についてくれている栄子先生が目配りを良くしてくれている。

 給食の時間になって栄子先生が,
「咲良先生,太郎君,何度も注意しているけど,良くかまないで飲み込んでいるわよ,どうせ,一番早く食べ終わったことをみんなに言いたいんでしょうけど,咲良先生も,もっと,太郎君に注意してよ」

 太郎君は栄子先生の言葉を聞いて,ちょっと悲しそうな顔をしている。太郎君はみんなより早く食べ終わることに優越感を感じているのかな,良くかんで落ち着いて給食を食べられるようにしてあげたいな。

 咲良先生が座っていた所からは太郎君が遠い位置にいたので,良くかまないで飲み込んでいることはわからなかった。そこで,自分の給食を持って,太郎君の側にすわった。

 栄子先生が,太郎君の顔を見て話した。
「ほら,太郎君,良くかまないから,咲良先生が注意しにきたよ」

しおりを挟む

処理中です...