おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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003 兄弟

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10年後。

早朝のヴィルガスタ領の首都ミラッドに勇ましい声が響いた。
訓練場ではオスカーシュタイン家の子息達が騎士を相手に武芸の鍛錬を行なっている。
テオドールの臣下である騎士達は幾多の戦場を生き抜いてきた強者揃いだ。
それだけに並の騎士とは腕前が違う。

「オラオラオラァーーーッ!」

「おおっ!なんと鋭い。さすがはアルフレッド様」

「まだまだ、こんなもんじゃないぜ!」

長男のアルフレッドは剣を用いて果敢に挑み、15歳とは思えぬ気迫で騎士と互角に渡り合っていた。
テオドールの武才を色濃く受け継いだためか長身で体格が良く、筋肉質で武芸に秀でている。
性格は豪気で自信家だが脳筋ではなく、一般的な素養を持っているため将来を有望視されていた。

「ジャミル様お怪我は?」

「大丈夫、続けてください」

「では、参ります」

次男のジャミルは槍の訓練を行なっていた。
アルフレッドより体格の劣るジャミルは自ら志願して槍の稽古に励んでいる。
次期当主の座を争うだけに同等に渡り合える手段を求めているのだ。
少しでも劣るところを見せたくない、作りたくないといった性格は第二夫人の母親譲りだろうか。
その負けん気と自尊心の高さが知能の底上げに一役買ったのかもしれない。
ジャミルはテオドールの息子とは思えぬほど博学で知られ、若干14歳ながら詩を嗜み、王都のコンクールで入賞するなど、数々の輝かしい文才を誇っていた。

「疲れたー!もうやりたくないー!」

「僕も~!面白くないよ~!」

不平不満を言ってゴネているのは三男のスノウと四男のセルムだ。
第三夫人の子息で双子のスノウとセルムは13歳という年齢もあり、飽きっぽくワガママな性格だ。
全く同じ容姿で見分けづらいが、唯一の違いは頭髪の色で、スノウが金髪、セルムが銀髪をしている。
武芸や教養はアルフレッドとジャミルに遠く及ばないが、性格さえ直れば伸び代はある双子だった。

そんな兄弟の中で俺も鍛錬に励んでいた。
第五男エルロンドとして生誕し、母親ソアラの愛に包まれて10年。
前世の記憶を持つ俺は将来のため打てる手を打ち、備えるべきことに備えてきた。
もっとも子供のできることなど高が知れているが、その成果は顕著に出ている。
なぜなら齢10の俺が熟練の騎士を相手に互角以上の戦いを演じているからだ。

「ぬぅ!見事な斬り込み!しかしまだまだですな」

受けた剣を弾いて接近する中年騎士。
さすがに歴戦の強者だけあって動きに迷いがない。
キレのある動作で接近すると剣先を首筋に突き付ける。

「参りました」

俺は両手を上げて負けを認めた。
あっさりと決着がついたことで衆目の目は長男アルフレッドに注がれる。
俺はホッと胸を撫で下ろし、相手をした中年騎士を見上げた。

中年騎士は肩で息をしていた。
全身から汗を流し、上がった体温で鎧から湯気が立ち昇っている。
それに対し、俺は息切れ一つしていない。
それどころかかすり傷一つ、打撲一つ負っていなかった。

そう、倒そうと思えば難なく倒す事ができるのだ。
なぜなら俺のランクは聖騎士で、ステータスも彼等の十倍以上は軽く超えている。
なぜ、10歳の子供にそんな馬鹿な設定が成されているのかというと、その原因にリュシーファの存在があった。

前世で銀行強盗を退治した際、加護をかけたのが原因だ。
一時的なもので解けたはずだったのだが、異世界とは勝手が違ったのか、転生すると解けた加護が復活したのだ。
もちろん赤子の時は普通のステータスだったのだが、将来に備えて鍛錬を始めると恐ろしいほどの勢いで強くなり、気がつくと聖騎士の称号が与えられていた。
今は経緯を省くが、リュシーファに理由を問いただしたところ、その結論に至ったというわけだ。

「お強いですなエルロンド様は。しかし、まだまだ本気を出されておられませんな」

「いえ、これが全力です。歴戦の騎士相手に出し惜しみなんて到底できませんよ」

「ははは、まあ、そういうことにしておきましょう」

中年騎士は笑い飛ばすとそれ以上は何も言わなかった。
兄弟間の微妙な立ち位置を察してくれたのだろう。
ありがたい限りだ。

休憩を挟みつつ日が頂点に差し掛かるまで訓練は続いた。
運動で腹の虫が鳴り出す頃、訓練場に鼻腔をくすぐる美味な匂いが漂ってくる。
動きを止め、匂いに気を取られていると。

「昼食の時間でございます」

スーツ姿の家宰が現れ、訓練終了の合図を送った。
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