おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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015 備えあれば憂いなし

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「気が早くないッスか坊っちゃん?」

執務室で仕事をしているとアスタールが呆れた口調で言った。
苗木を植え付けてから4日後、俺はワイン樽と保管蔵を造り始めたからだ。

保管蔵造りはオーガに命じ、ワイン樽造りは奴隷に命じた。
ワイン樽造りで人手が減った苗木の世話は、アクセルの住民に頼むことで賄えた。
奴隷から苗木の世話を学ぶことで幾分か親しくなっているようだ。
日に日に大きくなる苗木の効果も多分にあるだろう。
成果が目に見えるのは、やる気に直結するというものだ。

とはいえ、植え付けを終えて4日後の事だけにアスタールの心配もわからなくはない。
気が早いと言われれば、そうかもしれないだろう。
だが、事前の準備こそが最も大事だと俺は思っている。
チャンスを掴むには、事前の準備が何より必要不可欠だからだ。

「こういうのは気が早いくらいがちょうど良いのさ」

「ブドウがなるのは何年も先のことッスよ?」

「どうかな。意外と早いかも知れないぞ」

「早くても1ヶ月か2ヶ月くらいの誤差ッス。何年も先になるのは変わらないッスよ」

準備をするなら収穫間近になってから行えばいいのに、と愚図るアスタール。

俺がワイン樽作りを提案した時「よろこんで!」と喜び勇んで資材調達に走ったくせに。
それら関連で仕事が増え、少し構えなくなった途端に不機嫌な様子だ。
俺より13も歳上のくせに。
子供か!

「まあ、いいじゃないか。今から準備しておけば、いざという時に役立つからね」

「そッスかねぇ……まあ、坊っちゃんがそう言うなら」

無事に実がつくのかもわからないのに。
アスタールは、そう言いたげな様子だ。
しかし言うだけ無駄だと思ったのだろう。
それ以降は何も言わず、俺が指定した品々を調達するため行商に出かけていった。

「エルロンド様」

入れ違いでベルナールがやってきた。
今は保管蔵造りを行っているオーガ達の指揮を任せている。
元貴族だけあってワインに精通しており、保管蔵の知識もあるため適任であった。

「どうした?」

「保管蔵ですが、2週間もあれば完成しそうです」

「ずいぶん早いな?」

「オーガの怪力は並外れています。一人で丸太を3本、軽々と運ぶのですから」

ベルナールは感心したように言った。
知性派のベルナールにしてみれば肉体派のオーガは驚嘆すべき存在なのだろう。
真似をしようとて出来るものではないが、男として生まれたならば憧れる気持ちは分からなくもなかった。

「さすがだね。これなら収穫までに間に合いそうだ」

俺はテーブルに広げた地図に完成予定日を記入した。
オーガが造っている保管蔵の部分だ。

「エルロンド様。本当に保管蔵を3つも造るのですか?1つの保管蔵に1000樽も入るのですよ」

念押しするように言うベルナール。
改めて確認を促し、1000樽という具体的な数字まで提示する。
どうにも納得していない様子だ。

「合わせて3000樽だろ。まだ少ないかな?」

「多すぎます。苗木は1000株しか植えていません。採れるワインの量は保管蔵1つで十分に足ります」

ベルナールの言い分は正しい。
正確な数量はわからないが、1000株から採れる果汁はせいぜい200~300樽くらいだろう。
建造している保管蔵の容量の1割程度だ。

「出来が良ければブドウ畑を拡充する予定だ。ワインは生活必需品だし、クッキーに代わる財源を確保したいからね」

「財源の確保には賛成ですがワインはどうかと。数多く出回ってますし、そもそも安値です。1000株ていどの量では財源には程遠いかと思われます」

本当にベルナールは優秀だ。
沈着冷静に算盤を弾いて正確な数字を割り出してくれる。
俺にとってかけがえのない物差しだ。

俺は椅子に寄りかかって笑みを浮かべると。

「だから、ワインなのさ」

「エルロンド様。それはどういうことですか?」

俺はベルナールの問いには答えず「細工は流流、仕掛けは上々、あとは仕上げをご覧じろ、てね」とはぐらかした。
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