おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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041 王都ヘルメール

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教会の呼び出しで王都ヘルメールに行くことになった。
来た道を戻るためモストティアから遠ざかってしまう。
まあ、それはいい。
どうせ問題が解決しないとモストティアには行けないのだから。

という訳で、聴取という名の断罪裁判を控えた俺は事前準備に取り掛かった。
アリバイ作りに協力してくれた男娼の少年アルトに再び協力を要請する。
その他に三人の男娼を新たに雇用した。
ロジャーノがゴリゴリの同性愛者だと印象付けるためだ。

「やはり勧誘を受けたか」

アルトから報告を受けた。
ジャミルの部下から証言するよう金を掴まされたという。
無駄なことを。
すでに根回し済でアルトは俺の味方だ。
彼の家族にはタップリと恩を売ってある。
貧民の身分から市民権を買い与えて仕事まで世話してやったのだ。
アルトは命懸けで恩に報いると鼻息荒い熱の入れようだ。

俺達の出発前にアルトはジャミルの部下と共に王都ヘルメールへと向かった。
有利な証言をするようアルトに命令するためだろう。
危害を加える心配は無いだろうが。
念の為シャークウッドにアルトの護衛を出すよう頼んでおいた。

着々と下地は固まりつつある。
そんな中で心配なのがロジャーノだ。
生きた心地がしないらしく、血の気の引いた顔で憂鬱な表情をしている。
敬虔な信徒で断罪と無縁な生活を営んでいただけに無理はないが。

「そう心配するな。すでに手は打ってある。お前が断罪される事は万が一にも無いから安心しろ」

「そうは申しますが、なぜそこまで断言出来るのですか?どのような手を打ったところで判決が覆るとは到底思えないのですが」

ムンジェスの狡猾な手口を知っているからこそ絶望しているのだろう。
汚い手を使って何事も自分の思い通りにしてきた実力者だ。
今回は口実を与えているだけに万全を期していようと安心出来ないらしい。

「お前は無実だ。実際に手を出してないだろ。具合の悪い男娼を教会で保護して看病しただけだ。聖職者として褒められこそすれ、罰せられるいわれなんかない」

「それは、そうですが」

そんな言い分が通用するとは思えない。
口にこそ出さないがロジャーノの表情はそう告げていた。

アスタールとエレオノーラはグラスに残ってある仕事に取り掛かった。
俺が王都ヘルメールに行っている間に処理して欲しい案件を頼んだのだ。
シャークウッドの部下数人とハンゾウを護衛として残し、テイルにも協力を依頼した。
エルネスト商会の情報網を用いれば難しくはないだろう。
ベルナールにも協力を要請してある。
優秀な面子が揃い踏みしてるから安心して出発出来るというものだ。

リオンとシャークウッドは護衛として付き従った。
俺はロジャーノと男娼達と共に馬車に揺られてノンビリと王都を目指す。
ムンジェスかジャミルの襲撃を警戒していたのだが。
杞憂だったらしい。
腕の立つ二人に守られ無事に王都ヘルメールへと到着したのだった。

ブランドル王国の首都だけに街並みは立派だ。
貧相な木造家屋は一つもなく、全て石造りの頑丈な建物で統一されている。
庶民が住む下町は平屋が多く、整備された石畳の道を進むと区画線となる通りに出た。
この先が中流層の区画になるらしい。
平屋から二階建てに変わり、商店街もワンランク上の水準に達している。

教会の本部があるのは富裕層の区画だ。
貴族や一部の豪商が居住する区画であり、一般人が立ち入らぬよう警備兵が警戒している。
王族の居住する区画は王都の中心部に位置し、ヘルメールの象徴のように王城がそびえ立っていた。

王都ヘルメールは外周に拡がるように発展した都市だ。
だからバウムクーヘン状に区画整理されている。
中心部に続く街道は切込みを入れたように真っ直ぐだ。
防衛の面から見れば通行し易い作りで問題なのだが。
それをカバーするように各区画に防壁が築かれていた。

教会の本部は神官騎士が厳重に警備していた。
本部というだけあって荘厳な作りだ。
潔白を示す白亜の建物は某テーマパークの姫城みたいな造形である。
高さは30メートルはあるだろう。
大聖堂があるため奥行きは100メートルほどあった。
一階が大聖堂になり、本部の施設は二階から上に設置されている。
大聖堂の左右に設けられた折り返しの階段は二階に通じていた。
幅が広いため荷駄が通れるスロープも設けられている。

「では、記帳をお願いします」

ロジャーノが教会の受付で記帳した。
教会関係者は王都に来た際、必ず記帳する義務があるからだ。
これを怠ると厳罰に処される。
いわゆる不敬罪として扱われるためだ。

「聴取は三日後に行われます。それまで王都から出る事が無いようお願いします」

受付の女性が事務的な態度で告げた。
どこの世界も事務仕事っていうのは愛想が無いものだ。
少しくらい笑えば和むものを。
まあ、断罪される人間にしてみれば嫌味に取れなくもないか。

俺は中流層の区画で宿をとった。
富裕層の区画でも良かったのだが。
恐らくジャミルが潜んでいるだろう。
うっかり鉢合わせするのも嫌だと思ったのだ。

それにシャークウッドの部下とジャンに王都で情報収集をさせている。
俺が中流層の区画に居ればムンジェスとジャミルの目もコチラに向くだろう。
そうなれば仕事がやり易くなると思ったのだ。

「ムンジェスは数人の枢機卿に働きかけたようです」

夕刻になりシャークウッドの部下が報告に訪れた。
ムンジェスは油断しているのか。
それとも舐めているのか。
動きを隠す様子がないらしい。
精力的に動き回ってロジャーノ断罪の根回しを行っているようだ。

「それで、応じたのか?」

シャークウッドが部下に問い掛けた。
肝心の部分が掴めていないと情報に価値がない。
傭兵団の団長だけに仕事には厳格のようだ。

「色良い返事は3人ほど。日頃からムンジェスに甘い汁を吸わせて貰っている連中です。他に接触した2人に関しては日和見を決め込んだ模様です」

「決定3人。不確定が2人か。確か枢機卿は10人だったな。ムンジェスを加えて4人って事は、分の悪い賭けだぜ」

大丈夫なのか?とシャークウッドが俺を見た。
俺はニッと歯を見せて笑う。

「仮に全ての枢機卿が敵に回っても問題ない。すでに策は完成しているからな。あとは本番を待つだけさ」

俺が信じられないのか?
とシャークウッドにウインクした。
自信満々の態度にシャークウッドは軽く笑う。

「相変わらず食えねぇ坊主だな。なにを企んでるのかは知らんが、坊主がそう言うんなら大丈夫だろうよ」

口の悪い言葉だが俺を信じているのが伝わる。
リオンが不敬だと睨みつけているが。
シャークウッドはどこ吹く風だ。
いつも通りの光景。
俺の感覚がおかしいのかもしれないが。
ホッと和む瞬間だ。

「よっと、ただいま~」

ジャンが窓から入ってきた。
足音を立てずにフワリと着地する。

「おいおい、まさか壁をよじ登ってきたのか?」

シャークウッドが呆れたように言った。
ここは三階だ。
中流層の区画でも高級な宿で一番高い建物になる。
だから最上階の三階からの眺望はとても良い。
それに警備もし易いため選んだのだ。

「ちょっとした腕試しさ。自分の実力を把握しとかなきゃ任務に差し障るだろ。まあ、思ったよりチョロかったけどな」

ジャンはニシシシッと笑った。
全く悪びれる様子がない。
そういう所はシャークウッドと同じだ。
任務に差し障るなどと言い訳を考えるあたり狡賢い。

「それで、何か掴めたのか?」

俺が問い掛けるとジャンは真顔になって拝礼した。
態度が一転して実に真面目だ。
敬意を表するのは約束通り孤児院に援助しているからだろう。
そして、ジャンがもたらした報告は俺の予想を遥かに超えたものだった。
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