おいでませ異世界!アラフォーのオッサンが異世界の主神の気まぐれで異世界へ。

ゴンべえ

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045 バレた落胤

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「僕は何も知りません!」

開口一番にそう言い切った。
ロジャーノの同性愛を完全否定して男娼を斡旋した事などないと。
すると裁判官は連行されてきた男娼達に問いかけた。

「君達はロジャーノ司祭と肉体関係を持った事はあるか?神に誓って虚偽の申告をせぬよう」

神の名を持ち出して釘を刺した。
男娼達は戸惑いの表情を浮かべて少し怯えている。
心構えが出来ていたアルトとは違って動揺しているようだ。

「神に誓って肉体関係はありません!」

力強くエリオットが宣言した。
キッパリとした物言いに裁判官も驚きを隠せない。
ムンジェスは憤るかと思いきや。
エリオットの顔をジーッと凝視していた。

「し、しかしロジャーノ司祭が男娼を教会に招き入れた事実は調査で判明している。それにエルロンド殿が関わっていると報告を受けているが」

改めて裁判官が問いかけてきた。
俺は素知らぬ振りをしながら。

「僕は寄付を行っていただけですよ。グラスの教会は上町と下町では貧富の差が激しいですからね。しかも下町にある孤児院はボロボロで今にも崩れそうなほど劣悪な環境です。教会はこの事実を把握してますか?」

暗に教会を批難した。
その上で身の潔白を主張する。

「そもそもロジャーノ司祭とは我が家臣の結婚を否認された事で揉めていただけです。同性愛など知った事じゃありませんし、そんな淫行を目撃した事もありません」

「ではこの者達は性的な関係性ではないと?」

「ここに居る男娼達はロジャーノ司祭に保護された孤児で、教会で面倒を見ている者達です。だから一緒に王都まで着いてきただけです。確かに生きるため男娼を生業にしていたようですが。だからといってロジャーノ司祭が肉体関係を迫るとは思えませんね。もし手を出していたのなら先ほどの問いにそう答えたはずです」

そう告げて生活費を寄付していたと申し添えた。
これで男娼達の疑惑は迷宮入りだ。
なにしろ証拠がないのだから。
裁判官も噂話や不確かな報告で決めつけは出来ないだろう。

懸念材料はロジャーノだ。
すっかり冷静さを失って狼狽している。
これでは嘘も本当になってしまいそうな態度だ。
俺は釘を刺すべくロジャーノに小声で囁いた。

「しっかりしろ。お前が狼狽えてたら同性愛が真実になるぞ。そうなったらエリオットと共々に実刑になりかねないだろ」

「そ、それは……」

ロジャーノは焦りつつエリオットとエルパウロ教皇に視線を送った。
無意識下の反応だろう。
それが最悪の事態を招き寄せる。

この馬鹿!なにやってんだ!

俺は内心で舌打ちした。
あからさまな反応を見せやがって。
よりによって教皇とエリオットを見比べるとは。

「グフフフフフッ、そういう事だったか」

ムンジェスは喜色満面の笑みを浮かべた。
ゾッと背筋に悪寒が走る。

バレたか。

一番恐れていた事が現実になってしまった。
ロジャーノのリアクションはムンジェスに確信を与えるに充分だったのだろう。
エリオットを眺めて下卑た笑いを漏らしている。

「なるほど、ロジャーノは無実のようですな。だが、同性愛は教義に反する野蛮な行為。生きる為の手段だったとはいえ断罪は免れますまい」

ムンジェスは声高にそう告げた。
標的をロジャーノから男娼の少年達に切り替えたらしい。
同性愛を行った事実を断罪材料に上げて裁判を行うつもりだ。

裏切ったアルトに対する報復か?
いや、違う。
エリオットを断罪する事でエルパウロ教皇の反応を見ているのだ。
すでにロジャーノは自分の犯した過ちに苦悶の表情を浮かべている。
ではエルパウロ教皇は?

「ま、待ちたまえ。なにも処罰する必要はないだろう」

あきらかに焦りの色を見せていた。
エリオットが自分の子だとロジャーノの反応で確信を得たらしい。
エルパウロ教皇の態度に強い確信を得たムンジェスはここぞとばかりに攻勢に出た。

「恐れながら教義は絶対でございます。間違った行いは正さねば諸悪の根源となるでしょう。ここは心を鬼にして見せしめにせねば」

「し、しかし……」

教義を持ち出されてはエルパウロ教皇も庇い立てが難しいようだ。
どうにか助けたいという気持ちが表情に表れている。
それを見てムンジェスは勝ち誇った面持ちを見せていた。

すでにロジャーノの同性愛疑惑は放逐されている。
話はエルパウロ教皇とエリオットの落胤関係に移っていた。
もちろん、それを知るのはエルパウロ教皇、ムンジェス、ロジャーノ、そして俺の四人だけだ。
おそらくジャミルは知り得ない話だろう。
その証拠にジャミルは怪訝な面持ちで裁判を眺めている。

「教義に反する行為には代償がつきものです。それは教皇様が一番ご存知のはず」

ムンジェスは一気に切り込んできた。
暗にエリオットとの関係性をほのめかす。
エルパウロ教皇の表情が強ばった。
ムンジェスの言わんとする事を察したからだ。

マズい。
このままではエルパウロ教皇が退位してムンジェスが教皇の地位に就いてしまう。
すでに枢機卿に根回しを行っている報告を受けているし。
もしそうなったらムンジェスは絶対的な権力を手に入れてジャミルと悪事を限りを働くに違いない。

そろそろ頃合か。
俺は奥の手を出す事にした。
本当なら手を付けたくない方法だったのだが。
背に腹はかえられない。

「先程から教義だ教義だと仰られていますが誰がお決めになったのですか!?」

俺は声高に叫んだ。
エルパウロ教皇とムンジェスの間に強引に割って入る。

「無礼な!話の邪魔をするとは!」

ムンジェスは不快感をあらわにした。
あと一歩でエルパウロ教皇を屈せられたと思ったのだろう。
それだけに話の腰を折った俺に怒りの眼差しを向けてくる。

「お答え下さい!誰が教義をお決めになったのか!」

「ええい、馬鹿馬鹿しい!そんなもの子供でも知っている事であろう。もちろん主神リュシーファ様に決まっておろうが」

ムンジェスはさも当然だと言い切った。
大聖堂に居る誰もが同意するように頷く。

「有り得ません!」

キッパリと否定した。
リュシーファが決めた事ではないと。
その言葉に大聖堂に居る誰もが驚き騒然となる。

「なんたる不敬な!お前は貴族の子息であろう。教育を受けておろうに、そんな事も知らんのか!」

「有り得ないから有り得ないと言っているのです!」

「ふざけおって!なにを根拠に言っておる!」

「僕は直にリュシーファ様から伺ったからです!」

リュシーファに様付けして少しイラッとした。
これこそ不敬の極みなのだろうが。
ダメ神の本性を知ってるだけに少しも不敬だとは思わない。

「はっ、言うに事欠いてリュシーファ様にお会いしただと?戯言を申すのもいい加減にしろ!」

さすがのムンジェスも怒りを通り越して呆れたようだ。
無理もない。
子供が神様に会ったことがあるなどと。
誇大妄想と取られて当然だからだ。

「僕が嘘を言ってると言うんですか?」

「馬鹿馬鹿しい。嘘以外に何がある」

「本当に会ったことがあると言いましたよね」

「くだらん。大事な話の腰を折っておいて妄想を言うとは。おい、この無礼な小僧を引きずり出せ」

ムンジェスは神官騎士に命じた。
俺を連れ出そうと神官騎士が腕を掴む。

「な、なにっ!?」

神官騎士は驚きの声を上げた。
力を入れて引っ張ってもビクともしないからだ。
当然だろう。
俺は見た目こそ11歳の子供だがステータスは神官騎士より遥かに上なのだ。
単純な力比べで負ける事など有り得ない。

「少し眠っててくれ」

俺は神官騎士の手首を捻って軽く投げ飛ばした。
神官騎士は床面に背中を打ち付けてグッタリと気を失う。
神官騎士を制圧して本尊に奉られたリュシーファの像を見上げると。

「偉大なる主神リュシーファ様に願い奉ります!」

俺はリュシーファの像に深々と拝礼して乞い願った。
現世に顕現されますようにと。
その姿をムンジェスは小馬鹿にして笑った。
茶番劇だと鼻で笑ったのだ。

その笑みは直ぐに消える事になる。
主神像が七色の光を放って大聖堂を覆い尽くし、さながらオーロラのような光の帯を作り出した。
眩い光を発して主神像は徐々に姿を変えていく。
そして、大聖堂に居る誰もが奇跡に我が目を疑う事となった。
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