恋する魔女は星の精霊と暮らして悪魔を待つ

山本いちじく

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悪魔ディエゴ

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「リオ、2人で食べようと思っていたローストチキンを3人で分けて食べましょう。あと、爪切りを持ってきてちょうだい」

 リオは、テキパキと準備を続けながら、信用ならない客人をもてなすことに、あからさまな不満を込めて答えた。

「しょうこ様、もちろん、承知いたしました。古代に失われた超技術で作られた、特級爪切りをお持ちします」

 しょうこは、弟子の少年リオに指示を出すと、席に着いてから、ディエゴを冷ややかに見つめて言った。

「ディエゴ、あなたは、愛や希望を知らないなんて、あまりにも無知よ。それで仕事できるの?」

「俺は、悪魔だ。恐怖と堕落の化身だ。愛と希望など知る必要はない。それどころか、知れば死ぬだろう。それが悪魔の宿命だ。俺は、この世界の生き物が酷い悪事をなすかぎり、必ずその悪人に絶望を与えるのが、使命なのさ」

 しょうこは、ディエゴの宿命を悟り、その事実を受け止めようと深く息を吸い、吐き出すように言った。

「それが、あなたに宿る運命、使命なのね…」

 ディエゴは、しょうこの言葉に考え込むと、そっと口を開き、諦めたように笑いながら言った。

「だが、愛と恐怖、光と影は、対立ではなく、陰と陽のように混じり合ってバランスをとるのが真理だ。もしかしたら、混じり合う中で、この身が滅ぶのも面白いかもしれないな」

 しょうこは、ディエゴに対して、咄嗟に思ったことをそのまま言ってしまう。

「だめよ、ディエゴ。あなたには、長く生きていてほしい」

「ふん。短命な人間らしい愚かな考えだ。生きる時間の長さなどに意味なんかない」

「愚かなのは、いつもあなたよ。私は、運命を変える希望があると思うわ。あなたの運命も、この地球の生き物の運命も。それには、いくつもの奇跡が必要だけど」

 しょうこは、リオから爪切り受け取るとディエゴの手を取っていった。

「ディエゴ、爪が伸びているわ。頑張ったご褒美に、私が爪を切ってあげます。運命を変えるには、あなたも、変わらないとね。もちろん、この世界の生き物も変わる必要があるわ」

「おいおい、なにをする!尖った爪は、悪魔の恐怖の象徴だぞ!」

 ディエゴは、しょうこに触れられると抵抗できなくなってしまう。長く伸びた爪を手早く丸く切り揃えられてしまった。まるで子どもが母親に爪を切り揃えられるように。

 そして、リオが作った焼きたてのパンととうもろこしのスープやルッコラのサラダ、ローズマリーが香る悪魔風ローストチキンを皆で楽しむことになった。

 テーブルを片付け、食後のコーヒーを準備しながら、リオがディエゴに向かって警告する。

「哀れな深爪の悪魔ディエゴ、しょうこ様を誘惑したり、たぶらかすつもりなら、絶対に許さないからな」

 ディエゴは、リオの挑発的な言葉に、悪魔の威厳を持って言い返した。

「何を言っているかわからないが、少なくともお前に指図される覚えはないな。命が惜しければ、身の程を知ることだ」

「命知らずは、お前のほうさ。その卑猥な匂いの角を僕に近づけることができるか、やってみればいい」

「リオ、望み通り、お前も俺のこの雄々しい角で突きまくってやろうか?」

 今にも喧嘩になりそうな2人に、しょうこは、気の抜けたあくびをしながら水を差した。

「ディエゴ、それはそれは楽しみなことだわ。リオ、ディエゴに突っかかるのはやめてちょうだい。喧嘩になって、リオがまた星を壊すのをみたくないの。もう寝室に行きましょう。おやすみなさい」
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