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第1章
平和な日よ続け
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1年前、死の森でポッコロ様に助けられて生還したあと、俺とカリンは、それはもうめちゃくちゃ怒られた。
俺の未踏の地への野望は、死の森を体験してあっさりと挫かれた。あそこは人類が行っていい場所じゃないんだ。もう恐怖しかない。希望どころか、絶望しかない。不運への対抗も必要だけど、自分から死地に行くのは、避けないと。
それ以来、俺もカリンも地道に魔草の畑を毎日をコツコツ耕し続ける毎日を過ごしている。
特にカリンは、自分で育てたキキリを使って、ペンプス村で怪我をした人をキュアで治すことを始めた。修行も兼ねているが、好評だ。
そういえば、カリンが持ち帰った白い花の魔草は、発見された場所ペンプス村と発見者カリンからペカリと名付けられた。そして、新種として王都シャーヒルのマジポケ魔法院の研究室に送られた。
未踏の地域から、まれに持ち込まれる魔法の植物は、大抵、人類に害をなすことが多い。
厳重な管理の元、さまざまな検査、検証がされる。
薬草キキリや火炎草ファイのように、人類に有用で、かつ、管理可能な魔草は、珍しい部類に入る。まだ、水の攻撃魔法や防御魔法を発動できる魔草は、見つかっていない。
俺のキキリ畑の土はやっと魔力1000に達して、キキリの栽培が始まった。
マスタークヒカがキキリを育てる草木の魔法を教えてくれて、キキリはぐんぐん育っている。
草木の魔法は、土の魔法に負けず劣らず地味だけど、生育を早めたり、収穫した魔草の日持ちを長くしたりできる。
なんというか、平和だ。こんな毎日が続けばいい。
まだ、魔法使いとしては見習いも見習いだし、1人では何もできない子供。
でも、毎日地道に続けていることを積み上げて、できることが一つ一つ増えたり、次の段階のことができるようになっていく。
それにカリンとの距離が近くなった。なんというか物理的な距離が。カリンがマクルタ家の館に住むようになった。
マスタークヒカの住み込み弟子として、魔草畑の世話に励んでいる。
平和な秋の朝、穏やかな1日が始まった。
「おはよう、パナニ。お、朝ごはんは、クロックムッシュだね!やった!」
「はい!クヒカ様がパンをお焼きになったので。。。」
「ちょっと、エレム!私も作るの手伝ったのよ!心して食べなさい!」
カリンがひらひらがついたエプロンを着ている。
たしかに、いくつか形がいびつ。。。ではなくて、味のある形というか。。。こっちから食べるしかない。
カリンの熱い凝視のもと、むしゃむしゃとほうばる。
あ、いや、美味しい!これはクロックムッシュ!間違いない。
「カリンのクロックムッシュ、美味しいよ。今日もキキリ畑の世話をしようかな」
「エレム、あたしの魔草畑の間引き手伝ってよ」
「自分でやりなよ!でも、クロックムッシュの御礼に、今日だけ手伝ってあげる」
「なによ、その言い方!まぁ、でもいいわ。よろしくね」
「エレム坊ちゃまも、カリン様もキキリ畑が順調そうで、素晴らしいですね。日々の努力の賜物です」
「ありがとう、パナニさん。
いつも応援してくれるから、励みになるわ!料理も色々教えてくれて、ありがとう!
エレム、またクロックムッシュまた作ってあげるからね!」
「カリン、ありがとう。。あれ?」
カタカタカタカタ。
「あ。また地震。最近多いね。あたし、怖いわ」
元の世界では、地震はよくあった。大きな地震も経験した分、ちょっと地震には敏感かもしれない。
グラグラ
パリンとお皿が一枚床に落ちて割れる。
「きゃぁ!」
カリンが悲鳴をあげる。
「お皿が割れるなんて、不吉ですね」
そう言いながら、パナニが割れたお皿を片付ける。
元の世界の感覚だと震度3くらいかな。
ザルムが執務室から出てきた。
「この3日で30回目の地震だな。回数が異常だ。
昨日、地震の記録と川の水位の変化を王都シャーヒルに報告したんだ。早ければ明後日、調査団がペンプス村に来るはずだ。それまでに大きな変化がなければいいが」
「ザルム村長、ザザゲム川の水位に異変が?」
「なんだカリンは、聞いてないのか?
地震が頻発するようになって、昨日からザザゲム川の水位がどんどん下がっているんだよ。
このまま干上がるようなことがあれば、農作物や家畜を育てられなくなるだけじゃない。死の森との境界線がなくなって、水が苦手な炎犬でも、簡単にペンプス村に来れるようになる。そうなったら、ペンプス村は、おしまいだ」
「そ、そんな。どうしたら?父さん、何かできることはないの?」
「自然の大きな変化の前では、人類は無力だな。今のところ、どうすることもできん。
王都シャーヒルから調査団がきたら、対策を練ろう。エレムも一緒にくるといい。なぜかゾゾ長老がエレムを同席させろと言っているんだ」
何で俺が??
「なんで、エレムだけ?!」
カリンが小声で不満を言っている。
嫌な予感がする。
明後日。
王都シャーヒルから調査団が到着した。
総勢15人。思ったより大がかりだ。さっそく大広間で会議が始まった。
茶色いヒゲの偉丈夫がザルムに挨拶をした。
「ペンプス村調査団団長ソニレテだ。
ザルム殿の詳細な報告書のおかげで、即座に調査団を結成、派遣することができた。感謝する。
これはこれは、ミョシル・ゾゾ老師、ご健在でしたか!」
威厳のオーラが凄すぎる曽祖母、100歳を超える魔法使いのゾゾ長老がゆっくりと部屋に入ってきた。黒いローブには色とりどりのクリスタルが縫い付けられている。
伝統学派の魔法書に書いてある定説に異議を唱えて、マジポケ魔法院を追放された変わり者。
魔草を使う魔法は全て草木の魔法だというのが、主張だったらしい。
若い時は記録上唯一のSS5の魔法使いとして隣国にも名前が轟いていたそうだ。無詠唱で魔法が使えるらしい。
今は、故郷のペンプス村で隠居しながら、独自の研究を続けている。
敬礼するソニレテ団長と向かい合って、一本しかない歯を見せながら、豪快に笑った。
「かっかっか。おぉ、ソニレテか。逃げ足の早いイタズラ小僧が大きくなったものじゃ。わざわざ来てもらって、悪いな。
ペンプス村は、もうダメじゃ。川が干上がれば、人が住めなくなる。これも自然の摂理。非力な人類になす術などない」
クヒカが祖母でもあるゾゾ長老を制止する。
「ゾゾ長老、せっかく来てもらったのに、何も希望のないことを言っては。何かできることを考えましょう」
「ふむ。希望か。そうじゃな。それについて話さねばならぬな」
ソニレテ団長、ザルム、クヒカ、ゾゾ長老、そして、俺も円卓に座る。いや、俺だけ場違いすぎる。何もできない子供が1人紛れ込んでいる。
ゾゾ長老が威厳があふれる目つきで、皆を見渡して言った。
「ソニレテ、よく来てくれた。
わしが知る限りの希望を話そう。
川を遡って、山を登り、雲と同じくらいの高さの場所に、開けた草原とゲムゲム湖がある。そこにはザザゲム川の水源の泉がある。
そこには水と風の精霊アクアウ様がいるという言い伝えがある。
誰か、精霊と話せるものが行って、知恵をもらってこれたら、解決策が見つかるかもしれん」
ソニレテ団長が困った顔をした。
「ゾゾ老師、お言葉ですが、精霊と話せるものなど、聞いたことがありません。
それどころか精霊を見たものもいない。もっと、何か地に足がついた案をかんがえましょう。おとぎ話に付き合っている時ではないのです」
ゾゾ長老が大きな声で笑った。
「かっかっか!ソニレテよ。頭が堅いのう。ここにおるんじゃよ。精霊と話せるものが。そうじゃろ?エレムよ」
「「「え???」」」
皆が一様に驚いて、俺を見る。これはもう全てを隠してはおけない雰囲気。。。
ザルムが不思議そうに言った。
「エレムは、精霊と話せる人を知っているのか?」
「あ、いや、その?え?でも、ゾゾ長老、なんで?そのことを知っているの?誰にも話してないのに!」
「かっかっか!知っているさ。
エレムが精霊と話せるとしか考えられんじゃろ。
そうでなけば説明できない。
当時9歳で死の森に入り、何匹もの炎犬に追いかけられながら、カリンを救出して、不思議な草舟に乗って川を飛び越えて帰ってくることなど、自力では不可能じゃ。我が弟子フラザールでも絶対にできないことなんじゃ」
「「「え???」」」
また、全員が俺を見る。ザルムが頭を抱えている。
「エレム、本当なのか?精霊を見たり、話をできるなんて。そういえば3歳くらいのころ、不思議なものがたくさん見えるとか言っていたが。。。」
「えっと。。。黙っていてごめんなさい。
いつもじゃないんだ。精霊は、気まぐれというか。。。
3歳くらいの時には、毎日精霊と目が合ったんだけど、今は、どうしても困った時くらい。
1年前、死の森で草木と風の精霊ポッコロ様に助けられてから、精霊には会ってないんだ」
精霊が見えたり、話ができるだけで、この騒ぎだ。転生や精霊が女神様の使徒であること、女神様の加護があることは、話さない方がいい。ゾゾ長老には、何もかも見透かされていそうな怖さがあるけど。
ゾゾ長老が目を光らせて、ニヤリと笑う。
「やっぱりな。エレムは、絶対に精霊が見えると思っておったよ。草木と風の精霊ポッコロ様か。ペンプス村の守り神様じゃないか。しかし、なんでエレムだけが特別なんじゃろうか。まぁ、いい。それはそれとして。。。
ソニレテよ。どうせ死の森から帰還したエレムとカリンがどれほどの実力かも、今回の調査項目に入っているんじゃろ?」
ソニレテ団長が頭をポリポリとかいた。
「参りましたな。国王から追加された調査項目は、口外できません。しかし、ゾゾ老師には、全てお見通しですな。いやはや。
では、私を含めた調査団数人とエレムとカリンで、山に登り、水と風の精霊アクアウ様を探し、助言を求める、というのはどうでしょうか?」
クヒカがガタンと椅子を倒しながら、飛び上がるように立って言った。
「私も!私もいきます。まだ2人の魔法は未熟です!エレムなんてまだ10歳になったばかりですし」
「かっかっか。クヒカ、ダメじゃ。過保護じゃのう。可愛い子供には、旅をさせよ。
山の上とはいえ、ペンプス村側では魔獣は出ない。
それにファラム国騎士団長にして、最強の剣士ソニレテが一緒なら大丈夫じゃよ」
ゾゾ長老には逆らえないクヒカが、恨めしそうにしぶしぶと席を直して座る。
ザルムが重々しく口を開いた。
「ソニレテ団長、エレムとカリンをよろしくお願いします。
地震は今日も続いています。事態は、急を要するかもしれません」
「承知した。このファラム国騎士団長の名にかけて、エレムとカリンをお守りしましょう。
今日は、補給の準備をしっかりして、明日の早朝に出発します」
大変なことになった。早くカリンに知らせないと。
俺の未踏の地への野望は、死の森を体験してあっさりと挫かれた。あそこは人類が行っていい場所じゃないんだ。もう恐怖しかない。希望どころか、絶望しかない。不運への対抗も必要だけど、自分から死地に行くのは、避けないと。
それ以来、俺もカリンも地道に魔草の畑を毎日をコツコツ耕し続ける毎日を過ごしている。
特にカリンは、自分で育てたキキリを使って、ペンプス村で怪我をした人をキュアで治すことを始めた。修行も兼ねているが、好評だ。
そういえば、カリンが持ち帰った白い花の魔草は、発見された場所ペンプス村と発見者カリンからペカリと名付けられた。そして、新種として王都シャーヒルのマジポケ魔法院の研究室に送られた。
未踏の地域から、まれに持ち込まれる魔法の植物は、大抵、人類に害をなすことが多い。
厳重な管理の元、さまざまな検査、検証がされる。
薬草キキリや火炎草ファイのように、人類に有用で、かつ、管理可能な魔草は、珍しい部類に入る。まだ、水の攻撃魔法や防御魔法を発動できる魔草は、見つかっていない。
俺のキキリ畑の土はやっと魔力1000に達して、キキリの栽培が始まった。
マスタークヒカがキキリを育てる草木の魔法を教えてくれて、キキリはぐんぐん育っている。
草木の魔法は、土の魔法に負けず劣らず地味だけど、生育を早めたり、収穫した魔草の日持ちを長くしたりできる。
なんというか、平和だ。こんな毎日が続けばいい。
まだ、魔法使いとしては見習いも見習いだし、1人では何もできない子供。
でも、毎日地道に続けていることを積み上げて、できることが一つ一つ増えたり、次の段階のことができるようになっていく。
それにカリンとの距離が近くなった。なんというか物理的な距離が。カリンがマクルタ家の館に住むようになった。
マスタークヒカの住み込み弟子として、魔草畑の世話に励んでいる。
平和な秋の朝、穏やかな1日が始まった。
「おはよう、パナニ。お、朝ごはんは、クロックムッシュだね!やった!」
「はい!クヒカ様がパンをお焼きになったので。。。」
「ちょっと、エレム!私も作るの手伝ったのよ!心して食べなさい!」
カリンがひらひらがついたエプロンを着ている。
たしかに、いくつか形がいびつ。。。ではなくて、味のある形というか。。。こっちから食べるしかない。
カリンの熱い凝視のもと、むしゃむしゃとほうばる。
あ、いや、美味しい!これはクロックムッシュ!間違いない。
「カリンのクロックムッシュ、美味しいよ。今日もキキリ畑の世話をしようかな」
「エレム、あたしの魔草畑の間引き手伝ってよ」
「自分でやりなよ!でも、クロックムッシュの御礼に、今日だけ手伝ってあげる」
「なによ、その言い方!まぁ、でもいいわ。よろしくね」
「エレム坊ちゃまも、カリン様もキキリ畑が順調そうで、素晴らしいですね。日々の努力の賜物です」
「ありがとう、パナニさん。
いつも応援してくれるから、励みになるわ!料理も色々教えてくれて、ありがとう!
エレム、またクロックムッシュまた作ってあげるからね!」
「カリン、ありがとう。。あれ?」
カタカタカタカタ。
「あ。また地震。最近多いね。あたし、怖いわ」
元の世界では、地震はよくあった。大きな地震も経験した分、ちょっと地震には敏感かもしれない。
グラグラ
パリンとお皿が一枚床に落ちて割れる。
「きゃぁ!」
カリンが悲鳴をあげる。
「お皿が割れるなんて、不吉ですね」
そう言いながら、パナニが割れたお皿を片付ける。
元の世界の感覚だと震度3くらいかな。
ザルムが執務室から出てきた。
「この3日で30回目の地震だな。回数が異常だ。
昨日、地震の記録と川の水位の変化を王都シャーヒルに報告したんだ。早ければ明後日、調査団がペンプス村に来るはずだ。それまでに大きな変化がなければいいが」
「ザルム村長、ザザゲム川の水位に異変が?」
「なんだカリンは、聞いてないのか?
地震が頻発するようになって、昨日からザザゲム川の水位がどんどん下がっているんだよ。
このまま干上がるようなことがあれば、農作物や家畜を育てられなくなるだけじゃない。死の森との境界線がなくなって、水が苦手な炎犬でも、簡単にペンプス村に来れるようになる。そうなったら、ペンプス村は、おしまいだ」
「そ、そんな。どうしたら?父さん、何かできることはないの?」
「自然の大きな変化の前では、人類は無力だな。今のところ、どうすることもできん。
王都シャーヒルから調査団がきたら、対策を練ろう。エレムも一緒にくるといい。なぜかゾゾ長老がエレムを同席させろと言っているんだ」
何で俺が??
「なんで、エレムだけ?!」
カリンが小声で不満を言っている。
嫌な予感がする。
明後日。
王都シャーヒルから調査団が到着した。
総勢15人。思ったより大がかりだ。さっそく大広間で会議が始まった。
茶色いヒゲの偉丈夫がザルムに挨拶をした。
「ペンプス村調査団団長ソニレテだ。
ザルム殿の詳細な報告書のおかげで、即座に調査団を結成、派遣することができた。感謝する。
これはこれは、ミョシル・ゾゾ老師、ご健在でしたか!」
威厳のオーラが凄すぎる曽祖母、100歳を超える魔法使いのゾゾ長老がゆっくりと部屋に入ってきた。黒いローブには色とりどりのクリスタルが縫い付けられている。
伝統学派の魔法書に書いてある定説に異議を唱えて、マジポケ魔法院を追放された変わり者。
魔草を使う魔法は全て草木の魔法だというのが、主張だったらしい。
若い時は記録上唯一のSS5の魔法使いとして隣国にも名前が轟いていたそうだ。無詠唱で魔法が使えるらしい。
今は、故郷のペンプス村で隠居しながら、独自の研究を続けている。
敬礼するソニレテ団長と向かい合って、一本しかない歯を見せながら、豪快に笑った。
「かっかっか。おぉ、ソニレテか。逃げ足の早いイタズラ小僧が大きくなったものじゃ。わざわざ来てもらって、悪いな。
ペンプス村は、もうダメじゃ。川が干上がれば、人が住めなくなる。これも自然の摂理。非力な人類になす術などない」
クヒカが祖母でもあるゾゾ長老を制止する。
「ゾゾ長老、せっかく来てもらったのに、何も希望のないことを言っては。何かできることを考えましょう」
「ふむ。希望か。そうじゃな。それについて話さねばならぬな」
ソニレテ団長、ザルム、クヒカ、ゾゾ長老、そして、俺も円卓に座る。いや、俺だけ場違いすぎる。何もできない子供が1人紛れ込んでいる。
ゾゾ長老が威厳があふれる目つきで、皆を見渡して言った。
「ソニレテ、よく来てくれた。
わしが知る限りの希望を話そう。
川を遡って、山を登り、雲と同じくらいの高さの場所に、開けた草原とゲムゲム湖がある。そこにはザザゲム川の水源の泉がある。
そこには水と風の精霊アクアウ様がいるという言い伝えがある。
誰か、精霊と話せるものが行って、知恵をもらってこれたら、解決策が見つかるかもしれん」
ソニレテ団長が困った顔をした。
「ゾゾ老師、お言葉ですが、精霊と話せるものなど、聞いたことがありません。
それどころか精霊を見たものもいない。もっと、何か地に足がついた案をかんがえましょう。おとぎ話に付き合っている時ではないのです」
ゾゾ長老が大きな声で笑った。
「かっかっか!ソニレテよ。頭が堅いのう。ここにおるんじゃよ。精霊と話せるものが。そうじゃろ?エレムよ」
「「「え???」」」
皆が一様に驚いて、俺を見る。これはもう全てを隠してはおけない雰囲気。。。
ザルムが不思議そうに言った。
「エレムは、精霊と話せる人を知っているのか?」
「あ、いや、その?え?でも、ゾゾ長老、なんで?そのことを知っているの?誰にも話してないのに!」
「かっかっか!知っているさ。
エレムが精霊と話せるとしか考えられんじゃろ。
そうでなけば説明できない。
当時9歳で死の森に入り、何匹もの炎犬に追いかけられながら、カリンを救出して、不思議な草舟に乗って川を飛び越えて帰ってくることなど、自力では不可能じゃ。我が弟子フラザールでも絶対にできないことなんじゃ」
「「「え???」」」
また、全員が俺を見る。ザルムが頭を抱えている。
「エレム、本当なのか?精霊を見たり、話をできるなんて。そういえば3歳くらいのころ、不思議なものがたくさん見えるとか言っていたが。。。」
「えっと。。。黙っていてごめんなさい。
いつもじゃないんだ。精霊は、気まぐれというか。。。
3歳くらいの時には、毎日精霊と目が合ったんだけど、今は、どうしても困った時くらい。
1年前、死の森で草木と風の精霊ポッコロ様に助けられてから、精霊には会ってないんだ」
精霊が見えたり、話ができるだけで、この騒ぎだ。転生や精霊が女神様の使徒であること、女神様の加護があることは、話さない方がいい。ゾゾ長老には、何もかも見透かされていそうな怖さがあるけど。
ゾゾ長老が目を光らせて、ニヤリと笑う。
「やっぱりな。エレムは、絶対に精霊が見えると思っておったよ。草木と風の精霊ポッコロ様か。ペンプス村の守り神様じゃないか。しかし、なんでエレムだけが特別なんじゃろうか。まぁ、いい。それはそれとして。。。
ソニレテよ。どうせ死の森から帰還したエレムとカリンがどれほどの実力かも、今回の調査項目に入っているんじゃろ?」
ソニレテ団長が頭をポリポリとかいた。
「参りましたな。国王から追加された調査項目は、口外できません。しかし、ゾゾ老師には、全てお見通しですな。いやはや。
では、私を含めた調査団数人とエレムとカリンで、山に登り、水と風の精霊アクアウ様を探し、助言を求める、というのはどうでしょうか?」
クヒカがガタンと椅子を倒しながら、飛び上がるように立って言った。
「私も!私もいきます。まだ2人の魔法は未熟です!エレムなんてまだ10歳になったばかりですし」
「かっかっか。クヒカ、ダメじゃ。過保護じゃのう。可愛い子供には、旅をさせよ。
山の上とはいえ、ペンプス村側では魔獣は出ない。
それにファラム国騎士団長にして、最強の剣士ソニレテが一緒なら大丈夫じゃよ」
ゾゾ長老には逆らえないクヒカが、恨めしそうにしぶしぶと席を直して座る。
ザルムが重々しく口を開いた。
「ソニレテ団長、エレムとカリンをよろしくお願いします。
地震は今日も続いています。事態は、急を要するかもしれません」
「承知した。このファラム国騎士団長の名にかけて、エレムとカリンをお守りしましょう。
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