不運さんが転生したら普通の人生を送りたいのに、精霊の力を借りても波瀾万丈な件

山本いちじく

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第1章

古代の博物館と新しい仲間

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 迷路の様な古代遺跡を迷い歩いた。やっとアゴラスに到着した時には、もうすっかり晩になっていた。
 くたくたにくたびれて、もう歩けない。でも、ポムルスのパンを食べたら元気が出てくるから不思議だ。

 俺とガンダルとカリンは、ほんの少し休んでから、すぐにゾゾ長老の部屋へ向かう。
 長くて暗い赤絨毯の廊下が続く。壁にランプの灯りがあるとはいえ、明るいとは言えない廊下に人や動物の頭蓋骨が並べられている。ペンプス村のゾゾ長老の館と同じく、悪趣味なホラーテイストだ。そもそも地下であるという圧迫感がさらに怖さを引き立てている。
 
 「この廊下を歩くときは、大抵ゾゾ長老に怒られる時だぜ。良い思い出がねぇな。うぅ」

 ガンダルがぼやく。
 カリンもそれには同意のようだ。

「この廊下をみんな避けて通るわ。怖いもの。頭蓋骨なんて
どこから集めてくるのかしら。気味が悪いわ」

 不気味な廊下の突き当たりに、100歳の老人が開け閉めするには、どう見ても重厚すぎる木の大きな扉がある。

「ふぅ」

 ガンダルが、気が重いため息と共にゾゾ長老の部屋のドアにノックをしようとして、手を止める。
 来客中かな。部屋の中から声が漏れてくる。

「ヒヒヒ!その飛竜を取ると、お前は詰むぞ。いいのか?」

 ゾゾ長老の勝ち誇った声が響く。

「本当ですか?大駒を失いたくないだけでは?ブラフはやめてください。こう見えて国のブブンパ大会で優勝したこともあるんですよ?」

 誰の声だろう。聞き覚えがある。ブブンパという将棋に似たボードゲームをしてるみたいだ。ザルムが好きでよくやったな。一度も父に勝ったことないけど。

「飛竜を取りたければ取るがいい。たまには老人の助言も聞くもんじゃよ。飛竜を取って、お前にはわしを詰みにする手順が見えているのか?」

 ゾゾ長老が親しい相手なんだろうか。飛竜は盤上で一つしかない最強の駒だ。

「今は、盤上の敵です。詰み筋が見えているかなんて、言えませんよ。そっちこそ待った!とか言うのは無しですよ?この飛竜頂きます」

 カリンが眉間にシワを寄せている。カリンには、ゾゾ長老とブブンパをしている相手が分かったらしい。

「ヒッヒッヒ!わしの勝ちじゃな。間違いない。19手詰みじゃ。
 お前の敗因は、傲慢さじゃな。
 あとは、逆立ちしても勝てない相手に恵まれなかったことじゃ。
 わしから飛竜を取るときは、手玉に取られてるのが自分だと、知れ。
 ブブンパでわしを手玉に取るのは、ザルムくらいじゃ」

「上には上がいるものですね」

「そういうことじゃ。さて、こうしてこうしたらこうなって、こうこうこうの。。。こうこうこうで、ほれ!ブブンパ!」
 
 ブブンパは、将棋でいう王手だ。どうやらゾゾ長老が勝ったらしい。

「認めたくないものですね。若さゆえの傲慢さというものを。
 魔法では敵いそうもないので、得意のブブンパで挑んだのですが。まさか返り討ちにされるなんて。
 あぁ、これが私の自惚れ、慢心か。やれやれ。
 アレイオスに来てからツキに見放されてばかりです」

 ガンダルが怪訝そうに髭をポリポリと掻いている。

「ヒッヒッヒー!若さを嘆くな。わしから見れば、みんな赤子じゃよ。相手が悪かっただけで、お前もなかなかの腕じゃ。
 不運は、仕方ない。幸運のドラゴンが死んだくらいじゃからな。腐らず精進しろよ?お前は、まだまだ強くなれる」

「完敗ですが、この一局の中で強くなれました。何事も勉強ですね」

 どうやらブブンパが終わったみたいだ。ガンダルがノックをすると「いいぞ、入れ」とゾゾ長老の明るい声がする。
 部屋にはいると、思ったより広くて明るい室内だ。
 ゾゾ長老とキーラが楽しそうにブブンパの盤上を覗き込んで感想戦をしている。

 俺もカリンも反射的に杖を構える。

「キーラ、お前!どの面さげてここにいるんだ!」

「ヒッヒッヒ!まてまて。エレム、落ち着くんじゃ」

 カリンが杖を突き出す。

「ゾゾ長老!キーラは、危険です!」

 ゾゾ長老が大真面目に言う。

「危険なんかありゃせんよ。キーラは安全じゃ。もはや同志と言っていい」

 カリンがキーラを睨みつける。 

「どういうこと?昼間、あたしたちを襲ってきたばかりなのよ?どういう風の吹き回し?また、あたし達を騙そうとしてるんでしょ。このペテン師!」

 キーラが投げやりに手を振る。

「クビですよ。クビ。封印に失敗して、精霊の使徒は、お役御免です。
 エレムを封印するのはもう、手遅れになりました。カンカラカンも死んでしまいましたし。
 いやむしろ、昼間の不運な出来事がカンカラカンの息の根を止めたと言った方がいい。今や私も不運のドラゴン殺しの共犯者ですよ」

「ヒッヒッヒ!キーラから全部聞いたぞ。
 不運のドラゴン殺しエレムよ。どっちかって言うと危険なのはお前さんの方じゃ。
 キーラにエレムを封印する意志は、もうない。むしろ、エレムの不運の解明に手を貸してくれるそうじゃ。人類の生存のために。
 昨日の敵は今日の友じゃ。キーラの言葉に嘘はない。味方と思えば、これほど頼もしい奴は、おらん。仲良くするんじゃ」

「そういうことです。微力ながらお力添えさせていただきます」

 カリンの怒りは収まらない。

「あんたの力なんて要らないわ!どういうこと?!昨日どころか、今日の昼の敵でしょ?」

 ゾゾ長老がカリンを諌める。

「カリン、そんなにキーラを敵視するな。危険ならわしが瞬殺しとるわい。
 昨日でもお昼でもどっちでもいいわい。友を得るのに早いに越したことないじゃろ?なぁ、ヤードルや?」

「同意だ」

 後ろから、聞き慣れた声がする。
 ヤードルさん!?

「おお!ヤードルやっぱり生きていたな。お前のおかげで助かったぞ!ガッハッハ!」

 ガンダルが嬉しそうにヤードルに歩み寄って、ヤードルさんの背中をバンバン叩く。
 ヤードルさんが迷惑そうに眉間にシワを寄せる。

 ゾゾ長老の目がギラリをガンダルを見る。

「ところでお前たち、どこをほっつき歩いておった?かなりの大遅刻じゃな。昼過ぎまでに帰れと言ったはずじゃ、ガンダル?言い訳を許してやろう。理由を言え!」

「ひっ!それには訳が。。。」

 ガンダルが背筋を伸ばして、ゾゾ長老の前に出る。それから、ドワラゴンが親方を引き受ける件や古代遺跡でのこと、博物館のことをゾゾ長老に話す。
 ゾゾ長老が静かに話を聞いた後、少し黙ってから、口を開く。

「ほう。魂の魔法。これで12種の魔法が判明した。土、水、氷、火、風、雷、草木、魂、時空、光、闇じゃな。
 まだまだ人類は、ほんのわずかしか魔法を知らん。これからが楽しみじゃ。
 古代の博物館か。そこに行けば新しいことがわかるかもしれんな。ワクワクするぞ。ヒッヒッヒ!」

 カリンが補足の説明をする。

「でも、ゴーレムの起動ができても話せないし、文字も模様も何を意味しているのかわからないわ。
 いろいろな仕組みやカラクリがあるみたいだったけど、何もわからずお手上げで、通り過ぎてきたの。
 目印をつけてきたから、地下の封鎖されていた岩の割れ目から博物館まで辿り着けると思うわ」

「なるほど。古代遺跡の模様か。わしは、古代の模様や文字が少し読める。フラザードと一緒に研究していてよかったわい。
 目印をつけてきたのは良い判断じゃ。楽しみすぎて、待ちきれんわい。フラザードを呼べ!今からすぐに博物館に案内しろ!」

 ゾロゾロとみんなで古代の博物館に移動する。壁につけたファイポの焦げ跡を辿って、思ったより早く博物館に着いた。

 ファイポで照らし出された博物館の入り口は、巨大な石の柱が立ち並び、神殿のような雰囲気で壮観だ。

 中に入ると、中は真っ暗だ。
 ゾゾ長老が床の模様をファイポで照らしながら読んでいる。

「なるほど。この模様は魔法陣じゃ。
 ほとんどのやつは読めないが、これは読めるな。んー、ちょと待っておれ。フラザード、手伝え」

 ゾゾ長老とフラザードさんが床や壁の模様を確かめながら何かを探している。あれじゃない、これじゃないとブツブツ言いながら、もう30分は探している。

「おお!これじゃこれじゃ!この魔法陣にファイポを近づけると、博物館の照明が全部灯されるようじゃ。
 いくぞ。それ!」

ボボボボボッ!!!

 おお!すごい!
 広間に入った時と一緒だ。あの時、たまたま照明に灯りをつける魔法陣にファイポが当たったのかもしれない。

 館内に灯りが満たされる。

 なんだこれは?!

 大小様々な石の台の上に、見たことがない不思議なものばかりが置かれている。
 巨人の骨格、見たことがない魔獣の標本、怪しく光る水晶、意味がわからない機械や、大小の歯車のカラクリ。不思議な絵が壁一面に描かれている。

 奥には、一万個の石板が整然と並ぶ棚がある。その中心に、炎犬の骨を刺して起動した人の形をしたゴーレムが目を光らせて台座に座っている。でも、目が光っただけで動かない。

 ゴーレムの台座にも魔法陣や読めない字が書いてある。
 ゾゾ長老がじいっと見て、解読しようとしている。

「ダメじゃ。分からんぞ。このゴーレムを動かす何かが近くにあるのかもれしれん」

 カリンが何かを見つけたみたいだ。

「こ、これかしら?真っ平の黒い大きな板が壁にかかってるの。穴があるわ。ガンダル、炎犬の骨を入れてみて」

「お、おう」

 炎犬の骨を穴に入れると、黒い長方形の板がブーンとぼんやりと光る。
 ゾゾ長老が臆せずに黒い板に触れる。指が触れた部分が白くなる。

「なんじゃこれは?!ここに何かを書くのか?おい、ガンダル、そっちの壁にも黒い板がかかってるな。どこかに炎犬の骨を入れる場所がないか探すんじゃ!」

「あ、ありました!」

 また、黒い長方形の板が起動する。板の下の方に小さな長方形の穴が3つ開いている。

 フラザードさんが穴を見て思いつく。

「石板をこの穴に入れるのではないでしょうか?棚から石板をもってこれますか?」

「エレム!石板を取りに行きましょ!」

 棚に並ぶ石板を取ろうとしても、何かロックされているみたいで取れない。長年の劣化でひっついてしまったのか。

「ダメじゃ!石板に触れるな。それはゴーレムが運ぶことになっているようじゃ。だんだんわかってきたぞ。
 かなり時間がかかるかもしれないが、使いこなせるかもしれん。何か古代の情報、叡智がここには眠っておるようじゃ。わしの大好物じゃ!ヒッヒッヒ!」

 ゾゾ長老の眼がランランと輝いている。

「叡智といえば、エレム、お前に聞きたいことがあるんじゃった。お前は前世の記憶があるんじゃろ?
 一日で5万人分のパンを焼くにはどうしたら良いと思う?前世の記憶でなにか役立つものがないか?」

 前世の記憶といっても、俺は技術者でもなければ、クヒカのようにパンを焼いたことさえない。ド文系で、理化学や工学の素養もない。そもそも、この世界には、動力がない。蒸気機関についても説明できるほど知らないし。説明したところで、基礎をすっ飛ばして、いきなりできるほど簡単なものではないんだろう。

「いやぁ、なんとも。。。」

「なんじゃ、役に立たんのぅ」

 ゾゾ長老が露骨にガッカリする。
 あからさまに失望されると悲しくなる。

 なんとか記憶を掘り起こしてみる。そうだ、子供の頃社会科見学で行った、パン工場の話はどうだろう。
 ベルトコンベアーでパンが次々と焼かれていくイメージを、身振り手振りをつけて必死に説明するが、記憶が曖昧な上にプレゼンが下手すぎて伝わらない。

「むぅ。なんかよくわからんな。動く床の上にパンを乗せて走らせる?!床を動かすほうがパンを焼くより大変じゃわい」

 カリンが何かを思いつく。

「魂の魔法のゴーレムを使えば!?」

「ほう。話に出ていた魂の魔法か。それも気になっておったところじゃ。ちょうど良い、魂の魔法も見せてもらおうかな。どこか、広い場所があるかのう」

 博物館から出て、地下の広間に移動する。真ん中に3体のゴーレムがいるが、もう動かない。

「これが魔王が眠る場所か。これについても調べる必要があるな。気になることばかりじゃ。
 それはそうと、エレム、魂の魔法をやってみろ」

 一度見ただけで、ぶっつけ本番とはなかなか厳しい。しかも、カリンが一番最初に教えろとか言ってたのに、あとで怒られないかな。一緒にこの場にいるし、いいか。

 カリンが急かす。

「エレム、早くやりなさいよ!」

 どうやらいいらしい。よし。
 ゴレゴレムをイメージすると、ゴサスチ様が俺の頭に手を乗せた時の、頭のてっぺんから身体の芯までじんわり温かくなる感覚が蘇る。
 なんだか行けそうな気がする。

「詠唱付きでいくよ。

万物に宿る魂よ!形を作り、我に従え。ゴレゴレム!」

 沈黙。

 うわー!やってしまった。失敗だ。みんなの視線が痛い。詠唱が違ったかな?合ってたと思うけど。。。

 カリンが笑う。

「見て!ちっさ!小さすぎ!可愛い!あははは!」

 俺の足元に、手のひらに乗るサイズの石のゴーレムがヨチヨチ歩いている。

 フラザードさんが驚く。

「なんてことでしょう!自律して動けるなんて!生命があるとでもいうのか?なんてことだ。。。エレムなんともありませんか?この魔法、人類の身にすぎた力です。魔法を使う人に命の危険があるかもしれません」

 そんな大袈裟な。なんともないし、平気だ。

「今のところ大丈夫、かな」

 フラザードさんにそこまで言われると、ちょっと得意げな気分だ。

 カリンがつまみ上げて、手の平に乗せて遊ぶ。ゴーレムがカリンにお辞儀をしたりしている。ジャンプしろと念じると、ぴょんとカリンの手のひらから地面に飛び降りて着地を決めた。

「むぅ。確かに小さいが、立派なゴーレムじゃ。エレムの意思が通じるとはな。
 万物に宿る魂。。。そうか、そういうことか。いや、違うな。そうじゃ、これじゃな。ちょっと力を抑え気味がいいか。
 未知の魔法じゃ。危険な雰囲気もある。慎重にいくが吉じゃ。

 万物に宿る魂よ!形を作り、我に従え。ゴレゴレム!」

 地面からむくむくと大きな石像が立ち上がる。5メートルほどの巨大な石像ができる。しかし、動かない。

「おお!ちょっと大きすぎたな。なるほどこんな感じじゃな。いいぞエレム!いい感じじゃ!ちょっと難しい魔法じゃな。どうやって動くんじゃ?フラザード、キーラ、お前たちできるか?」

 キーラがゴレゴレムを詠唱して、人間大の石像を作る。

「ちょっと難しいですね。
 石像までは作れますが、自律して動かすイメージと、思い通り動かすイメージや意思を伝えて従えるのがどうにもなりません。悔しいですが」

 フラザードさんも同じだ。

「ゴレゴレムは、おそらく複合魔法ですね。魔法を複合して使えると言うのは、特大の大発見です。
 魂の部分と意思を持たせ従わせる部分ができませんが、形を作ることだけできる。
 そうか、魂と土の精霊ということは、土の魔法!?土の魔法だけなら使いこなせるかもしれませんよ。試しにやってみましょう。

 形を作れ!レゴレ!」

 同じように石像だけできた。これが天才フラザード。。。

 カリンがガッカリと悔しさを隠さずに吐き捨てる。

「あたしもゴレゴレム、うまくできないわ。レゴレならできるけど。エレム、何かコツというか、イメージしているものを教えてよ!」

「ええっと、頭のてっぺんからじんわり温かくなる。。。感じ。。。」

「なによそれ!全然わからないわ!」

「そうじゃろうな。エレムは、ゴサスチ様からゴレゴレムに必要な何かを注入されたのかもしれんな。
 かなり複雑で高度な魔法じゃ。わしもレゴレで石像を作れても、動かせん。だが、フラザードのおかげでレゴレを知った。これも、とんでもなく有用じゃ!」

 ぴょん飛び跳ねていた小さなゴーレムは、電池が切れたおもちゃのように動かなくなった。

「おい、エレム、この炎犬の骨のかけらを使ってみろ」

 ガンダルがくれた小さな炎犬の骨のかけらをゴーレムの背中の小さな穴に差し込む。
 するとゴーレムがまた元気に動き回り始めた。おお。

 それにしてもゴレゴレム、俺にしか扱えないって、ちょっと嬉しい。いや、なんかすごく嬉しいぞ。

 ブハッっ!!

 いきなりカリンに顔面を張り手された。

「ズルい!ズルすぎる!」

 そんな。ひどい。

「悔しいが、まぁ、いいじゃろう。エレムがゴーレムを作ればいいだけの話じゃ。
 確かにパンを大量に焼くのにゴーレムが使えそうじゃ。
 パン工場の件は、フラザードとドワラゴンとクヒカと要件をまとめて、基本設計を作るとしよう。ザルムの知恵も借りるか。
 よし!充分じゃ」

 動く床やゴーレムの活用、そんな摩訶不思議な無理難題を押し付けられて苦悩するドワラゴンが目に浮かぶようだ。頑張れ、ドワラゴン。

 ゾゾ長老が唐突に言い放つ。

「お前たち!明日の朝アスチ様に会いに、出発するんじゃ」

 え?

「明日の朝?!」

 急じゃない?

「そうじゃ。エレム、キーラ、ガンダル、ヤードル、カリン、このメンバーでいいじゃろう。
 フラザードは、残ってわしを手伝え。
 ザーシル王の勅令では単独で行けと言うことじゃったが、気にしなくていいじゃろ。どうせザーシル王は失脚する」

 ザーシル王、ひどい言われようだ。でも、ゾゾ長老が言うと説得力がある。それに旅の仲間がいる方がいい。

 ガンダルが明るくキーラと握手する。

「よろしくな。俺は、良いぜ。強い奴がいるほうがいい」

 ヤードルさんが腕を組んだまま、相変わらず短く言う。

「俺もだ」

 ガンダルとヤードルさんとキーラの間には、命のやり取りをした結果生まれる、ある種の信頼関係がもうあるのかもしれない。

 カリンが怒りなが、顔を逸らす。

「あたしは、まだキーラを信用してないから!」

「俺は、キーラを信じる。キーラが俺を信じないって言った理由もよくわかる。俺の力が足りないのも確かだ。
 みんなを救うには俺の不運を解明する必要がある。そのためには、キーラの力が必要だ」

「ガンダル、ヤードル、そして、エレム。ありがとう。
 カリンが私をすぐに信用できないのも理解できます。
 私は、確かにエレムを信じないと言いました。
 日々の鍛錬では問題が解決しなかったのも事実です。
 しかし、エレムが毎日鍛錬を続けたことが本当だということは、分かります。
 それは、一人の人間として、尊敬に値します。
 私のやるべきことは、変わりました。
 人類が存続するために今必要なのは、エレムの不運を解明することです。
 私の信条は、初めから変わっていません。共に戦い、不運を解明しましょう」

 カリンが舌を出してベーっとキーラをからかう。

「ペテン師!口が達者ね!あたしが見張ってやるわ!」

「これこれ、カリン。まぁ、いいじゃろ。
 魔樹の森を抜けるのじゃ!アスチ様に会って、知恵をもらって来い。
 わしは、博物館にまず3日籠る。メルロにドワラゴンとクヒカをここに呼ぶように伝えておくれ。
 総督府の諸々は、ザルムさえいれば大丈夫じゃろ。
 さっきからワクワクして、たまらないんじゃ!ヒッヒッヒ!」

 ゾゾ長老が新しいおもちゃを与えられた子供のようにウキウキしている。ニコニコしながら、シャリシャリとポムルスをかじる。
 俺たちも旅の準備をしないと。
 ザルムとクヒカにどう話したらいいんだろう。
 今夜は、長くなりそうだ。
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