キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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ミッション:1 マグナ=ヘリクス

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 夜が明けた。
 ユウマはベッドの端に座って、装備メニューを開く。

 半透明のウィンドウが宙に浮かぶ。
 黒い背景に、白いフォントで装備が一覧表示されている。
 指先でスクロールすると、アイコンが青く光った。

 銃器欄:
 M4アサルトライフル(デフォルト)

 ウィンドウの縁には淡い電流が走り、操作するたびに「ピッ」という電子音が鳴る。
 ――まるで、現実に浮かぶホログラム端末のようだった。

 いつもの初期装備だ。
 念の為、デフォルトm4の性能を確認する。

カテゴリー:アサルトライフル(中距離汎用武器)
装弾数:30発/1マガジン
使用弾:5.56mm弾

特徴・機能:
• 反動が少なく、扱いやすいオールラウンダー。
• セミオート/3点バーストの切り替え式が可能。
• 有効射程は中距離(50~200m)。
• 精度はそこそこだが、威力と貫通力は平均的。
• 初心者にも扱いやすいが、上級者には物足りない性能。フルオートはできない。


「これで100人の殺し合いに行けってのかよ」
 溜息まじりにぼやくと、隣であくびをしたフィーンがベッドから身を起こす。赤い髪がサラサラと揺れる。

「ふふっ、ユウマは慎重だな。安心しろ、あたしがいる」

 彼女の腰には、漆黒の刃を束ねたようなサブマシンガンが二丁あった。
 銃身の一部が呼吸するように淡く光り、コードが血管のように鼓動している。

「それ、レジェンダリーか?」
「“マグナ=ヘリクス”。鬼族に代々伝わる二丁サブマシンガンだ。ユーザ認識付きで扱えるのは、あたしだけだ」

 サブマシンガンは、圧倒的に連射速度が高い武器。特に近距離戦闘ではエイムを合わせられれば、勝ちやすいので前線メインで立ち回りたい人向けの銃と言える。
 
 でも、連射速度が高いものの反動が大きくエイムを合わせるのが難しい上、中距離以上の距離では他の武器に負けやすい。上級者向けの武器だ。
 それを両手に一丁ずつ持つ二丁スタイル。攻撃的すぎる。

 ユウマは無言でうなずいた。
 専用武器。強者のオーラを感じる。流石、伝説の鬼。
 だが、昨日の夜――キスのスキルで隷属化したはずの彼女は、自由に笑っていた。

「フィーン、ほんとに隷属してるのか?」
「してるよ。ただ、命令されてないだけだ」
 フィーンはウインクして、バトルロワイヤルのミッションにエントリーするロビーへと歩き出した。



フィールド・ゾーン:デス・ロッジ北部

 ここはFランクが参加できるフリーランクのミッション。2人から4人チームのバトルロワイヤルミッションのフィールドだ。フィーンはSSランクだが、ユウマのランクに合わせてFランクのミッションになっている。
 そもそもガンゲノムシティにはCランク限定までしかミッションがなかった。
 フィールド内で死ねば、ロビーに戻される。

 瓦礫の街並みに朝霧が漂う。
 ユウマとフィーンは、壁沿いを移動していた。

「敵チーム、三時方向。二名」
 フィーンの角が淡く光ると、視界のHUDに赤いマーキングが浮かんだ。

 左上には「体力ゲージ」と「弾数カウンター」。
 右下には「ミニマップ」と「残存チーム数」。

 敵を捉えれば、赤いマーカーが自動で浮かび上がる。
 フィーンの心拍と共鳴リンクが上昇すると、画面の中央に紫色の波紋が広がった。

 現実とデジタルが重なったような視界。
 ――まるで世界そのものが、ひとつのゲーム画面になっていた。

 ユウマはしゃがみ、デフォルトM4をぎこちなく構える。
 ユウマの手はわずかに震えていた。

「一人はスナイパー。もう一人は突撃タイプだ。私が前に出る。ユウマは援護」
「了解」

 そのとき、フィーンが振り返った。
 金の瞳が、朝霧の中で淡く光る。

「ユウマ……あたしたち、もう離れられない気がする」

 彼女の手がユウマの胸に触れ、鼓動を確かめるように押した。
 次の瞬間、唇が重なった。静かで、でも確かな熱を持つキス。

「ちゅるる、あぁん」

「ぷはっ!フィーン、こんなところで不用心だよ。もうフィールドの中なんだよ」

 短い時間だったが、ユウマの視界に波紋が走り、
 《隷属リンクLv2:共鳴発動》の文字が浮かんだ。

「……これで、お互いの呼吸が読める。もう、敵の弾なんか怖くない」
 フィーンは小さく笑って、ライフルを構えた。

 ユウマの心拍が早まる。
 キスまで――それが条件。けれど、フィーンの身体の全てが欲しいと思わずにはいれない。

「行くぞ」
 フィーンが低く呟いた瞬間、足元の影が広がり、彼女の体が霞のように溶けた。
 次の瞬間、屋上の敵スナイパーの背後に現れる。

 ――ズダダ!
 マグナ=ヘリクスの赤い光弾が閃き、敵スナイパーの胴を貫いた。

「ひとり、ダウン」

 もう一人が怒号とともに突っ込んでくる。
 赤いバレットラインが放射状に走る。
 ショットガンの散弾がユウマの脇を掠め、HUDに赤いダメージ値が表示された。

「ちっ!」
 ユウマは転がり込み、M4をタタタッと三連射。だが命中率は低い。ゲームではエイムアシストで簡単に命中できたのに。そのアシストが全くない。赤いバレットラインもでない。

「ずいぶん下手くそじゃないか、ユウマ!」
「言うな!」

 フィーンが跳躍し、空中でマグナ=ヘリクスを一回転。
 マグナ=ヘリクスからはエイムアシストの赤いバレットライン見える。
 銃口から放たれた炎のような光線が敵を包み、爆風が吹き荒れる。

 破片が散る中、ユウマは身を伏せながらつぶやいた。
「お前、強すぎだろ……」

「だから言ったろ?伝説の鬼だって」
 フィーンは照れたように笑い、二丁のマグナ=ヘリクスを誇らしげに肩に乗せた。



残り:47人

 スコアボードの左上に数字が表示される。
 撃破数:ユウマ0、フィーン 12。
 控えめにいって、フィーンは無双している。

「なあ、ユウマは、何を目指しているんだ?」
「最高ランクになる。それでSSS限定バトルロワイヤルで優勝するんだ」

「それは、たいしたもんだ」

「そう。道のりは遠い」

 ユウマは息を呑んだ。
 ゲームで勝つだけ――それが生き返る条件。

「つまり……勝てば、いいんだな」
「そう。もっと強くならないと」

 ユウマは銃を握り直した。
 負けられない理由が、ようやくできた。

 霧が晴れ、遠くで銃声が鳴った。
 二人は目を合わせ、頷いた。

「行くぞ、フィーン」
「了解。――狩りの時間だ、ユウマ」

 銃声と共に、二人の影が瓦礫の街に溶けていった。
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