キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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ユーノスの勝算

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 船長室の奥に設けられた作戦会議テーブル。
 天井からぶら下がるライトは古く、チリと揺れている。
 金属の匂いと、船を伝う低い振動だけが空気を満たしていた。

 ユウマ、フィーン、シュナ、シルフィが席につく。
 ユーノスはモニターを背にして立ち、静かに口を開いた。

「まず……君たちに伝えなければならないことがある。
 ガナン&サナ・ソニクル。つまり、シルフィ・ソニクル、君の両親の話だ。」

 名前を呼ばれた瞬間、
 シルフィの肩がびくり、と震えた。

 その震えを、ユウマははっきりと見た。

 ユーノスは懐から古いホログラム端末を取り出し、テーブルに置いた。
 ノイズ混じりの光がふわりと浮かび上がる。

 そこに映ったのは、白衣を着た男女──
 柔らかく笑う男と、目の優しい女性。

「……パパと……ママ……その嘘、本当なの?」

 シルフィの声が懐かしさに染まった。

「ガナン博士とサナ博士──
 君の両親は、《地上の星》が本来掲げていた“AIから人類の自由を守る”という理想を、
 真正面から信じていた研究者だった。」

「…………」

 シルフィは息を飲んだまま、映像に手を伸ばすように見つめている。

「彼らは気づいたんだ。
 ゴッドイーターが、AI中枢の“根幹コード”に潜り込み、
 いつでも AI管理社会そのものを書き換えられる権限 を得ていたことに」

 スキルじゃなくて、権限を使った不正行為だったのか。

 フィーンとシュナが顔を見合わせる。

「じゃあ……それに気づいたから?」

 ユーノスはゆっくりとうなずいた。

「そうだ。
 シルフィの両親は危険を承知で、対抗手段を作った。
 AIそのものを、ゴッドイーターの改竄に耐えられる“新しい構造”へ進化させる……
 ストアドプロシージャだ。」

「……進化、させる……?」

「AIの中枢をアップデートして、
 ゴッドイーターの干渉をすべて“エラー”として弾く。
 それが唯一の対抗策だった。」

「じゃあ……じゃあ……!」

 シルフィが椅子から立ち上がり、胸を押さえた。

「パパとママは……そのせいで……?」

 喉の奥で声が壊れるように震える。

 ユーノスは目を閉じ、短く息を吸って答えた。

「……殺された。
 ゴッドイーターの親衛隊が放った赤鬼熊に」

 沈黙が落ちた。

 船の振動だけが微かに空気を震わせる。

 次の瞬間、シルフィの両肩ががくりと落ち──
 指が震え、涙が静かにこぼれ落ちた。

「そんな……
 研究しかできなくて……
 私に優しくて……ひどい……!」

 涙を拭こうともせず、ただ震える。

 ユウマはそっと彼女の隣に立ち、
 肩へ手を置いた。

「シルフィ……」

「ユウマ……っ、わたし……っ
 ずっと、どこかで信じてたの……
 パパとママは悪いことをしたわけじゃないって……!」

 声が割れ、嗚咽が漏れる。

「やっぱり……違った……世界を守ろうとしていた。
 そして、狙われて……殺されたなんて……!」

 フィーンが唇を噛みしめ、目を伏せる。
 シュナも涙をこぼしながら、シルフィの背中をさすった。

「……ガナン博士とサナ博士は、
 そのストアドプロシージャを旧研究、現《熊鬼研究所》の奥に封印した。」

 シルフィは涙を拭い、顔を上げた。

「……封印……?」

「私たちにも解けない。
 皮肉にも現在、唯一解けるのは──」

 ユーノスははっきりと言った。

「君だけだ。
 シルフィ・ソニクル」

 シルフィの瞳が揺れる。

「ガナン博士とサナ博士は、君を信じていた。
 いつか君が“鍵になる”日が来ると理解していた。
 だから……研究所には君の元々のスキル《追跡》に反応する装置が残されている」

「わたし……が……?」

「君だけが、封印を開けることができる。」

 シルフィはゆっくり立ち上がった。
 涙で濡れた頬のまま、拳を握りしめる。

「……行く。
 絶対に、行くわ。
 パパとママが残したものを……
 わたしが取り返す。
 そして、赤熊鬼とゴッドイーターを倒す」

 ユウマも頷き、フィーンとシュナも拳を握った。

「俺たちも一緒だ。」

「あたしも行くわ。当然よ。あんた一人で背負わせない。」

「シルフィ……泣いてもいい。でも……下は向かないで。」

 シルフィの瞳に、強い光が戻る。

「……ありがとう。
 みんながいるなら……怖くない。」

 ユーノスは深く頷いた。
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