キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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マンハッタン港とユーノスのスキル

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 夜明け前のマンハッタンシティの摩天楼は、海霧に包まれた鋼鉄の巨人のように静かだった。

 風が止んでいる。
 波の音だけが、巨大な都市の足元を洗っていた。

 港は異様な緊張感に満ちていた。

 ゴッドイーター親衛隊の黒いアーマーが並び、
 高出力のドローンが空中を巡回する。
 どの方向からも監視センサーが向けられ、
侵入者を必ず見つけることへの本気さを感じる。

 船の甲板からその光景を見下ろし、
 シュナが小声でつぶやいた。

「……監視が異常だよ。まるで、何かを探してるみたい。」

「その嘘本当?私たちを……?」
 シルフィが背中のショットガンを握る。

「もはや私も対象だ。ローザは私を組織の裏切りものとして密告しただろう」
 ユーノスが答える声は低い。本気の声だ。

 フィーンの索敵発光で50人以上の敵影が光る。

 ユウマは眉を寄せた。
「どうする? ここを正面突破は無理だ。」

 ユーノスはゆっくり振り返り、
 一同を見回した。

「――私が囮になる。」

 その言葉に、全員が固まった。

「ちょっと待てユーノス!危険すぎる!」
 フィーンが前に出る。

「危険?むしろ私が一番成功率が高いわ。」
 ユーノスは指先で髪を整えながら、淡く笑った。

「ユウマたちに見せるのは、初めてだな。
 私のスキル――デコイ。しかも、隷属進化して、デコイズになっている」

 ユウマが息を呑む。
「……デコイズ?」

 ユーノスは頷き、説明を続けた。

「最大で五体まで生成できる。
 能力値はランクSSと同等。
 手に触れた相手の外見も、声も、戦闘パターンも完全複製できる」

 ユーノスは胸を張った。

「そして、私が男装なのは――
 性別を偽装したままデコイに実行させるためよ。
 姿が違えば混乱が起きるからね。」

 フィーンが目を丸くする。
「つまり……私たちと見分けがつかない偽物を五人並べられるってこと?」

「そう。
 そして、自律AIで作戦行動ができる――」

 ユーノスは指を鳴らした。

「陽動部隊が作れる。
 誰が本物か、ゴッドイーターにも見抜けない」

 シルフィが、息を飲みながら言った。

「その嘘、本当?……そんなスキル、反則級よ……。」

「だからSランクの上、SSランクなのよ。」

 ユーノスの笑みに、誰も反論できなかった。
 敵でなくてよかった。頼もしい仲間だ。


 ユーノスが静かに胸に手を当てる。

 ――パキィン。

 硬質なガラスが割れるような音がし、
 淡い青い光が船上を広がった。

「デコイ、起動。」

 ユウマたちと同じ姿、同じ服装の分身が――

 一体、二体、三体、四体、五体……現れた。

 五人のデコイズが整然と立ち並ぶ。
「その嘘、本当?」

「……なにこれ……気味悪いけど、すごい。」
 シュナが呆然とつぶやく。

 デコイたちは主と同じように笑い、
 同じタイミングで軍帽を直した。
 M4、ショットガン、二丁サブマシンガン、マークスマンライフル、LMG、それぞれの武器まで同じだ。

「作戦はこう。」
 ユーノスが全員に視線を向ける。

「デコイ部隊は正面ゲートへ突入。
 あえて銃撃し、親衛隊の注意を完璧に引きつける。
 私たち五人は――**

 裏手ドックから熊鬼研究所へ直行。」

 ユウマが深くうなずく。
「了解だ。」

「ユーノス、案内を頼む――」
 フィーンの声に、彼女は静かに笑った。

「もちろんよ」

 港のあちらこちらで、親衛隊が厳重に隊列を組む。
 ついに親衛隊の一団がこちらに向かってくる。
 その瞬間。

 親衛隊の前にユーノスが五人並んだ。

 親衛隊の隊長が目を見開く。

「……なに? これは……!」

「突撃。」
 全ユーノスが同時に言った。

 次の瞬間――

 五つの影が弾丸のような速度でゲートへ走り出す。

 親衛隊が慌てて銃を構え、

「撃てぇぇ!!」

 銃撃と爆風が港を揺らした。

 しかし、ユーノスたちは跳躍し、壁を蹴り、
 遮蔽物の間を稲光のように駆け抜ける。

「親衛隊の注意、全部向いてる……!」
 シルフィが囁く。

「いまだ。裏手へ!」
 ユウマが全員に指示を飛ばす。

 五人の影が港の闇へと走る。
 銃声は遠ざかり、デコイたちの陽動は完璧だった。

 港の闇を抜け、マンハッタンの廃ビル群へ。

「……ついに来たわね。」
 フィーンが息をひそめる。

「ここから先は、“赤熊鬼”の縄張りだ。」
 ユーノスの声が引き締まる。

 ユウマは深く息を吸い、
 M4を構え直した。

「行くぞ」

 五つの影が、闇の奥へ消えていった。
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