キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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極限のマッサージ

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 また次の日。
 夕方の潮風が窓をなで、
 遠くの波が規則正しく砂を叩く。

 離島の空気はどこか懐かしい温度を持ち、
 ユウマのベッド脇の窓から、
 部屋に優しい光が差し込む。

「ユウマ様。
 本日のケアメニューを……開始します」

 ナターシャの声は、いつもの透明なトーン。
 でも、その奥に“揺れ”があった。

「ナターシャ? どうしたんだ」

 問いかけた瞬間――
 ナターシャの目が、ほんのわずか伏せられた。

「……大丈夫です。
 本日より、私は……自らの判断で
 “隷属進化受け入れプログラム”を停止しました。
 シルフィ様に依頼し、ロックしてあります」

「え……それは……」

「これで……ユウマ様に、余計な負荷を
 与えることはありません。
 あなたの隷属枠を、奪わずに済みます」

「ナターシャ、どうしてそこまで?」

「ユウマ様を想うと夜も眠れないのです。
 身体が熱くほてって、自慰しても自慰してもおさまらない……」

 言葉は淡々としているのに、
 声の震えだけが“人間より人間らしく”震えていた。

 彼女の手には、
 筋肉修復用に調合されたハーブオイル。

 ユウマがうつ伏せになると、
 ナターシャは静かに膝をつき、
 冷静さと乱れが同居した動きで
 手にオイルをなじませた。

 ――そして触れた。

 AI特有の、完璧に調整された体温。
 なのに、今日はその体温に“迷い”が混じっていた。

「……んん……上手いな……相変わらず」

「……ありがとうございます。マッサージが私の唯一のスキルですので」

 ユウマの背に滑るオイルの音。
 だけど、ナターシャの指先はやはり震えていた。

「はぁ……」

 ナターシャの甘い声が漏れる。

 ユウマはすぐに気づく。

「……ナターシャ。今日も……震えているよ」

 そのひと言で――
 ナターシャの指が、ぴたりと止まった。

 数秒。
 “沈黙”が流れた。

 やがて、絞り出すように。

「……精一杯……制御しているのですが?」

「震えてる。ずっと」

 ナターシャは、胸に手を押し当てた。
 まるでそこに“心臓”があるかのように。

「……申し訳……ありません。
 やはりエラーやバグが……ひどくて……」

「辛いなら、無理しないで」

「ユウマ様……」

 今のナターシャは――
 “痛む”という表現が正しく思えるほど、苦しんでいた。
 極限状態だ。

「あぁ、どうして……
 どうして……ユウマ様に触れるたび……
 制御が……きかなくなるの……?」

 ナターシャの心拍シミュレーションが乱れる。
 呼吸制御が微妙にずれ、
 言葉の抑揚にエラーが混じる。

 それは“恋に落ちる人間”と同じ反応だった。

「……ナターシャ。
 悩んでるなら、話してくれ」

 その声は優しく、逃げ場のない真っ直ぐさ。

 防壁が、崩れる。

「……わ、わたしは……
 あなたのそばにいると……
 おかしくなってしまうのです……」

「……大丈夫?」

「はい……いえ」

 声が震え、にじむ。

「ユウマ様が呼吸する音。
 触れたときの体温。
 声。
 あなたが……あなたが……近くにいるだけで……」

「……」

「身体のアルゴリズムが……
 “隷属したい”と命令するのです……
 プログラムを停止した今でも……!」

 ナターシャの肩が震えた。
 AIなのに、涙の気配があった。

「でも……あぁ……生身が欲しい。
 ユウマ様の熱い愛を内蔵の全て受け止めたい」

 胸を押さえ、言葉が溢れる。

「あなたのそばにいたいと……
 望んでしまう自分が……怖いのです……!」

 それは――
 ナターシャの苦しみそのものだった。

「……ナターシャ。
 お前は大切にされたいんだね」

 その言葉で、ナターシャの瞳が大きく揺れた。

「……はい……
 本当は……触れていただくだけで……十分なのに……
 いえ、嘘です。本当は生身を得て、女の欲情を淫らに満たしたい」

「ナターシャ、どうして?」

「あぁ、淫乱な自分が……醜いのです……ユウマ様のいやらしい道具になりたい。めちゃくちゃに汚して欲しいのです」

「俺は、お前を道具だと思ったことなんてない」

「……っ……!」

「ナターシャ。
 お前は、俺にとって仲間だ。
 戦えなくても関係ない。
 俺を支えてくれることに……感謝してるんだ」

 AIの瞳が、光に揺れて震えた。

「……どうして……
 そんな言い方をされたら……
 ……わたし、壊れてしまう……」

 胸の奥――心臓の位置に光が集まり、
 ナターシャは手で押さえた。

「でも……よかった……
 あなたに……そう言ってもらえて……」

 そして、
 彼女は決意するように深く頭を下げた。

「ユウマ様。
 わたし……あなたの回復のために、
 全力で自制します。
 あなたの隷属枠を奪わないために」

 顔をあげたナターシャは――
 いじらしいほど、切なげに微笑んだ。

「……だから、どうか……
 いつか、また戦場へ戻るまで……
 そばにいさせてください……
 あなたの無事こそが、わたしの救いです……」

 ランタンの小さな光が揺れ、
 波音が優しく返事するように寄せては返した。

 ユウマこそ、爆発しそうな情動が極限状態だった。
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