キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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シュナの嫉妬の炎

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 離島の空はやわらかな闇で、風の香りは静かだった。
 ユウマはベッドにうつ伏せになり、深く息をつく。

 扉がそっと開く。

「……ユウマ、ちょっといい?」

 今夜はシュナの番。
 でも今日の彼女は、どこか“空気”が違う。

「どうしたんだ──」

「ユウマ、服をぬいでうつ伏せになって」

 ユウマはシュナの言う通りにした。

 ばふっ。
 シュナは迷いなくユウマの腰にまたがり、馬乗りになる。

「お、おい!背中まだ、痛……っ」

「知ってるわよ。だから、優しくする。
 ……最初はね」

 “最初は”ってなんだよ。

 シュナの指が肩甲骨の上に乗る。
 オイルの香りと、温かい指先。

 しかし──その指が震えている。

「シュナ……今日なんかあった?」

「……あったよ。今日もそう、いつもそうだよ」

 ぽつり。
 その声は、抑えていた何かの“フタ”が外れた音だった。

「ねぇユウマ……
 あなた、最近……
 私のこと見てないよね?」

「え?」

「フィーンの方ばっかり見るし、
 シルフィの言葉には優しいし、
 ユーノスには戦闘指示で真剣だし……
 ナターシャには穏やかに笑うし……」

 ぐいっ。

「痛い痛い痛い!!肩がぁ!くぇぇ!!」

「……ごめん。でも今は許して」

 シュナの声が震えている。

「ねぇユウマ。
 フィーンって、ズルくない?」

「ズルい?」

「だって……すぐあなたを支えて、かっこつけて。
 無敵の近接担当みたいな顔して。
 “ユウマを守るのは私の役目”って顔して。
 なにあれ!」

 声が裏返る。

「で、シルフィよ。
 あの子、天然で可愛いくせに頭良くて……
 ハッキングであなたを支えて……
 なんかユウマの心の中に一番近い感じで……
 自分は特別みたいなふりして!!」

 再び、ぐいっ。

「ぐぎゃああ!!背中割れる!!」

「……ごめん。でもまだあるの」

「ユーノスよ。
 なにあの人?強い、美しい、優しい、賢い、戦略眼もある!
 しかもSSランクで上級者みたいな感じ出して!」

 拳で背中をぽすぽす叩く。

「痛いから!ほんとに!?」

「これは気持ちいいやつなの!」

「気持ちよくない!!」

「黙って!まだあるの!」

 言葉の温度がさらに落ちる。

「ナターシャ……
 AIのくせに……あのお色気なんなの……?」

「お、色気?」

「あるでしょ!?
 仕事できて、優しくて、あなたに尽くして、
 あれで感情あるみたいに揺れるじゃない……絶対、生身を欲しがってる。
 ユウマの前で赤くなるの……
 あれ……もう、はぁはぁしちゃってるんじゃないの?」

 勢い余って背中をぎゅむっと掴む。

「痛い痛い痛い!!」

「もう……無理……
 ユウマが誰かに優しくするたび、胸がぐちゃぐちゃになって……
 嫉妬で死にそうになるの……」

 声が震えている。
 でも止まらない。

「ねぇユウマ……
 なんで……
 なんでそんなに優しいの……?」

 絞り出すような声。

「ユウマが……誰かに優しくするたび、
 わたしの心が……ちぎれそうで……
 ずるいよ……」

「シュナ……俺は──」

「まだ言わないでっ」

 ユウマの言葉を遮る。

「だって……
 あなたの優しい声聞いたら……
 泣いちゃうから……」

 肩甲骨の上で、そっと額が触れる。

「わたし……
 あなたに“好き”って言われたい。
 ちゃんと、わたしを見てほしい。
 誰の代わりでもなく……
 “シュナだから”って……言ってほしい……」

 涙は落ちない。
 でも、声が泣いている。

 ユウマは静かに言う。

「シュナ。
 俺は、お前をいつもちゃんと見てる。
 いなくちゃ困るんだ」

 その瞬間。

 シュナの身体がぴくっと震えた。

「……ほんと?」

「ああ。本当だ」

「……っ……」

 肩の上で、小さく震えながら。

「ユウマ……
 ずるいのは……
 あなたのほうじゃない……?」

 顔を上げたシュナの瞳には、
 嫉妬と、恋と、哀しさと、嬉しさが全部混ざっていた。

 ……ようやく一通りの嫉妬をぶちまけ終えたシュナ。
 頬を赤くしたまま、そっとユウマの背中から降りた。

 呼吸はとっくに乱れている。
 ユウマは背中を押さえながら、なんとか笑って言った。

「……シュナ。ありがとな。
 いろいろ話してくれて。」

 シュナはそっぽを向き、そっけなく言う。

「べ、別に……話したかったわけじゃ……ないし……」

 だが、その耳は真っ赤。
 感情が全部わかりやすい。

 シュナはくるっと振り返り、
 妙な決意に満ちた顔で言った。

「……ねぇ、明日も……してほしい?」

「もちろん──」

「……じゃなくて!」

 食い気味に言葉が飛んできた。

「明日の夜も“シュナの番”にして!」

「え? いや……明日はユーノスだろ?
 みんなで日替わりって決めたじゃないか」

 その瞬間。

 シュナの目がカッと見開かれた。

「いやーーーーーーー!!!」

「うお!? 急に叫ぶな!!」

「なんで!?
 なんで順番通りなの!?
 なんで明日もシュナじゃないの!?
 わたし今日こんなに頑張ったのに???」

「いや順番だから……」

「順番なんか知らない!!」

 ユウマのお尻をバンバン叩き始める。

「ひぃ!」

「ユウマが!
 “明日もシュナがいい”って言えばいいの!!
 それだけでいいの!!」

 バタン!またユウマのお尻を叩く。

「ひぃ!そんな無茶な……」

「無茶じゃない!!
 ねぇ、お願い……お願いだから……
 特別扱いしてよ……!!」

 眉尻が下がり、声が震える。

「わたし……今日、あんなに……
 いろいろ……言っちゃったんだから……
 それくらい……ユウマが欲しい……」

 ベチン!

「ひぃ!」

 ぐっとユウマの服の裾を掴む。

「ユウマの“特別”が……欲しいの……」

⸻シュナのわがままがヤバい。

「シュナ……気持ちは嬉しいよ。
 でも、フィーンもシルフィもユーノスも、順番待ってるし……
 俺一人の判断じゃ──」

「ユウマが言えばみんな聞く!!」

ベチン!

「ひゃぁ!
 聞くかもしれないけど!?
 そりゃそうだけど……!」

「じゃあ言って!!
 明日もシュナがいいって言って!!」

「すぐ“自分が特別”を欲しがるな……」

「だって、だって……
 他の誰かにユウマ触られたら……
 胸が焼けるんだもん……!」

 声がぽろりと落ちる。

「ねぇ……ユウマ……
 シュナを……特別にしてよ……?」

 シュナは、潤んだ瞳で、ぐいっと顔を近づけてくる。

「ユウマ……お願い……
 明日も……わたしがいいって……言って……?」

「……わかった。
 みんなには俺から言うよ。」

「ほ、ほんとに!?
 やった……!!」

 一気に声が明るくなる。

 ベチン!ベチン!ベチン!

「ひゃぁぁぁ!!」

「……なら許す!」

 馬乗りの体勢から、ユウマの背中を包むようにシュナがユウマをギュッと抱きしめる。

 ユウマは、明日が末恐ろしい。

(……赤熊鬼よりシュナのほうが、10倍こえぇ……)

 明日のことは明日。
 今はシュナとの夜に溺れることにしたのだった。
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