キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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シュナvsシルフィ

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 風が鉄骨を叩き、ひゅうと嘯く音だけが響く。
 ここは『ザーノックスクエア』。
 古い高層ビル群が壁のように乱立し、砕けたガラスと、骨のようにむき出しになった鉄骨が、市街地の暗い迷宮を作り上げている。
 その陰惨な様相から「市街地スナイプの悪夢」と呼ばれるミニマップだ。
 廃ビルの最上階、風を避けた影に、シュナが張り付いていた。
 ライフルを構え、スコープを覗き込みながら、勝利を確信した笑みを浮かべる。

「……フッ、ここなら有利だね」

「ビルは20棟以上……物陰も高低差もいっぱい……視界を遮る要素が多すぎる。シルフィなんて、瞬殺確定……!」

 勝利宣言をした、その瞬間。

──パァン!

 鋭い炸裂音とともに、シュナの頭上、ほんの数センチ真横のコンクリート壁に、ショットガン弾が深々とめり込んだ。

「!?ちょっ……どこ……!?まだ位置がバレてないはずじゃ……!」

 シュナは慌ててマークスマンライフルを構える。

 シュナの手に収まるのは、最新鋭——
SIG MCX-SPEAR。
 6.8mmのハイブリッド弾を使うその銃は、彼女が引き金を絞るたび、
まるで空気を切り裂くように静かに、確実に敵を撃ち落とす。

 高層ビルの屋上に吹き抜ける風が、一瞬だけ凍り付いたように感じられた。
 追跡者の声が無機質に響く。

「シュナ。あなたの呼吸音……反響してる」

「!?」

「それと、さっきのスコープ調整。金属が擦れる微細な音、聞こえた」

 シュナの心臓が激しく跳ねる。ここは自分の得意な高低差のある隠蔽エリアだ。

「そ、そんな一瞬の音だけで……!?」

「ええ。『位置座標、ほぼ確定』」

 シュナの背筋に、冷たい氷の針が突き刺さるような感覚が走る。
 シルフィ……解析能力、えげつなすぎでしょ……!ここ……わたしの得意ステージなのに……!?
 スナイパーの優位性を保つための「隠蔽」が、開幕5秒で完全に無効化された。

 シュナが思考を回転させた、その刹那。

──カチリ。

 今度は至近距離、真後ろで、決定的な作動音が響いた。

 後ろ!?

 勢いよく振り返る。
 そこにいたのは、予想だにしない場所に立っていた、無表情のシルフィ。
 彼女は、ショットガンを胸の高さというゼロ距離射撃の構えで、静かに突きつけていた。

「……どうして……!?」

 シュナは恐怖と驚愕で声を失う。
 シルフィは淡々と、まるで計算結果を読み上げるように説明した。

「シュナ。あなたの弾道は正確すぎる」

「えっ……?」

「だから逆に──どの角度から撃つか計算できる」

「!!」

 シルフィは視線を動かすことなく続ける。彼女の瞳は獲物を前にした捕食者のように鋭い。

「あなたの精度。あなたの癖。あなたの射線癖。全部データ化済み」

「そんなのズルい!!わたしまだ発射してないのに──」

「十分。あなたの射撃データは、過去のログから予測できる」

 シュナは理解できなかった。
「過去?」
「あなたはいつも同じ角度で覗き込んでる。正確に全く同じ角度。それはあなたがとっとも得意とする角度」

 シュナの顔が、羞恥と怒りで真っ赤に染まる。
「やめてぇぇぇぇ!!!恥ずかしい!!」

「じゃあ、終わらせるね」

 ショットガンが、静かに、しかし冷酷に光を放った。

「……が……っ……うわぁぁぁぁ……今日……こんなんばっか……!!」

 地面に倒れたシュナは、涙目のまま悔しさに拳を握りしめて叫んだ。

「絶対あとでユウマに抱きしめてもらうんだからぁぁぁぁ!!」

──ズドォン!!

 屋上に凄まじい爆風が轟いた。至近距離から放たれた衝撃波が、マークスマンライフル構えるシュナの身体を貫く。
 白い煙が屋上全体に充満し、シュナは背中から吹き飛ばされ、屋上の縁にガリガリと音を立てて転がった。
 画面の上に、淡く、しかし無慈悲な赤い文字が浮かび上がる。

 《 PLAYER DOWN — シュナ 》

 廃ビルの縁。シルフィは、倒れたライバルを一瞥し、静かに立ち尽くす。

「……シュナ。あなたは強い。でも市街地の情報戦では、わたしが上」

 冷たい風が吹き抜ける。
「次は……フィーンかユーノスね。ユーノスなら私が有利」

 シルフィの瞳が、さらに一段階、鋭利な光を宿した。
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