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ユウマvsナターシャvsシュナ
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ミニマップの光が晴れた瞬間、乾いた風が吹き抜けた。
砂と石の峡谷。
その断崖に沿って一本だけ鉄道が走る。
マップを南北に縦断する鉄道。
線路の先には巨大な鉄橋がかかり、谷は百メートルの深さ。
“キャニオントレイル”
鳥一羽の影さえ、緊張で固まるような空気の中──
「ユウマ様……」
背後から、澄んだ声。
振り返る。
ナターシャがいた。
白い髪。
無表情に近いのに、どこか切ない光を宿した瞳。
「……もし、もしも……わたしが優勝したら……
わたしを、あなたの……隷属枠に……」
その言葉とともに、
ナターシャの手の中で小型爆薬が“コトリ”と揺れた。
「ちょッ……ナターシャ!?
いまはバトルロワイヤルだぞ!」
「……だからこそ、です。
勝った者こそ……相応しいのです」
と、その瞬間──
風が裂けた。
——シュンッ!!
来た!!
ユウマは反射で地面に転がる。
鉄道の砂利が跳ね上がり、
ほんの一瞬前までユウマの頭があった場所に──
——シュンッ!!
シュナのスナイパー弾が突き刺さる。
シュナの手にあるのは7.62mm対人狙撃銃G28E2。
照準器やサプレッサーなど含め約8kgと非常に重い。
怪力のシュナには問題なかった。
何より後継度と連射性が高い。
「ユウマァァァァァァァァァァァァ!!!!
ナターシャに隷属なんてさせないから!!
先に落とす!!!」
峡谷の上。
崖の縁に立つシュナが、真っ赤な顔で叫んでいた。
——シュンッ!!
10秒に一発。狙いすまれた弾丸が飛んでくる。
「ユウマもナターシャもまとめて倒すの!!
ユウマの一位はわたしのものなの!!!」
——シュンッ!!
(なんでそうなるんだよ!?)
⸻三つ巴、開始!!
「ユウマ様……
シュナさんは……愛が重すぎます……」
「ナターシャも十分重いからな!?早く居場所を晒せ!!隠れてばかりなんて、卑怯よ!」
——シュンッ!!
「あなたのために……致死量の爆薬を調合しました」
「致死量って言った!? 今言ったよな!?」
……ヤバい。
開幕で二人から狙われるなんて、最悪だ。
シュナの弾丸が水平線から連続で飛ぶ。
——シュンッ!!
——シュンッ!!
——シュンッ!!
気配を察して、ユウマは近接加速を断続的にかける。
ユウマは線路に沿って走り続けながら叫ぶ。
「シュナ! 狙う場所、毎回頭だぞ!!?」
近接加速!
「だって一番効率がいいからぁぁぁぁ!!」
近接加速!
「可愛い声で殺意高いのやめてぇぇぇ!!」
そこへ、横から爆弾が飛んでくる。
ナターシャだ。
ユウマの真横に現れ、発光する。
近接加速!
「ユウマ様……爆弾は私の愛です」
ズダダダダーーン!!!
「死ぬ!!ヤバい!」
「……ユウマ様の得意な近接加速とは、相性が悪いですねと判断しました」
その瞬間。
シュナの弾、ナターシャの爆風、峡谷の風。
全方向から殺意が押し寄せる。
……無理! 無理! 無理!!!
ここで戦ってたら死ぬ!
⸻そのとき、遠くから汽笛が鳴った。
ボォォォォォォ!!
列車だ!!
ユウマは判断した。
そのまま鉄橋へ、全力で走り出す。
近接加速!
ユウマは鉄道に飛び乗った。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁ!!」
——シュンッ!!
シュナの狙撃。
カンカンと鉄道に跳弾する。
「ユウマ様……そっちは……危ないですよ……」
ダダダーン!!!
ナターシャの爆弾の音。
「お前が一番危ないよ!!」
列車が鉄橋へ差し掛かる。
風を裂き、飛び上がった。
――行ける!
が。
「ユウマ様、そこに……」
ナターシャの声。
「爆薬、設置しました」
次の瞬間。
鉄橋が赤く光る。
「おい待て待て待て待て待て!?
鉄橋ごと爆破はやりすぎだろ!!?」
「……これが私の愛……」
「狂ってる!!!」
——ドオオォォォォォォン!!!
鉄橋の一部が崩れ、列車が揺れる。
ユウマは鉄橋の破片に足を取られ──
……あ、やばい。
空が反転する。
峡谷が、口を開ける。
列車の光が遠ざかる。
「ユウマァァァァァァァァァァ!!!!!」
シュナの絶叫。
——シュンッ!!
そして、弾丸。
——シュンッ!!
シュンッシュンッシュンッ!!
「ユウマ様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
ナターシャの叫び。
そして、爆弾の雨。
世界が引き伸ばされ、
地獄が降ってくる。
そして。
ユウマは──
峡谷の闇へ、まっさかさまに墜落した。
砂と石の峡谷。
その断崖に沿って一本だけ鉄道が走る。
マップを南北に縦断する鉄道。
線路の先には巨大な鉄橋がかかり、谷は百メートルの深さ。
“キャニオントレイル”
鳥一羽の影さえ、緊張で固まるような空気の中──
「ユウマ様……」
背後から、澄んだ声。
振り返る。
ナターシャがいた。
白い髪。
無表情に近いのに、どこか切ない光を宿した瞳。
「……もし、もしも……わたしが優勝したら……
わたしを、あなたの……隷属枠に……」
その言葉とともに、
ナターシャの手の中で小型爆薬が“コトリ”と揺れた。
「ちょッ……ナターシャ!?
いまはバトルロワイヤルだぞ!」
「……だからこそ、です。
勝った者こそ……相応しいのです」
と、その瞬間──
風が裂けた。
——シュンッ!!
来た!!
ユウマは反射で地面に転がる。
鉄道の砂利が跳ね上がり、
ほんの一瞬前までユウマの頭があった場所に──
——シュンッ!!
シュナのスナイパー弾が突き刺さる。
シュナの手にあるのは7.62mm対人狙撃銃G28E2。
照準器やサプレッサーなど含め約8kgと非常に重い。
怪力のシュナには問題なかった。
何より後継度と連射性が高い。
「ユウマァァァァァァァァァァァァ!!!!
ナターシャに隷属なんてさせないから!!
先に落とす!!!」
峡谷の上。
崖の縁に立つシュナが、真っ赤な顔で叫んでいた。
——シュンッ!!
10秒に一発。狙いすまれた弾丸が飛んでくる。
「ユウマもナターシャもまとめて倒すの!!
ユウマの一位はわたしのものなの!!!」
——シュンッ!!
(なんでそうなるんだよ!?)
⸻三つ巴、開始!!
「ユウマ様……
シュナさんは……愛が重すぎます……」
「ナターシャも十分重いからな!?早く居場所を晒せ!!隠れてばかりなんて、卑怯よ!」
——シュンッ!!
「あなたのために……致死量の爆薬を調合しました」
「致死量って言った!? 今言ったよな!?」
……ヤバい。
開幕で二人から狙われるなんて、最悪だ。
シュナの弾丸が水平線から連続で飛ぶ。
——シュンッ!!
——シュンッ!!
——シュンッ!!
気配を察して、ユウマは近接加速を断続的にかける。
ユウマは線路に沿って走り続けながら叫ぶ。
「シュナ! 狙う場所、毎回頭だぞ!!?」
近接加速!
「だって一番効率がいいからぁぁぁぁ!!」
近接加速!
「可愛い声で殺意高いのやめてぇぇぇ!!」
そこへ、横から爆弾が飛んでくる。
ナターシャだ。
ユウマの真横に現れ、発光する。
近接加速!
「ユウマ様……爆弾は私の愛です」
ズダダダダーーン!!!
「死ぬ!!ヤバい!」
「……ユウマ様の得意な近接加速とは、相性が悪いですねと判断しました」
その瞬間。
シュナの弾、ナターシャの爆風、峡谷の風。
全方向から殺意が押し寄せる。
……無理! 無理! 無理!!!
ここで戦ってたら死ぬ!
⸻そのとき、遠くから汽笛が鳴った。
ボォォォォォォ!!
列車だ!!
ユウマは判断した。
そのまま鉄橋へ、全力で走り出す。
近接加速!
ユウマは鉄道に飛び乗った。
「逃がすかぁぁぁぁぁぁ!!」
——シュンッ!!
シュナの狙撃。
カンカンと鉄道に跳弾する。
「ユウマ様……そっちは……危ないですよ……」
ダダダーン!!!
ナターシャの爆弾の音。
「お前が一番危ないよ!!」
列車が鉄橋へ差し掛かる。
風を裂き、飛び上がった。
――行ける!
が。
「ユウマ様、そこに……」
ナターシャの声。
「爆薬、設置しました」
次の瞬間。
鉄橋が赤く光る。
「おい待て待て待て待て待て!?
鉄橋ごと爆破はやりすぎだろ!!?」
「……これが私の愛……」
「狂ってる!!!」
——ドオオォォォォォォン!!!
鉄橋の一部が崩れ、列車が揺れる。
ユウマは鉄橋の破片に足を取られ──
……あ、やばい。
空が反転する。
峡谷が、口を開ける。
列車の光が遠ざかる。
「ユウマァァァァァァァァァァ!!!!!」
シュナの絶叫。
——シュンッ!!
そして、弾丸。
——シュンッ!!
シュンッシュンッシュンッ!!
「ユウマ様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
ナターシャの叫び。
そして、爆弾の雨。
世界が引き伸ばされ、
地獄が降ってくる。
そして。
ユウマは──
峡谷の闇へ、まっさかさまに墜落した。
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