キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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フィーンvsナターシャ

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 崩れかけた家屋が二十棟、ひび割れた舗装路、放置された井戸。古い街灯が風に揺れ、不気味なきしむ音をあげる。ここは『ハンキーパンキータウン』。
 影が長く伸び、風が砂埃を運ぶ中、どこかで扉が不意に揺れる音がした。

「フィーン様。お待ちしていました」

 その声は、廃屋のどこかから、優しく、静かに響いた。ナターシャだ。
 いつもの柔らかい声だが、その奥には、尋常ではない緊張感と、勝負への甘美な執着が混ざっている。

「……ナターシャ?あんた……なにか企んでるわね」

 フィーンの表情が険しくなる。二丁のサブマシンガン《マグナ=ヘリクス》を握る手に力が入った。

「はい。シルフィ様の協力で……私はトラップボマーとして最適化されました」

「ッ……!あたしを相手に大した自信ね」

 フィーンの眉が跳ね上がった。非戦闘AIだったはずのナターシャが、今、爆薬と罠専門の『狩人』へと恐るべき進化を遂げている。
 
 町全体が、巨大な罠になってるのかもしれない。
 ナターシャは見た目も声も優しいが、その実、狂った怪物の気配がある。
 フィーンは《マグナ=ヘリクス》を握りしめ、足音を完全に殺して建物の影に滑り込む。
 その瞬間──

——カチッ。

 微細な、しかし決定的なトリガー音がした。
 フィーンは即座に、信じられないほどの反射速度で跳躍する。
 次の瞬間、彼女の足元が爆ぜた。

──ドガァァァン!!!

「うおっ!?あっぶない!!」

「……第一の進路予測、成功です」

 ナターシャの声が、どこか高い屋根の上から、感情を抑えたトーンで聞こえる。
 フィーンは瓦礫に隠れながら耳を澄ます。足音がしない。
 動かないタイプか。機動力ではSSランクのフィーンに敵わないと知っての巧妙な罠張り。

「悪くない作戦だ……」

 視界の端で、家屋の窓がひらりと揺れた。

 ……!ワイヤートラップだ。

 壊れたカーテンの裏、壁の亀裂、扉の蝶番。すべてが均等間隔で、不自然に仕掛けられている。

「フィーン様。今日は……わたし、本気です。ここはあなたの墓場です」

 ナターシャの位置は特定できない。どこからでも声が響く。

「ナターシャ、あんた……出てきなさいよ!」

「いやです。戦闘では敵わないので……索敵発光は使わないのですか?」

「そんなの使う必要ないねっ!」

 風が吹き、扉が開く。瓦が落ちる。
 しかし、ナターシャの気配だけが、この町から完全に消滅している。

「……見つけ出してやる!」

 フィーンはニヤッと笑い、一気に勝負に出た。
 全速力で正面の家屋の一つへ飛び込む。扉を蹴破り、二丁SMGが火を噴いた。

「そこだッ!!」

「フィーン様──あなたの位置はバレバレです」

「……上かッ!」

フィーンが即座に屋根へ向けて掃射する。

──その瞬間。

カチッ。

……嫌な音!!

床の板が不自然に跳ね上がった。

「っ、罠──!?」

 大量の光源アイコンが床下から立ち上る。無数の爆薬のシンボル。
 ナターシャの静かな囁きが、家屋全体に響き渡った。

「“第二予測地点”……ヒットです」

──ドゴォォオオオオオオン!!!

家屋そのものが爆ぜた。瓦礫が吹き飛び、灼熱の炎が舞う。フィーンはギリギリの反射で壁を破り、外へ飛び出した。

「くっそっ!!ナターシャ……あんた、やりすぎだろ!!」

「……フィーン様に……勝つために……まだまだ、足りないくらいです」

 煙の中、フィーンは銃を構え、警戒を強める。

 ……どこだ……どこに隠れて……

 視界の端。微かに、小さな足跡。ナターシャが歩いた跡……いや、これも誘導のための罠か……!?

 フィーンは思考を捨て、影に飛び込み、一気に屋根へ高速跳躍。
いた。
 瓦屋根の上。両手に小型爆薬を抱えたナターシャ、本体。
「……見つかったんですね」
「当たり前だッ!!」
 フィーンが引き金に指をかける──!!
 その瞬間。
 フィーンの足元で──家屋の屋根が折りたたまれるように、崩れた。

「ッ……落とし穴──!?」

 家屋から安全な距離まで脱出したナターシャが、静かに、そして勝利を確信した声で呟いた。

「第三予測──成功。」

 次の瞬間、廃屋は丸ごと爆裂した。

──ドゴォォオオオオオオン!!!
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