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ユウマvsシルフィ
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ユウマ。
そして、その相棒であるシルフィ。
二人が立っていたのは、巨大な鏡張りのドーム──
《メビウス・ホール》。
床も、壁も、天井さえも鏡でできている。
無数に分裂した影が、二人の姿を重ね合わせ、
境界線を溶かしてゆく。
HUD上に通話の接続が点灯した。
「……ユウマ」
静かにシルフィの声が響く。
「あなたと戦うのだけは……できれば避けたかった」
「俺もだよ。
でも、ここまで来たら逃げ道なんてない」
「ええ……」
少しだけ息を吸う音がして、
その後の声は、刃のように澄んでいた。
「あなたが相手なら──
本気で“落としにいける”。」
シルフィがショットガンを構える。
光を反射した双眸が揺らめき、
その姿は、いつもの相棒ではなかった。
そこにあったのは“殺意”──
純粋で透明な、逃げ場のない意志。
鏡という鏡が光を乱反射させ、空気が震える。
ユウマは深く呼吸を整え、拳を握った。
……シルフィは、速くて強い。
遠距離では絶対に勝てない。
なら──近接で決めるしかない。
近接加速で、飛び込む!
光が一閃し、シルフィが叫ぶ。
「行くわよ……ユウマ!!」
――ドンッ!
轟音とともに、ショットガンが火を噴いた。
鏡の壁面に無数の火花が散り、
反射した弾道が迷路のように跳ね返る。
だが、ユウマは──
「読める……!!」
左へ跳んだ。
跳躍角度は完璧。
鏡の反射から「本物の射線」だけを読み切っていた。
「その嘘、本当……!?
反射弾を避けきるなんて……!」
「シルフィの弾のクセは全部知ってるからな!」
シルフィは後退しながら撃ち続ける。
「せめて……ショットガンの距離で削らせて……!」
「悪いけど、それは許さねぇ!」
ユウマは床を蹴った。
鏡面の滑りを利用して加速、
滑り台のように角度を変えて
斜め上から降りてゆく変則軌道。
シルフィの喉が小さく震えた。
……ユウマ……この角度……弾が乗らない……!
一発。
シルフィの渾身の射撃が走る。
「当たって……!」
――シュッ。
弾がユウマの頬をかすめた。
ぶっ……危ねぇ……!!
あと数センチで即死だぞ……!
シルフィの声が震えている。
「ユウマ……
本気で来ないと……わたし、勝っちゃうわよ……!」
勝ちたくない。
でも、勝てる自信がある。
その矛盾が、二人の絆を軋ませる。
「……だったら本気で倒しに来いよ。
シルフィ!」
「……うん。
あなたに負けたいって思っても──
戦う以上、わたしは“勝つために”撃つ!」
シルフィはショットガンを逆手に持ち替え、突撃した。
鏡が砕け、反射像が乱れる。
ユウマの視界に火花が散り、
ショットガンの銃口が、胸元へ一直線に迫る。
「終わりよッ!!」
――カチッ。
引き金にかけた指が、
ほんの一瞬だけ、震えた。
その迷いは、あまりに大きかった。
「……もらうよ、シルフィ」
ユウマは近接加速を最大解放。
空気が爆ぜ、鏡が割れ、
世界がスローモーションになる。
近接加速──最大。
ユウマは光の線となって駆け、
シルフィの視界からすり抜けた。
どこ……?
ユウマ……
どこに……?
……後ろ──!
「遅いよ、シルフィ」
ユウマの拳が、ショットガンの銃身をはじいた。
銃口が上方へ逸れる。
「っ……!」
ユウマはシルフィの背に手を添え、
そっと引き寄せ──
軽く、押し倒した。
床に膝をついたシルフィが、
ほんの少しだけ笑った。
「……やっぱり……
あなたには……勝てないわね……」
「ごめん、シルフィ……」
「謝らないで……
あなたに倒されるのが……一番、嬉しい……
……ナターシャに負けないで」
それは敗北ではなく、
信頼と誇りの証だった。
「勝つさ」
《PLAYER DOWN — シルフィ》
白い光が舞い、彼女の姿が消える。
最強のパートナー同士にしか成立しない、
美しく、静かな一騎打ちの結末だった。
そして、その相棒であるシルフィ。
二人が立っていたのは、巨大な鏡張りのドーム──
《メビウス・ホール》。
床も、壁も、天井さえも鏡でできている。
無数に分裂した影が、二人の姿を重ね合わせ、
境界線を溶かしてゆく。
HUD上に通話の接続が点灯した。
「……ユウマ」
静かにシルフィの声が響く。
「あなたと戦うのだけは……できれば避けたかった」
「俺もだよ。
でも、ここまで来たら逃げ道なんてない」
「ええ……」
少しだけ息を吸う音がして、
その後の声は、刃のように澄んでいた。
「あなたが相手なら──
本気で“落としにいける”。」
シルフィがショットガンを構える。
光を反射した双眸が揺らめき、
その姿は、いつもの相棒ではなかった。
そこにあったのは“殺意”──
純粋で透明な、逃げ場のない意志。
鏡という鏡が光を乱反射させ、空気が震える。
ユウマは深く呼吸を整え、拳を握った。
……シルフィは、速くて強い。
遠距離では絶対に勝てない。
なら──近接で決めるしかない。
近接加速で、飛び込む!
光が一閃し、シルフィが叫ぶ。
「行くわよ……ユウマ!!」
――ドンッ!
轟音とともに、ショットガンが火を噴いた。
鏡の壁面に無数の火花が散り、
反射した弾道が迷路のように跳ね返る。
だが、ユウマは──
「読める……!!」
左へ跳んだ。
跳躍角度は完璧。
鏡の反射から「本物の射線」だけを読み切っていた。
「その嘘、本当……!?
反射弾を避けきるなんて……!」
「シルフィの弾のクセは全部知ってるからな!」
シルフィは後退しながら撃ち続ける。
「せめて……ショットガンの距離で削らせて……!」
「悪いけど、それは許さねぇ!」
ユウマは床を蹴った。
鏡面の滑りを利用して加速、
滑り台のように角度を変えて
斜め上から降りてゆく変則軌道。
シルフィの喉が小さく震えた。
……ユウマ……この角度……弾が乗らない……!
一発。
シルフィの渾身の射撃が走る。
「当たって……!」
――シュッ。
弾がユウマの頬をかすめた。
ぶっ……危ねぇ……!!
あと数センチで即死だぞ……!
シルフィの声が震えている。
「ユウマ……
本気で来ないと……わたし、勝っちゃうわよ……!」
勝ちたくない。
でも、勝てる自信がある。
その矛盾が、二人の絆を軋ませる。
「……だったら本気で倒しに来いよ。
シルフィ!」
「……うん。
あなたに負けたいって思っても──
戦う以上、わたしは“勝つために”撃つ!」
シルフィはショットガンを逆手に持ち替え、突撃した。
鏡が砕け、反射像が乱れる。
ユウマの視界に火花が散り、
ショットガンの銃口が、胸元へ一直線に迫る。
「終わりよッ!!」
――カチッ。
引き金にかけた指が、
ほんの一瞬だけ、震えた。
その迷いは、あまりに大きかった。
「……もらうよ、シルフィ」
ユウマは近接加速を最大解放。
空気が爆ぜ、鏡が割れ、
世界がスローモーションになる。
近接加速──最大。
ユウマは光の線となって駆け、
シルフィの視界からすり抜けた。
どこ……?
ユウマ……
どこに……?
……後ろ──!
「遅いよ、シルフィ」
ユウマの拳が、ショットガンの銃身をはじいた。
銃口が上方へ逸れる。
「っ……!」
ユウマはシルフィの背に手を添え、
そっと引き寄せ──
軽く、押し倒した。
床に膝をついたシルフィが、
ほんの少しだけ笑った。
「……やっぱり……
あなたには……勝てないわね……」
「ごめん、シルフィ……」
「謝らないで……
あなたに倒されるのが……一番、嬉しい……
……ナターシャに負けないで」
それは敗北ではなく、
信頼と誇りの証だった。
「勝つさ」
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