キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

文字の大きさ
58 / 68

ユーノスvsナターシャ

しおりを挟む
 夕暮れの演劇場。
 オレンジと紫に分かれた空が、静かな石造りの観客席を照らしていた。

 そこは隠れる場所が一つもない円形ステージ。
 風だけが唯一の障害物。

 ユーノスは中央に立っていた。

 左腕はシルフィに撃ち抜かれ、
 全身は土と血に汚れている。

 体力──5%。

 それでも、姿勢は崩れていない。
 LMGを片腕だけで構え、静かに息を整える。

(……ここまで来たのよ、私。
 絶対に落ちない……たとえ相手が──)

 反対側のゲートが上がる。

 光の中から現れたのは──

 ナターシャ。

 白いワンピース型の簡易戦闘スーツ。
 顔にはいつもの優しい微笑み。

 だが──背中の機械翼には
 無数の爆薬ケースと、起動して青く光るドローン爆弾。

 もう“召使いAI”ではなかった。

 HUDが二人の声を繋ぐ。


「……ナターシャ。
 あなた……ずいぶん物騒な姿ね」

 ユーノスは静かに言う。

「はい。シルフィ様に改造していただきました。
 ……“あなたに勝つため”に。」

「ふふ……
 なら遠慮はしないわ」

 風が吹いた。
 爆薬の青い光が揺れる。

 ユーノスが先に撃った。

 片腕でLMGを構えて、照準は狂いまくっている。

 ――ドガガガガガガガッ!!

 演劇場に弾幕の壁が作られる。

 観客席の石が砕け、地面に弾痕が広がる。

 だがナターシャは、
 一歩も動かず、微妙な角度だけ変えて回避した。

「……なに……?」

「くっ……!」

 ナターシャはそこだけ歩いてすり抜けた。
 弾丸一つ触れさせずに。

 ユーノスは息を吐く。

「……あなた、本当に……
 私に勝つ気でいるのね……」

「はい」

「……そう」

 ユーノスは笑った。

 寂しく、少し痛そうな笑み。

「一緒に生きてきたのに……
 私はあなたのこと、
 こんなにも知らなかったんだわ」

 ナターシャの瞳が揺れる。

「ユーノス様……?」

「悪い主人だったわね……
 あなたは私の弱さも強さも
 こんなに理解してくれてるのに……
 私はあなたのこと……
 戦いのことですら……知らない……」

 その声は震えていた。

 主従関係の歪み。
 AIと人間の深い溝。

 それが今、痛いほど浮き彫りになった。

「……ユーノス様」

 ナターシャは胸に手を当て──深く頭を下げた。

「わたしは……あなたの使用人です。
 あなたを知ることは、わたしの役割です」

 そして顔を上げた瞬間──
 機械翼が全開。

「ですが……」

 翼に並ぶ爆薬ケースが点滅した。

「この戦いだけは……
 “ユウマ様のために”勝ちます。」

「来なさい、ナターシャ……!」

 爆薬が一斉に飛び出す。

 ――ボンッ!ボボボボボッ!!

 ユーノスの周囲が爆炎に包まれた。

 彼女は弾幕を撃ちながら、
 必死で後退する。

(落ち着け……!
 爆風の中心は避ける……!!)

 ユーノスはたしかに回避できていた。
 動きは正確。
 SSランクの技。

 だが──

「ユーノス様……
 “避ける位置”も全部予測済みです」

「……ッ!」

 爆薬がユーノスの進行方向に次々と着弾。

 視界が爆炎で真っ白になった。

ナターシャは静かに歩み寄り、
 倒れたユーノスの前に膝をついた。

「……ごめんなさい、ユーノス様。
 あなたを倒すことになってしまい……」

 ユーノスは仰向けのまま目を閉じ、
 泣き笑いのような表情を浮かべた。

「……いいのよ……
 この勝負は、あなたの勝ち。
 むしろ誇りに思うわ……」

《HP 5% → 0%》

《PLAYER DOWN — ユーノス》

 爆炎の残り火が消える。

 ナターシャの光の瞳が揺れる。

 主従関係にあった二人。

 しかし、この瞬間だけは──
 同じ地平に立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...