65 / 68
索敵発光
しおりを挟む
薄闇の台地に、風が遠吠えのように吹き抜ける。
ユウマは、ひとり岩壁に背を預け、荒い息を吐き出した。
敵の位置は三方向。足音が、砂を踏むわずかな震えが、この静寂の中でやけに鮮明だ。
……想定外にも程があるだろ、これは。
どうして、こうなった?
喉が乾く。
握ったM4のグリップが汗で滑りそうになる。
ほんの数分前――すべては順調だった。
そう。ほんの数分前までは。
ユウマは回想した。
台地に罠を仕掛けて、
風上で爆薬を爆破して人工砂嵐を起こし、
視界をゼロにして敵三人をバラバラに誘導する。
その戦略は、ナターシャが誇るべき“完璧な戦場設計”だった。
フィーン・ユーノス・シルフィの三人を「台地に誘い込む」という大前提まで、すべて想定通りに進んでいた。
いや、想定以上だったな。あそこでフィーンたちが本気で混乱した時、俺は勝ちを確信したんだ。
だが。
本当に地獄だったのは――
そこから先だった。
砂嵐の中。
突然、視界の全てが“光った”。
ピコン、と電子音。
そして──
《索敵発光、展開》
渓谷全域に、青白い光が走った。
そうだ。これだ。
索敵発光が全ての戦略を破壊した。
「…………は?」
敵の位置が光る。
これは分かる。
問題は――
爆薬まで全部光ることだ。
岩陰。足元。風下。
すべての罠が、青い光でくっきり浮かび上がっていた。
《……ユウマ様……申し訳ありません……
索敵発光は……爆薬も……対象です……》
「フィーンがスキルを使った!!?」
ユウマは叫ばずにはいられなかった。
これまで一度もスキルを使わなかったフィーンにスキルを使わせた。
それは確かに戦果だった。
しかし、その結果――
フィーンたちは砂嵐の中でも完璧に罠を回避。
一度も爆破トラップに触れることなく、
シュナの元へ一直線で到達した。
台地にフィーンたちが来てから、ものの数分の出来事だった。
まずユーノスが風を切る音で場所を察知し、
次にシルフィが爆薬ルートを逆算して最適ルートを確定し、
そして最後に――
「あたしに本気を出させるなんて、なかなかいい戦略だったよ、ナターシャ」
砂煙から現れたフィーンが、
ナターシャの喉元に銃を突きつけていた。ナターシャは、そのままダウン。
その5秒後。
シュナもダウン。
二人とも、想定よりずっと早く落とされた。
──そして今。
高台の岩石エリアの中心に一人。
ユウマは、三人に包囲されている。
「……だからなんで、俺が三人まとめて相手にすんだよ……」
味方ながら末恐ろしい戦力だ。
この三人が揃って敵に回ることなど、
普通は「負け確の反則ゲーム」だ。
かと言って、ここで諦めて帰るなんてできないんだよね。
喉の奥で、何かが燃える。
フィーンの声が薄闇を裂いた。
「ユウマ……残りは、お前一人だ」
「さぁ。どうするの?」
ユーノスが妖艶に笑う。
「逃げ道はゼロ。戦うしかないわね」
シルフィが銃を構える。
ユウマは深呼吸した。
ナターシャの戦場は失敗した……
でも、あいつの“意思”はここに残ってる。
爆薬は無力化されてあるが、そこには確かに存在している。
風は強い。
薄闇は視界を奪う。
戦略が崩れたなら、ここからは……俺の力でなんとかするしかない。
ユウマはデフォルトM4を構えた。三点バースト。フルオート機能は付いていない。
「三人まとめて来いよ。
――俺が全部ひっくり返す」
終盤戦が、幕を開ける。
ユウマは、ひとり岩壁に背を預け、荒い息を吐き出した。
敵の位置は三方向。足音が、砂を踏むわずかな震えが、この静寂の中でやけに鮮明だ。
……想定外にも程があるだろ、これは。
どうして、こうなった?
喉が乾く。
握ったM4のグリップが汗で滑りそうになる。
ほんの数分前――すべては順調だった。
そう。ほんの数分前までは。
ユウマは回想した。
台地に罠を仕掛けて、
風上で爆薬を爆破して人工砂嵐を起こし、
視界をゼロにして敵三人をバラバラに誘導する。
その戦略は、ナターシャが誇るべき“完璧な戦場設計”だった。
フィーン・ユーノス・シルフィの三人を「台地に誘い込む」という大前提まで、すべて想定通りに進んでいた。
いや、想定以上だったな。あそこでフィーンたちが本気で混乱した時、俺は勝ちを確信したんだ。
だが。
本当に地獄だったのは――
そこから先だった。
砂嵐の中。
突然、視界の全てが“光った”。
ピコン、と電子音。
そして──
《索敵発光、展開》
渓谷全域に、青白い光が走った。
そうだ。これだ。
索敵発光が全ての戦略を破壊した。
「…………は?」
敵の位置が光る。
これは分かる。
問題は――
爆薬まで全部光ることだ。
岩陰。足元。風下。
すべての罠が、青い光でくっきり浮かび上がっていた。
《……ユウマ様……申し訳ありません……
索敵発光は……爆薬も……対象です……》
「フィーンがスキルを使った!!?」
ユウマは叫ばずにはいられなかった。
これまで一度もスキルを使わなかったフィーンにスキルを使わせた。
それは確かに戦果だった。
しかし、その結果――
フィーンたちは砂嵐の中でも完璧に罠を回避。
一度も爆破トラップに触れることなく、
シュナの元へ一直線で到達した。
台地にフィーンたちが来てから、ものの数分の出来事だった。
まずユーノスが風を切る音で場所を察知し、
次にシルフィが爆薬ルートを逆算して最適ルートを確定し、
そして最後に――
「あたしに本気を出させるなんて、なかなかいい戦略だったよ、ナターシャ」
砂煙から現れたフィーンが、
ナターシャの喉元に銃を突きつけていた。ナターシャは、そのままダウン。
その5秒後。
シュナもダウン。
二人とも、想定よりずっと早く落とされた。
──そして今。
高台の岩石エリアの中心に一人。
ユウマは、三人に包囲されている。
「……だからなんで、俺が三人まとめて相手にすんだよ……」
味方ながら末恐ろしい戦力だ。
この三人が揃って敵に回ることなど、
普通は「負け確の反則ゲーム」だ。
かと言って、ここで諦めて帰るなんてできないんだよね。
喉の奥で、何かが燃える。
フィーンの声が薄闇を裂いた。
「ユウマ……残りは、お前一人だ」
「さぁ。どうするの?」
ユーノスが妖艶に笑う。
「逃げ道はゼロ。戦うしかないわね」
シルフィが銃を構える。
ユウマは深呼吸した。
ナターシャの戦場は失敗した……
でも、あいつの“意思”はここに残ってる。
爆薬は無力化されてあるが、そこには確かに存在している。
風は強い。
薄闇は視界を奪う。
戦略が崩れたなら、ここからは……俺の力でなんとかするしかない。
ユウマはデフォルトM4を構えた。三点バースト。フルオート機能は付いていない。
「三人まとめて来いよ。
――俺が全部ひっくり返す」
終盤戦が、幕を開ける。
0
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる