キスで隷属化するFPSの異世界転生化〜生身がほしいAI美女からモテまくる!?〜

山本いちじく

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ミッション:173 3vs3トレーニングマッチ

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 夜の作戦室は、潮の香りと、海風に煽られた木壁の軋む音で満ちていた。テーブル中央のホログラム台だけが、青白い光を放ち、周囲の闇を寄せ付けない。

 シルフィの提案で、チーム戦のトレーニングをここ数日繰り返していた。

 明日は、ユウマ、シュナ、ナターシャの3人チームで、残りの3人に立ち向かう。

 ユウマ、シュナ、そしてAIたるナターシャの三人が、円卓を囲んで立つ。彼らの顔は、ホログラムの冷たい光を反射して、決意と緊張がない交ぜになった表情を見せていた。
 対する敵は、SSランクのチーム内上位ランカーの三人――フィーン、ユーノス、シルフィ。その戦力差は、もはや戦術でどうにかなるレベルではない。
 ユウマは腕を組み、静かに待つ。シュナはライフルを握りしめた。劣勢。誰もがそう理解していた。
 その重い沈黙を破ったのは、ナターシャだった。

「……作戦を提案します」

 ナターシャの声は淡々としている。しかし、その中には、勝利への確信と、仲間を守るという強い意思が宿っていた。

 ホログラムに、作戦地点である「風鳴りの渓谷」の立体地図が浮かび上がる。谷底から尾根に向かって、白い矢印が連続して流動していた。

「まずはこちらをご覧ください。この渓谷は、特異な地形効果により、一日中、一定方向に強い風が吹いています」

 ナターシャの指先が、風下の地点を照らした。
ユウマが目を細めた。
「……風か。それが、何か関係あるのか?」

「大いにあります。
 爆薬をこの風上のポイントで起爆させると――自然の風を『増幅材』として利用し、渓谷全体を覆う砂嵐(サンドストーム)を人工的に発生させられます。」

「砂嵐を!?」

 シュナが驚き、思わず前のめりになった。

「そんなことが……爆薬一つで?」
「はい。そして、このマップ中央にある、標高の高い台地をご覧ください」

 ナターシャはマップ中央にある台地を青く光らせる。

「この台地は、周囲の岩壁が風を遮るため、砂嵐の影響を最小限に抑えられます」

 ユウマは息を呑んだ。脳裏に、砂嵐を回避するために台地に向かうフィーンたちの姿が浮かんだ。

「つまり――俺たちは『台地』で待ち伏せをするってことか」

 ナターシャは静かに頷いた。

「その通りです、ユウマ様。
 まず砂嵐をこちらのタイミングで開始する。そして、爆弾を仕掛けたエリアに誘導することで、圧倒的有利を作ります」

 ナターシャは、台地中央に旗のマークを立てた。

「この台地は、岩が多く自然の遮蔽物が豊富です。ここに、シュナ様の狙撃拠点を設置します」

「たしかに……ここなら、身を隠しながら戦えるね!」

 シュナが興奮を抑えきれずに言う。

「いえ、ただの『隠れ場』ではありません」ナターシャは地形ラインを複雑に光らせた。

「ここは『いただき』であり、敵の接近ルートが限定されるため――全敵進路をコントロールできる戦略的要衝となります」

 シュナはごくりと唾を飲んだ。

「……最高の場所だわ」
「はい。あなたは『高所』にいるだけで、敵は必ず混乱します。
 この高所のスナイパーを避けて、岩陰を進むしかない。
 そして、その進路こそが、私たちが仕掛けた罠の道です」

 ナターシャは地図の外周に沿って、等間隔に赤い点を散らした。

「私は、台地の外周に沿って『爆薬ライン』を敷設します。これは罠を作るため、だけではありません」

 ユウマは問う。

「それ以外に何に使うんだ?」
 ナターシャは続けた。

「起爆時の爆発と、その後の継続的な砂嵐の音で敵の場所が分かる」

 シュナが目を見開く。

「そして上からはスナイパーが狙う」

「はい。フィーン様たちは、分散して行動することを余儀なくされます」

 ユウマは満足げに腕を組んだ。

「……これならこちらは場所を悟られずに各個撃破を狙える」

「忘れないでください。フィーン様は戦力として突出しています。そこにユーノス様、シルフィ様が加わったチームに、まともに戦えば戦術で勝ち目はありません。
 しかし、戦略は、戦術を凌駕するのです」

 ナターシャは、敵三人の行動予測ルートを三色に分けて表示した。

 シュナは興奮して声を上げた。

「つまり、敵は『自分で選んでるつもり』でも……実は全部、ナターシャの誘導通りなんだね!?」

「……誘導こそ戦略の本質です」

 ナターシャは珍しく、静かに笑みを浮かべた。その表情のない顔が、初めて感情を帯びたように見えた。

「シルフィ様の解析は、砂嵐と地形の複雑さ、そして近接戦闘の誘発で封じます。
 ユーノス様のデコイは、待ち伏せ区でシュナ様の火線が届かない個別撃破ラインに誘導します。
 そして最後に、ユウマ様とフィーン様の直接対決にかける」

「つまり……最後は俺とフィーンの一騎打ちになるわけだ」

「そうです。そこから先は戦術になります。ユウマ様、貴方の領域です」

 ナターシャは最後に台地中央へ光を集中させた。

「最終局面で、敵は視界ゼロ、ルート固定、状況混乱に陥ります。そこで、ユウマ様の――近接加速の出番です」
「わかっている」

 ユウマは拳を握りしめ、魂が震えるのを感じた。

「ナターシャ……お前、すげぇ」

 シュナも感動したように息を吐き出した。

「これ……細いけど、確かに勝利の可能性がある……!でも、想定通りに動いてくれる相手じゃない」

 ナターシャは、自らの胸部に手を当てた。

「最善を尽くしましょう。想定通りにいかないのは、お互い同じです」

「ナターシャ……」

「だから、私は――仲間を勝たせる戦場を創りたいのです」
 その言葉は、プログラムされたものではなく、まぎれもない『意思』だった。
「どれほど劣勢でも……戦略があれば勝てます」

 ユウマはほんの少し声を詰まらせ、そして満面の笑みを浮かべた。

「……よし。ナターシャの戦場で、俺が全部倒す。お前の創った舞台で、最高の加速を見せてやる」

 ユウマがシュナとシルフィを見つめて、力強くうなずく。

「全員が最善を尽くせば、勝機はある」
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