【完結】運があるのか、ないのか…【時々更新かも】

アキノナツ

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ピンチに捕まえた人は…

1.甘い香りに誘われて…(1)

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痴漢表現があります。

===========

やっべ。
無茶苦茶ムラムラする。
俺ってそんなに性欲魔人じゃないんだが、しかもこんな場所で不味いよなぁ。

夕方の満員電車。

香水とデオドラントにコロンに体臭…。つまり人のニオイで充満している。しかもむわぁんと熱気も篭ってる。

『久々に乗ったらこれだよ。あー、あと何駅?』

暫く乗らなかったから、この時間帯が混むのを忘れてた。

朝ならまだここまでニオイが充満しないかもなぁ。草臥れたサラリーマンのおっさんがいっぱいだよ。
ま、俺もおっさんと言えばおっさんなんだけどね。

なんとかこのムラムラを抑えないと良からぬ事をしてしまいそうだよ。
何か気を紛らわそう。
手元のスマホを見るが、広告のアレコレが……ダメだ。ポケットに捩じ込んだ。

ぼーっと窓の外の夕闇に色が変化していく空をぼんやり眺めてると、甘い香りが鼻をくすぐった。

『近いな…』

嫌なニオイの中にいい匂い…。
性欲は食欲にも繋がってるのだろうか。
どっちも『欲』だから、繋がってるかもな…と腹の具合を宥めながら、匂いの発生源を探った。

暇に任せて発生源を探す。
風が僅かに流れてる。こっちからか?
視線を向けると、小柄な茶色い頭が目に飛び込んできた。
『かわいいなぁ』と唐突に思い浮かんだ。

大きめのカーディガンを着てる。髪はショート、マッシュだな。俯いてるから顔はよく分からないが、全体の雰囲気は小動物といった感じか。淡い色で纏まってる服もそう思わせるのかもな。

しかも、トートバッグを胸の前に抱えて、ちょっと震えてるのとかまるでチワワかハムスターじゃないか。
ん? 震えてる?
不意に顔が上がって、小さく周りを見ている。動きがますます小動物。目が離せなくなった。

俺がじっと見てたからだろうか。
こっちを見た時、視線が絡んだ。

濡れた目が怯えてる。
唇が動く。

『!…痴漢か』

手をちょっと伸ばせば容易に届く距離。

揺れを利用しながら近づき、変に密着してるサラリーマン風のおっさんの間に割り込んだ。

「すいません」

ワザとぶつかったのだが小さく謝る。
襟を開けたカラーシャツにジャケット羽織った男がサラリーマンには見えないだろう。
何も文句言わずに会釈で向きを変える。後ろめたさ満載だな。

カーディガンの子をガードする位置で立った。
甘い匂いがした。
発生源はトートバッグの中のようだ。

じっと見てしまった。

「ありがとうございます」

小さい声に視線を上げた。顔じゃなくトートバッグの中を見てたわ。
見上げる顔がちょっと赤くなってる。安心したんだろう。さっきは真っ青だった。
しっかし、全体的に小さいな。
吊り革持ってる俺はまっすぐ立って見下ろしていた。

カーディガンから覗いてる手が小さい。
俺が大きいから余計にだろうが、上から余裕で見下ろせる。
下から見上げるようにこっちを見てる。首が痛いだろう。

「ああ」
こちらも小さく応じた。

返事がなければ不安になるだろうし、下も向けないだろう。

再び甘い香りが気になって、視線を戻していた。

「ケーキです」

視線に気づいたのか、中を確認しながら教えてくれた。

『ケーキか』匂いの正体が分かって、なんとなく落ち着いた。
ムラムラもちょっと落ち着いた。危なかった。さっきのおっさんのような事しそうになるところだったわ。

周りがふわっとした空気になった。
『ああ、電車降りたらケーキ屋かコンビニ行きだな』と思った。それだけ魅力的な香りだった。
この子自体からも甘い香りがする気がする。

俯いた頭を見ていた。柔らかそうな髪だ。
うなじにつむじがある。

電車が止まった。
俯いてた顔がハッと上がり、外を確認して、扉の方へ顔を向けた。
会釈してる。
動く髪から匂いが香った。
甘い香り。

人が流れる。
俺もその流れに乗って降りた。
降りる駅ではなかった。香りに釣られたのかもしれない。

静かに後をつけた。



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