オレたちの夏 【時々番外編を更新】

アキノナツ

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オレたちの季節

7、【SS】薄紅の

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「ハナミズキか…」

数分違いで電車が着くようなので、オレたちはコンビニで落ち合った。

コンビニ袋にビールを入れて、ぷらぷらと一緒に帰る。
住宅街を抜ける時、ピンクの花の木が目について、思わず呟いていた。
ついこの前、桜を見たのに今はその木は緑一色。なので、ピンクの色合いは、桜を連想するが違う花だ。

「ああ、ハナミズキだね」
小さな呟きも掬ってくれるチカ。

もう直ぐゴールデンウィークがやってくる。
今年の新人教育を言い渡された。
もうそんな年齢か…。
仕事を任される事も増えてきた。
ピカピカのリクルートスーツが眩しいぜ。

カラカラと風で回る何かの音……。
思わずキョロキョロしてしまう。
奥の大きな家の庭にポールが立っていた。

先端の矢車が勢いよく回っている。
鯉のぼりは片付けられてるようだ。
夜の空を泳ぐより昼の青い空を泳いだ方が気分が良いよな。

「オレさ。新人任されちゃった」
戯けて言ってみた。不安なんだが、これは言葉にすると負けな気がして飲み込む。

「サブなら大丈夫だ」

ゆったりとチカの声が降ってくる。
チカに『大丈夫』と言われると大丈夫な気がしてくるから不思議だ。
きっとチカはオレの不安な気持ちを汲んでくれてる。

「ありがとう。オレら十年は一緒か?」
指を折ってみる。
横で、チカが感慨深げに話し出した。

「下の階の赤ちゃんがこの前幼稚園の制服着てた。それから、同じ階の男の子、幼稚園だと思ってたら、ランドセル背負っててさ。この前すれ違ったら中学の制服着てた。お母さんと一緒で気づいたよ」

折ってた指が途中で止まった。

「えっ? 一緒に住み出して、6年ぐらい経ってたりする?」

「そうなるな…」

「記念日とかイベントは結構やってるつもりだったけど…」

「何年目とか言うの辞めようって、3年目からカウントしてなかったな」
クククと笑ってる。楽しそう。
そう言えばそんな事言ったかなぁ。酒が回って面倒臭くなっていった気はする。

「そう言えばそうか。年齢から考えれば答えはすぐだけど…。歳食ったなぁって言いたくなくて、辞めたんだったな」
って事にしておこう。

「やっぱり、節目は計算してないとダメかなぁ」
チカが遠い目をしてる。

「ダメじゃないと思うよ。いつも新鮮じゃん。チカとはその時の初めてが過ごしたいから、これで良いんだよ」
トンと身体ごとぶつかっていく。
安定感ある身体はブレない。

「初めて?」
歳を重ねて、初めて?と言いたげな困惑顔で見下ろされた。
どう伝えたら良いんだろう。

「この年の初めて。去年は去年。今年は今年」
『えへん』とチカの腰に腕を回してサムズアップ。

「なんだかなぁ。まぁ、同居は大学卒業と同時だったから、計算はすぐ出来るから困らないか」

「そうそう」

「入社何年目って感じは覚えとけよ?」

「同期に訊けばすぐだ」

「サブぅ…」
呆れ顔。

「ダメ? 教育係頑張るよ? 先輩に色々教えてもらった『お返し』だからな」

「…そう言えば、ハナミズキの花言葉に『返礼』ってのがあったような。アメリカと桜とハナミズキを交換したとかなんかで聞いたような…」

「ハナミズキはアメリカから来たのか~。じゃあ、アメリカの花見はハナミズキ?」

「さぁどうだろう?」

そんな事を話してる内に我が家です。

「「ただいま」」
目を合わせる。
「「おかえり」」
一緒に帰ってきた時はこの儀式。

チカは決まって、クススと笑う。
そんなチカに伸び上がってキス。
チカも慣れたもので、ちょっと屈んでくれる。

チュッとリップ音。

今日も無事帰って来れました。


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