妄想は煙りの中

アキノナツ

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33】用法容量を守って

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「過剰摂取はダメなんです」

「んー」

 自覚なし。可愛く首傾げて唸っててもダメ。

「酷いのになったら病院行きですよ。排泄だって自分じゃままならない、垂れ流しになるっていうよ? 精神状態だって…」

 よく知らんけど、ざっと調べた時に出てきた事を並べて脅した。

 弱くなってる美鈴みすずさんには覿面だったようだ。
 怯えた目でオレを見てる。声も無く唇が震えてる。『マジで?』って声が聞こえそうだ。

 クーーーーーッ! 可愛いぃぃぃッ!

「美鈴さんは運が良かったね」

 うん。多分運が良かったんだ。

 残業続きでよく頑張っていた。
 でも、それは彼ひとりで抱え込むモノじゃない。

 例の先輩さんがいた頃は、器用な彼が上手く難しい部分を浚って、各人員に振っていた節がある。
 それぞれが得意分野があるのだろう。
 本来なら、先輩さんは管理職の席に座る予定だったかも知れないが、一身上の都合で地元の支社への移動願いを出したらしい。
 通らなかったら辞める事も考えていたようだ。

 とんだ人に鍛えられたものである。
 可愛いものな。いやいや、美鈴さんが優秀というか、鍛え甲斐があったって事だね。だから、彼もついていけてたんだろう。もしかしたら、先輩さんももっと見てやる予定だったのかもな…。人生、何があるか分からんもんな…。本当、何があるか分からんよ。オレが男を好きになっちまうってさ。

 吸収されれば、教え甲斐があるってもんだもんな。ホント、教え甲斐があるんだよ。アレコレとさ…。ムフフ…のムフゥゥ…。

 先輩さん、アンタは…。困った事案を残しやがって…ですよ。ま、オレは彼を潰させない。任せなさいッ。

「美鈴さん、ズバリ言うよ。仕事内容見直そう?」

「なんで?」

 無自覚仕事人の彼は、キョトンとしてる。
 正攻法で言っても響かないか…。

「オレとデート出来ないから」

 真剣な表情と目で言い切った。オレの本心だ。

 じっと見詰める。

 オレはいつでも真剣なのさ!

 目の前でみるみる真っ赤になるオレの恋人。

 …可愛いな。ホント可愛いよ…。






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