見上げる空は小窓の向こう

アキノナツ

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1】見上げれば

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 目覚めれば、いつもと違う部屋…。

 身体が怠い。
 数日前から怠かったが、更に重く熱っぽくなってる。はぁーと吐き出した息も熱いような気がする。

 あー、来たのか。
 思い当たれば、腹も痛くなってきた。

 白い部屋。
 清潔で大きなベッドの上で膝を曲げて腹を温めるように丸まる。

 乾いたシーツが心地いい。
 防水なんだろうな…。
 マットもふわふわではない。固さ程々ので、ヤるには適度なんだろう。

 部屋は適温に保たれてるから、上掛けなんてペラペラで構わないけど、なんだか身体の線がそのまま出そうな薄さ加減。保温バッチリ高機能の素材なんでしょうね。

 そんな事を毎度考えてないと気が変になりそうだ。ここで目が覚めた回数は片手を超える前に数えるのをやめた。

 完全にヒートになれば、色ボケした感覚に思考も何もかも全部投げ出せば、全てどうでも良くなる。
 なんならもっと高揚感を与えてくれる薬でも要求すれば、期間が終わるまで更にオレじゃなくしてくれる。

 気持ちいいから醒めたら、またこことは違ういつもの部屋に戻っている。

 日頃からモニターされてるからヒート期間もこうやって把握されてるって事だ。夕食にでも薬でも混ぜられてたのかなぁ。

 ヒート時にどこかに連れて来られるみたいなんだよなぁ。一緒に生活してる…居るだけだな…奴も定期的に消えてる。帰ってきても暫くすると消えて、暫く帰って来なくなる。1年程したら帰って来るがな。完全に姿を見なくなる者もいるが…。

 この世界には、なんでバース性なんてあるんだろうな…。身近な話ではなかったので完全に他人事だった。まさか自分がな…。

 Ωオメガの男なんて家畜みたいな状態だよ。
 この首の黒い幅広の首輪のようなのが巻かれてるとなおさら思う。

 表面を手で撫でても繋ぎ目がよく分からない。材質も革なのか何かなのかよく分からない。ただ付けてる違和感というか異物感があまり無いしっくりとした感覚だ。身体の一部と言ってもいいフィット感。不思議な首輪。

 ここに来るとコレをされてる。αアルファがΩを噛まない為にされてる。うっかりつがいにでもなって、家畜としての商品価値を失わない為だろう。

 番になれば特定の相手にしか誘引フェロモンは発せられないらしい。

 ここは優秀なαを作る為の施設だとオレは思ってる。保護施設となってるけどさ。内情を知ったら、そうは思えなくなった。

 男性でΩとして発現した場合、国家安全の為に収容される。それは分かる。国の有用人材を誘惑する兵器のような存在として危険分子として扱われる。実際に使われたらしい。

 繁殖と同時に遊郭のようでもあるとオレは思ってる。

 気に入ったΩはお持ち帰りしていいらしい。その場合はこの首輪が外される。身受けだな。

 番になればこの施設から解放される。
 リハビリ施設を経て社会復帰も出来るらしいが、そういった奴はあそこで生活してない。

 初めて連れて来られた時にやった検査結果でマッチングがされるって話だから、そこからあぶれたオレのようなのが、こういうところで公的な花魁もどきをやってる訳だ。

 花魁ってのは花魁に失礼だな。
 オレは芸もαを悦ばす術も知らん。花魁の高い教養もない。特定の知識を学んでる最中だった。

 ここでラリってマグロになってるだけだ。
 αも優秀な遺伝子を残すって義務だけで腰振ってるだけかもしれない。なんらかの鬱憤を晴らすヤツもいると思うな…。

 オレみたいにちょっとガッチリした身体持ってるとヒート明けは痣だらけになってる事がある。酷い時は、すぐ帰れないで入院って事になる。赤ん坊の声も遠くで聞こえるから、そういったところの一角だろう。

 見上げれば、白い壁の上の方に小窓がある。

 ここからじゃ、あの小窓から外は見えない。青空だって事は分かるけど、高い位置にある。
 台になりそうなのは無いし、あったところで窓はハメ殺しみたいだし、見たところでどうにもならない…。

 トイレ行くか…。

 台か…。
 ここのは移動式の小さな引き出し付きのキャビネットのような小さなテーブルがあるだけ。ヒートが本格的に始まれば食事どころじゃない。食事と言っても軽食のようなのが食べれる台があればいいようなもんだから、ベッドを椅子代わりにこれでいい。なんなら栄養補給ゼリーでもいいからな…食事なんて必要ない。

 透明な引き出しには水やタオルが入ってる。
 プレイに必要なのとかもね。

 はぁ~、ヤリ部屋って感じですね。

 とてもこれも角が丸かったり、柔らかかったりと、致命傷を作るようなのは無い。今まで問題があったのが分かるような仕様だ。

 ベッドのこの端の作りだって拘束具を固定する何かだろ?
 オレが大人しいから必要としないだけだ。

 薬盛られて連れて来られるのもその所為かな…。

 多分、この隣りもその隣りも同じ作りの部屋があるんだろうな。物音は僅かに聞こえてくるから。壁の厚みはそこそこみたいだけど、行為自体が派手なんだろな…。

 いっその事、壁から尻出して並べてくれてもいいのにって思ってしまう。
 白い壁に男のケツが並ぶ光景を想像して笑えてきた。

 いよいよオレの頭も…ダメかもしれない。

 ヒートも何度もあった。子種もしこたま吐き出されたはずだが、妊娠まで至らない。
 不妊検査もされたな…。
 オレも疑っちまったからな。男性Ωは妊娠しにくいとはいえ、ここまでだよな。1回ぐらい産んでおかないと割に合わないだろう。

 欠陥Ωはこの先どうなるんだろう。役にも立たないならタダ飯喰わすだけ無駄だものな。

 ここに放り込まれてるって事は、問題なしとなってるって事だ。
 次回があるなら薬をと申請はしてあったんだが、今回はなかったみたいだ。あの台の上にカプセルと水がいつもあったのに…。

 背丈はそれ程でもなくてもがっちり体型だったから、暴れられても困ると思って薬…媚薬って言ってたか…を初回で仕込まれたのが、相手のαに評判が良かったのか、次回の時に指示書きと一緒に薬が置いてあった。

 オレに拒否権はないから指示通りのタイミングで飲んで暫くしたら、クラクラふわふわして気分が良くなって、ベッドに大の字。

 思考があやふやな中、初体験の時に味わったアレだと確信した。
 そして、初体験がαとの共鳴か何かと思ったが薬の影響だと分かった。分かって味をしめてしまったって訳だ。リクエストまでしてる。要望が通る事もあるんだね。どっちにしろ双方に都合がいいのだろう。でも、今回は無い。

「困ったなぁ…」

 トイレでぼやいてしまった。
 オレって…シラフで相手した事ないんだよなぁ。
 初体験ってヤツになりますね。処女でもないのに恥じらうのもって…男の恥じらい? あー、何を考えてんだろうね…。

 ヤバいなぁ…。客がドン引きしたらオレの価値なくなるよな。ポンポン産める訳でもないし(妊娠した事ない)。客を悦ばすテクもない(基本マグロで流れに任せて…)。

 薬がなくなったという事は、薬の影響で不妊って事か? 疑い?
 その実験でもあるのか?
 番にもされないから、社会復帰も諦めてる。今更番になっても困る。ヒートの回数から換算するとこの施設に来て結構時間が経ってる。

 番になっても一緒に暮らすとかは拒否できるらしいが、どうやって暮らすかな…。番うのは、要は勢いみたいなんだよ。オレには番う魅力はないって事ですな。自分の容姿を振り返る…。
 
 初めの時、社会復帰もしたかったから、番になってもいいと言っておいたが…。番に縁がないって事は、出来るだけ多く産まないと…。それも望めるかどうか…。ため息しか出ない。

 もう薬の検体にでも使ってくれていいよ…。

 あっ!

 尻を洗いながら、酩酊すればいいんだと思い付いた。
 酒ってあったか? そこが問題だ。サッサとシャワー終わらせよう。






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