彼とメガネの彼の話【時々番外編更新】

アキノナツ

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守りたい。

第1話 (※)

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優太ゆうたのところからの帰り道、ずっと鼻歌歌ってたと思う。

何故歌ってるのに気づいたかって?

そりゃ、通りすがる人がオレを見てたからぁ~。
なんで見られてるんだって思うでしょ?
ああ、歌ってたよって気づいたね。
気づいたら、やめないとねぇ。
でも、止めれなかったのさぁ。

気分が昂揚しててさ。

オレの再出発なのよ!

お祝い気分で、このウキウキが止まらないね!

鼻歌交じりで鍵を出して、玄関を開ける。

大きな荷物を入れる為に大きく扉を開けて、入って玄関にバックを置いて靴を脱ぎながら、締まりかけの扉をしっかり閉めようと振り返りドアノブ手を掛けようとして、固まった。

大きな手がドアの縁を掴んでた。

気配に気付かなかった。歌ってたから?
後悔…。

グンッと開いた向こうに逆光だが、大きな影が誰かはすぐに思い当たった。

ごう……」

扉が閉まり出して、光が翳る。

190センチ近い身長の知り合いなんて、コイツしかいない。シルエットも合致する。

昔、空手かなんかの格闘やってたとか言っていた。
がっしりした筋肉質なスラッとしたモデル体型に半グレ風なファッション。
口には火がついてない煙草を咥えていた。

あの吸い殻…。ポイ捨てすんな。

混乱してた。

「な、何?!」

出て行って欲しいが、もうほとんど玄関の中だ。どうしよう……。

「お前、なんで鍵掛けてんだよ!?」
苛立ちのご様子。

「オレ、留守してたし。鍵はするもんだし……」
竦み上がってる自分をなんとか奮い立たせる。

カ…ッチャンとドアが閉まった。

「すんなって言ったよな?! しなくなってたヤツが、今さら何やってだよ。お陰で女に逃げられたじゃねぇかよ」

なんで怒鳴られんだよ…。
そんな事知らないよぉ……関係ないじゃん。

思った事がしっかり顔に出てたみたいだ。
剛の顔が、更に険しくなった。

「お前にも回してやってただろ? 今更いい子ちゃんか?」
「もうやんないって言っただろ? オレの事はオレが決める。オレはオレ! お前なんか関係ない! 出てってくれ」
大きな身体を思い切って押してみたが、びくともしない。
どうしよう!
焦る…!

「お前な」
ドンと突かれた。体格差? 力が違い過ぎるッ。
足がもつれて倒れた。
置いてた荷物にぶつかって尻餅をついた。

脱げかけてた靴がバラバラに投げ出され、転がった。

玄関の上がり框から続く板の間で打ち付けた腰を摩りながら上体を起こす。
片手を後ろ手に身体を支えつつ、剛を見上げる。

「ーーーーそう言えば、お前の格好ってさ、女みたいだよな。この前、服着てヤってるのって、女同士が絡んでるみたいで面白かったんだよ。ーーーやれるかな」
顎を手で撫でながら、呟いてる。
目つきがなんか変ッ!

「はぁあ? 何言ってんだよ!」

怯みそうな気持ちをなんとか奮い立たせる。
声が震えそうになるのを誤魔化すように、腹から突き上げるように声を張り上げた。

「お前なら、やれる気がしてきた。この前の女に逃げられて、溜まってんだよなぁ」

立ち上がれないままのオレは、舐めるように見下ろされていた。
心底怖いと思った。

玄関は剛が立ち塞いでいるので、突破するのは無理。
……何処か、逃げれるところは?

目が退路を探して動く。

玄関入ってすぐがキッチン。トイレと風呂と洗面台が自分の横手にある。
鍵は掛かるが、頑丈とは程遠い。
奥は引き戸で、ワンルームのリビングとベッドルームが一緒の感じで鍵の掛かる場所はどこにも無い。
広くとれる空間が気に入って選んだ部屋だったが、こうなると、ベランダから出るしかないが、ここから飛び降りたら無傷ではすまない。下手をしたら……。

やはり、この男の横を通り過ぎて、玄関から?!

どうしよう……。


◇◇◇


りんのヤツ、上機嫌で帰って行ったはいいが、忘れ物があるぞ。

クスッと笑いが込み上げる。

高校の時も昇降口まできて、あっ!って言う事がよくあった。
教室に戻ると、机の上にポツンと忘れたモノがちんまりと待っているのだ。
そこまでしていて、何故忘れるんだか。

そして、今ここにコントローラやコードが本体と並べて、キチンと揃えられていた。

引き返してくる感じも連絡も無いところみると、帰り着くまで気づかないな。

「お前たち、置いてかれちゃったね」
鞄に詰め込んで、出掛ける準備。
「ご主人様のところに連れってやるよ」
ゲーマーの倫だ。無いと寂しいだろう。

駅に向かいながら、連絡とスマホを出したが、すぐしまった。
驚かせてやろうか。
浮かれていた。


◇◇◇


足元すり抜けたら行けるかも?!と思いつつも足が竦んで動かない。
ジャリっとたたきで音がして、びくっと肩が跳ねた。
剛から目を離してた。
もう目の前だった。
慌てて、距離を取ろうとずりずりと奥に下がった。

上がり框に足がかかる。
上がってきた。

あっ! 今なら抜けれるかも?!

ダッシュ!

横を通り過ぎて、ドアへ。
イケる!

ダボついた服を呪った。
首が締まる。

「どこに行こうとしてるのかなぁ?」

背中の布を鷲掴まれて、引き上げられる。

締まる襟と首の隙間に指をねじ込んで引っ張る。
ガリっと首を爪で引っ掻いたと思うが、そんな事構っていられない。息を吸いたい。

立ちあがろうと足を動かすが、滑って、立つよりも後ろに引かれる力の方が強い。
ズルズルと早い速度で奥の部屋に引き摺られる。

「カホッ……ゲホゲホ…」
やっと息が出来たのはベッドに放り上げられた後だった。

もうベランダでもいい!

ガバッと起き上がって、這い出ようとすると、蹴り倒される。
胸を蹴れた。息が出来ない。

ハヒー、ヒューっと喉が鳴ってる。

仰向いた身体にズッシリと剛の身体が乗ってきた。

胸倉を掴まれ、引き上げ、顔が近づく。
額がつくかという距離で目を合わせる。
苦しさからか涙で視界が歪む。

「大人しくしろや」
誰が!
グッと息を飲み込むと、思いっきり頭を引いて振った。額に頭突きをかました。

痛ってぇ!!!
オレにもダメージ。

ヤバ!
剛の目が鈍く光った。

視界の隅で何かが来た。
目の前に星が散った。

頬に痛みが走りチリっと口の端が切れたのを感じた。
思いっきり叩かれた。

クラクラしながらも睨み返したら、もう一度やられた。
口の中に鉄の味が広がる。
痛みで半身を捩って、呻いて動けなくなった。
バサリと何かがベッドの下に落ちた。

チカチカする視界に上半身裸の剛がいた。

オレ、どうなんの?!

ズボンに剛の手がかかる。
なっ?!
阻止すべく手を重ねる。
力が入らず、パンと弾かれる。
チャックが降りて、ずり下げられ、服をたくし上げられ腹に外気を感じる。

胸の突起を舐められた。

「嫌ぁぁぁぁ!!!!」

思いっきり叫ぶ。
降り上がる腕の気配。
叩かれる!と思った。
腕で頭を抱えるようにガードしてた。

!!!

叩かれはしなかったが、思わぬ感触にビクついた。
胸を吸われてる。
女じゃないから感じる訳がないと思いたいけど、この前の女の子に弄られて開発されてて、ちょっと感じるようになってて、とってもまずい。

反対の乳首を捏ねだした。
やめてぇーーーー!

きゅっと抓られた。
「にゃうーーーっ」
変な声出ちゃったぁぁぁ!

「いいなぁ。イケるわ」
胸から顔を上げて、乳首をこねくり回してる。
腰から下の力が抜けていく。

嫌ぁぁぁぁぁ!
気持ち悪さに目をぎゅっと瞑った。

ヌルっと口を何かが覆った。
ん?!
キス??!

顎をグッと押されて口を開かされた。
ズルっと舌が入ってくる。

力が入らない手を肩にかけて押すがびくともしない。
涙が流れる。

ヤダヤダヤダ!

動き回る舌に吐き気を耐えながら、舌に絡んでこようするのをなんとか逃げ回る。
口の端から唾液が流れる。
舌が絡む。
逃げたくて舌で押し返して、不味ったと思ったが、後の祭り。更に捕まって絡んでくる。

息が苦しい。
唾液を飲んでしまった。
込み上げてくる吐き気に、エイッと剛の舌に噛みついた。
早くこうすれば良かった。
剛の舌が引っ込んだ。

頭を押さえられて動けない。
唇は離れてくれない。
更に唇に噛み付く
離れた。

身体を捩ると咳き込んだ。
「ゲボゲボ…ゲェ、ゴホ…」
ダラダラと口から唾液が何か分からないものが流れる。
ヒュー、ヒューと息を吸い込む。

横目で剛を見ると、手の甲で唇を押さえて傷の具合をみている。

目が合った。

ニヤッと笑った。

再び、両乳首を触り始める。
変な声が出そうになる。
やめて欲しくて手を重ねるが、全然力が入らない。
片手が離れた。
ちょっとほっとして、次の瞬間全身が固まった。

!!!!!
ズボンの中に剛の手が!

前を触ってる!
ゾゾっと背筋と嫌悪の震えが走る。

ジタバタと足を動かして、なんとか抵抗を試みる。

ピンポーン

一瞬で空気が固まる。
インターホンの音。
二人揃って玄関の方を見る。
何も動かない。

ピンポーン

オートロック。
共同玄関の呼び出し音だ。

「誰か来るのか?」
予定は無かったが、ここは、誰か知らないが乗っからせてもらう!
ブンブンと思いっきり頷いた。
涙が散る。

ブーブーと玄関でスマホが振動してる。
どこかに転がってるんだろう。

「チッ!」
剛が忌々しげに舌打ちすると、イライラを乗せた平手打ちを一発打ち込み、ベッドから降りた。

クラクラする頭と痛む頬に手を添えて、のろのろと起き上がった。
剛は、脱いだ服をを掴んで着込んでいた。
出ていってくれる……。
ほっとした。力が抜ける。
ん? 目の端に何かが飛んでくる。一瞬身構えた。

振り向きざまの回し蹴りが飛んできた。
ベッドから床に吹っ飛んだ。

「今度会った時は覚悟しとけ!」

ドタバタと出ていった。
非常階段の方に駆けてったみたいだ。

助かった?

回し蹴りが入った痛む脇腹押さえて、玄関に這いずって向かう。

鍵閉めないと……。

気が遠くなりつつ、這っていく。



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