真司くんは突っ走る。

アキノナツ

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1.真司くんは見てる。

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小学生の真司しんじくん!

今日もランドセルをガタガタいわせて走る。
ガリガリ…
走る走る!
ガタガタ…ガリガリ…

「ただいま!!!」

ドダン! ランドセルを放り込む。

黒いランドセルはぐったりと玄関でひっくり返って寂しそうだ。

「行ってきます!!!!!」

「真司! 行き先! アレ持って行って!」
お母さんの声が追いかける。

「公園! 持ってる!」
バタン!!!

「はーーーっ、真司宿題しようよぉ」
ごもっともなぼやきが、ため息と共に絞りでる。

ひっくり返ったランドセルを拾い上げる。
また新しいキズが増えてる。
これはコンクリートブロックか。
白い粉を叩きながら、新しくできたキズを優しく撫ぜる。

一部の男児は「ダンスィ」と言われる。

真司は正しくダンスィである。

彼らの生態は様々であるが、このランドセルの傷はどうできたのか説明しよう。

道路を走る時、普通と言われる児童はどこを走るか想像して欲しい。

ハイ。
歩道をとてとてと走る児童を思い浮かべた人が大半であろう。
それが一般的と言われる姿である。

キーホルダーや鈴がリンリン、ガチャガチャなんて鳴ってるのも可愛いらしいものである。

が、しかーし!

ココに示すは、ダンスィである。

歩道を走ってるのは走ってる。
ルールはキッチリ守ってます。えらいですね。

ただ、コース取りが問題です。

端をね、ほーんとに端っこをね、走るんですよ。
ガリガリ引っかかっても、走るづらくても、関係無い!
むしろ気付いて無い!

アウトオブ眼中。

自分の事なのに無関心!

走りたいところを走る。

障害物なんて気にしない。

自由に思いのまま!

ランドセルが、服が、キズだらけでも「なんでだろうね?」と平気で返せる無自覚さ。
足元だって無関心。水たまり問題なし。
バシャバシャ。
ぬかるみ?
関係ないね。ズンズン行け行けどんどん!

ドロッドロでゴールして、首を傾げる「おかしいなぁ、なんで汚れたんだろ?」
「そんなのこっちが聞きたいわ!」と親御さんの叫びが聞こえますね。

素晴らしいスルーりょく
もう感心しか出来ません。

コンクリートブロックの塀にランドセルを摩りながら、端っこを走ってたんですね。

なんでそんな端も端、端っこを走らねばならないのか。小一時間ほど問いただしてみたいところであるが、訊いたところで返答らしい返答も期待できないので、放置しかない。致し方なし。

玄関に置いてあった。子供ケータイと絆創膏セットが入った巾着が無くなっているから、ポケットに押し込んでいってくれたと信じたい。
ルールは守る。挨拶もしっかり。基本的な事柄になんの問題もないが、問題だらけのダンスィ。

ダンスィの見守り、お疲れ様です。



真司くんはブランコがお気に入り。
次が来たら変わるのは当たり前。
ジェントルマンへの道は一日にしては成らずなのだ。

幼稚園に時、兄ちゃんが言ってたのを実践したら、酷く怒られた。

でも、兄ちゃんは言ったんだよ!

「兄ちゃん、なんでぎゅうぎゅうするの?」

兄ちゃんは良くボクを抱っこしたり、頭撫でたり、ぎゅっと抱きしめてくる。
くすぐったいし、苦しいからあんまり好きじゃないけど、兄ちゃんだから許す。
あんまりな時はどう言っていいかわかんないから噛む。噛んだらすぐ止まるから。
でもすぐぎゅうぎゅうが始まるんだけど。

ちょっとうんざり。

そして兄ちゃんは「大好きだから」と笑う。
兄ちゃんがにっこりするのは嬉しいんだけど。

だから、ボクは一番大好きだったミヨちゃんをぎゅうぎゅうと抱きしめたら、泣いちゃった。

にっこりさせたかったのに、泣かせちゃった!

びっくりしてたら、大好きなマリ先生が怒った!

大好きな二人がにっこりしてくれなくて、ボクは怒って、泣いた。
わんわん泣いた。
ギャーギャー喚いた。

ボクが落ち着いたところで、マリ先生が話を聞いてくれた。

うんうん、頷いてくれる先生に兄ちゃんの事も話したら何故か遠くを見てた。

マリ先生が何を見てるのか、気になって見てる先をジッと見てみたが、何もない。

「なるほどね…」
先生は溜め息をついて、ジェントルマンについて話してくれた。
マンってつくのは、ヒーローみたいだ。
ジェントルマンはぎゅうぎゅう抱きしめないんだって。
兄ちゃんはちょっと表現が激しいだけなのよと言ってた。

優しく、相手の事を思って、大好きな子をエスコートするのがジェントルマンらしい。
なんか良くわからないけど、エスコートが出来るようになったら、ミヨちゃんも笑顔に出来るらしい。
ジェントルマンは喚かない。
ジェントルマンは泣き叫ばない。
なんかかっこいい。

ボクはジェントルマンになる!

それから、マリ先生にどれがジェントルマンでどれがジェントルマンじゃないか教えてもらいながら、ジェントルマンへの修行は続いた。

小学生になった今でもジェントルマンになるべく、修行は続いている。



鬼ごっこの最中にチャイムが鳴った。
5時だ。いつも夕方5時に何処かでチャイムが鳴る。6時には夕焼け小焼けが流れる。
帰る時間。ジェントルマンなボクは帰るのだ。マリ先生が約束を守るのもジェントルマンだって言ってた。

「帰るねー! また明日! バイバーイ!」
巾着からこどもケータイを取り出すと『かえる』とお母さんに送る。
「かえるコール」というのはお母さんとの約束。
手に付いた土ごとケータイを巾着に押し込んで、巾着を振り回しながら駆け出した。

あっ、フェイスに巾着引っかかった。
なんでだろう?
エイッと引っ張ってとる。
ポケットに突っ込んだら、スキップで帰る。




兄ちゃんはジェントルマンじゃないと思う。

兄ちゃんが友達をぎゅうぎゅうしてた。
やめろって言われてたのに、ぎゅうぎゅうはダメだと思う。
兄ちゃんは大好きだからぎゅうぎゅうするらしいけど、マリ先生は相手もぎゅうぎゅうしてくれるならしていいって言ってた。

だから、兄ちゃんはジェントルマンじゃない。
やめてって言ってるんだから。

でもね、不思議なんだ。

やめてって言ってるのに、ニコニコなの。
ニコニコしながら、やめてってお友達。

ボク良く分かんない。今度マリ先生に聞いてみようかな…。




ーーーーーー
聞いちゃダメ。



『二人っきり』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/825350246/512774071
の帰省時のお兄ちゃんたちの様子を目撃しちゃったようです。

倫お兄ちゃんへのご挨拶は『ジェントルマン』が発動してました(^-^)b


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