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2.真司くんは潜りたい。
しおりを挟む真司くんは飛び出したいのを後ろからお母さんに羽交締めされていた。
抱き抱える?
抑え込む?
掴む?
生温いわ。
羽交締めぐらいが丁度いい。
「真司、約束覚えた? 滑るから走っちゃダメよ。足の裏全部で、ぎゅ、ぎゅ、よ?」
ジタバタしながら、ウンウン激しく首がもげないかというぐらい頷きまくる。
器用に頭突きを避けながら、溜め息を付くお母さん。お疲れ様です。
「分かったから! 大丈夫! ぎゅぎゅって走るから!」
「だ、か、ら!!!」
真司が耳を塞ぐ。
「あ、ごめん」
急に小さく体を丸めて涙目でプルプル震えてる。
突然の耳元での大きな声に耳が耐えれなかったようだ。
身体が痛くなってしまうらしい。
束縛を解いて、蹲る背中を摩りながら「ごめん、ごめん」と囁くように語りかける。
泣くか? 叫ぶか? 癇癪魔人降臨か?
お母さんドキドキです。
涙目ながら、真司くん立ち上がるとお母さんに向かって、サムズアップ。
どこで覚えた?
「大丈夫! ボク、ジェントルマンだから」
ナゾのジェントルマン。
マリ先生からは聞いてるからいいけど、外で言わないでよ。なんか恥ずかしいよ、お母さん。
玄関開けて、銀世界を堪能する。
よーいとする後ろから「真司?」と不安そうな声がする。
自転車の時被るヘルメットを手に「被っていく?」と訊くお母さん。
そっと一歩。
ギュ…
積もった雪が踏み締められる。
お父さんは端を頑張って歩いて出掛けたようだ。
ご苦労様です。
数センチ積もった雪なんて初めて見た!
た、楽しい!
ギュ、ギュ、ギュ…
公園に行こうかと思ってたけど、家の塀や車の上に積もった雪をかき集めて、雪玉を作るお母さん。
見上げると、お母さんが手のひらサイズの雪だるまを塀の上に並べていた。
「ボクも!」
手が真っ赤だ。
鼻がズルズル鳴ってる。
お母さんが「もう入ろ?」と何度目かの呼びかけをしてくる。
「うん、もうちょっと…」
円陣を組む雪だるまたち。
隊列の雪だるま。
兄ちゃんが帰ってくるはずだから、雪だるま軍団でお出迎えする事にした。
いつの間にかお母さんが消えてた。
ズルズル鼻を啜りながら、並べていく。
「お鼻真っ赤。手も…。お風呂であったまろうか? ハイ、チーン」
お母さんがティッシュを鼻に当てる。
「あっ! 公園行ってない! 行ってくる」
鼻かんでスッキリしたら思い出した。
今日は公園で雪を堪能するんだった。
「ちょっと行って帰っておいで。オヤツ用意しとくから」
ギュって鳴ってた雪はちょっとベチョっとしてたけど、歩く度に音がして楽しい。
公園について、お母さんが『ちょっと』って言ってた意味がわかった。
公園の中はべちゃべちゃだった。
どろんこ遊びも楽しそうだけど、気分じゃない。
回れ右して、まだ踏まれてない雪を探して帰って行く。
大きな氷を交互に持ちながら、家に向かう。
途中、バケツに張った氷を見つけて突いてたら、おばさんが出てきて、持ってていいよって言ってくれた。お礼を言って持って帰る最中です。
あと少し。
手がジンジンして感覚ない。
門扉が見えた玄関まであと少し……落ちた。
走って帰ってきたら、割れなかったかな。
ちゃんと掴んでたら、割れなかったかな。
お母さんに見せたかった。
兄ちゃんに見せたかった……。
泣いちゃった。
喉が冷たい。
声を張り上げた。
お母さんが飛び出してきた。
滑った。尻餅。
足元のカケラを見て、笑ってる。
おっきいねーって笑ってる。
もっと大きかったんだ!!!
お母さんが、拾い上げて、ひとつひとつ丁寧に塀に立てかけていく。
キラキラ光ってる。
「真司、綺麗よ」
ボクは泣きながら、見てた。
頬っぺたが痛い。
塀の上の雪だるまをいくつか氷のカケラの間に並べるお母さん。
カケラで隠れんぼしてるみたいだ。
泣き止んで、お母さんの背中にべったりくっついた。
ジェントルマンはお休みしちゃった。
「オヤツ食べよっか?」
頷いた。
また鼻がズルズルする。
「お風呂が先かな」
手を繋いでお家に入る。
お母さんもボクもどろんこになってる。
なんでだろう?
こたつというのが友達のウチにはある。
ウチにはない!
理由はなんとなく分かる。
友達の姉ちゃんが言ってた。
「アクマのユウワク」
怪しい呪文だった。きっと喰われるんだ。
あったかくて気持ち良かったもんな。
ホットカーペットの上にブランケットやクッションぬいぐるみをこんもり積んだ。
さてと、友達のとこでヌクヌクしたアレには程遠いが中はポカポカだ。
さっき手を突っ込んで確認した。
ムフフ。
モソモソ潜り込む。
あったかい。
「お兄ちゃん、電車が、遅くなるって…寝てるわ」
ぬいぐるみとクッションに埋もれて寝る真司。
お母さんの溜め息。
「風邪薬用意しなくちゃ…」
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風邪引き確定ですね。
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