真司くんは突っ走る。

アキノナツ

文字の大きさ
2 / 4

2.真司くんは潜りたい。

しおりを挟む

真司しんじくんは飛び出したいのを後ろからお母さんに羽交締めされていた。

抱き抱える?
抑え込む?
掴む?
生温いわ。
羽交締めぐらいが丁度いい。

「真司、約束覚えた? 滑るから走っちゃダメよ。足の裏全部で、ぎゅ、ぎゅ、よ?」
ジタバタしながら、ウンウン激しく首がもげないかというぐらい頷きまくる。
器用に頭突きを避けながら、溜め息を付くお母さん。お疲れ様です。

「分かったから! 大丈夫! ぎゅぎゅって走るから!」

「だ、か、ら!!!」
真司が耳を塞ぐ。

「あ、ごめん」
急に小さく体を丸めて涙目でプルプル震えてる。

突然の耳元での大きな声に耳が耐えれなかったようだ。
身体が痛くなってしまうらしい。

束縛を解いて、蹲る背中を摩りながら「ごめん、ごめん」と囁くように語りかける。

泣くか? 叫ぶか? 癇癪魔人降臨か?
お母さんドキドキです。

涙目ながら、真司くん立ち上がるとお母さんに向かって、サムズアップ。

どこで覚えた?

「大丈夫! ボク、ジェントルマンだから」
ナゾのジェントルマン。

マリ先生からは聞いてるからいいけど、外で言わないでよ。なんか恥ずかしいよ、お母さん。

玄関開けて、銀世界を堪能する。
よーいとする後ろから「真司?」と不安そうな声がする。
自転車の時被るヘルメットを手に「被っていく?」と訊くお母さん。

そっと一歩。
ギュ…
積もった雪が踏み締められる。
お父さんは端を頑張って歩いて出掛けたようだ。
ご苦労様です。

数センチ積もった雪なんて初めて見た!
た、楽しい!

ギュ、ギュ、ギュ…

公園に行こうかと思ってたけど、家の塀や車の上に積もった雪をかき集めて、雪玉を作るお母さん。
見上げると、お母さんが手のひらサイズの雪だるまを塀の上に並べていた。

「ボクも!」



手が真っ赤だ。

鼻がズルズル鳴ってる。

お母さんが「もう入ろ?」と何度目かの呼びかけをしてくる。

「うん、もうちょっと…」
円陣を組む雪だるまたち。
隊列の雪だるま。

兄ちゃんが帰ってくるはずだから、雪だるま軍団でお出迎えする事にした。

いつの間にかお母さんが消えてた。

ズルズル鼻を啜りながら、並べていく。

「お鼻真っ赤。手も…。お風呂であったまろうか? ハイ、チーン」
お母さんがティッシュを鼻に当てる。

「あっ! 公園行ってない! 行ってくる」
鼻かんでスッキリしたら思い出した。

今日は公園で雪を堪能するんだった。

「ちょっと行って帰っておいで。オヤツ用意しとくから」

ギュって鳴ってた雪はちょっとベチョっとしてたけど、歩く度に音がして楽しい。

公園について、お母さんが『ちょっと』って言ってた意味がわかった。
公園の中はべちゃべちゃだった。

どろんこ遊びも楽しそうだけど、気分じゃない。

回れ右して、まだ踏まれてない雪を探して帰って行く。




大きな氷を交互に持ちながら、家に向かう。
途中、バケツに張った氷を見つけて突いてたら、おばさんが出てきて、持ってていいよって言ってくれた。お礼を言って持って帰る最中です。

あと少し。
手がジンジンして感覚ない。
門扉が見えた玄関まであと少し……落ちた。

走って帰ってきたら、割れなかったかな。

ちゃんと掴んでたら、割れなかったかな。

お母さんに見せたかった。

兄ちゃんに見せたかった……。

泣いちゃった。
喉が冷たい。
声を張り上げた。

お母さんが飛び出してきた。
滑った。尻餅。

足元のカケラを見て、笑ってる。
おっきいねーって笑ってる。

もっと大きかったんだ!!!

お母さんが、拾い上げて、ひとつひとつ丁寧に塀に立てかけていく。

キラキラ光ってる。

「真司、綺麗よ」

ボクは泣きながら、見てた。
頬っぺたが痛い。

塀の上の雪だるまをいくつか氷のカケラの間に並べるお母さん。
カケラで隠れんぼしてるみたいだ。

泣き止んで、お母さんの背中にべったりくっついた。

ジェントルマンはお休みしちゃった。

「オヤツ食べよっか?」

頷いた。

また鼻がズルズルする。
「お風呂が先かな」
手を繋いでお家に入る。
お母さんもボクもどろんこになってる。
なんでだろう?



こたつというのが友達のウチにはある。
ウチにはない!
理由はなんとなく分かる。
友達の姉ちゃんが言ってた。
「アクマのユウワク」
怪しい呪文だった。きっと喰われるんだ。
あったかくて気持ち良かったもんな。

ホットカーペットの上にブランケットやクッションぬいぐるみをこんもり積んだ。

さてと、友達のとこでヌクヌクしたアレには程遠いが中はポカポカだ。
さっき手を突っ込んで確認した。

ムフフ。
モソモソ潜り込む。
あったかい。

「お兄ちゃん、電車が、遅くなるって…寝てるわ」

ぬいぐるみとクッションに埋もれて寝る真司。

お母さんの溜め息。

「風邪薬用意しなくちゃ…」



ーーーーーーーー

風邪引き確定ですね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タトゥーの甘い檻

マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代) どのお話も単体でお楽しみいただけます。 ​「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」 ​真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。 ​それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。 「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。 アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。 ​ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。 愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。 ​「……お前のわがままには、最後まで付き合う」 ​針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。 執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

神父様に捧げるセレナーデ

石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」 「足を開くのですか?」 「股開かないと始められないだろうが」 「そ、そうですね、その通りです」 「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」 「…………」 ■俺様最強旅人×健気美人♂神父■

処理中です...