保健師は考える

アキノナツ

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後3.保健師の微睡

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さ、寒い……。

書斎のカウチソファベッドで毛布に包まってミノムシになっている。

リビングでは、一人だし、なんとなく暖房入れるのが気がひけて、狭いところが落ち着く事もあって、自室に閉じ籠った。
暖房も入れた。
さっきまで生姜湯を飲んでぬくぬくしてたはずだったんだけど、急に寒くなってきた。

窓を見ると、カーテンの隙間から見える空がなんだかどんよりしている。

ちらちらしてるのはもしかして……。ああ、雪だね。

雪か。

小宮こみや、大丈夫かなぁ。

部活指導に出掛けてる。

見る間に粉雪から綿雪に変わっていく。

傘持って行ったかなぁ。

斜めに降ってない?

なんだか眠くなってきた……。

小宮の事は気になるけど、あの男は自分でなんとかするさ。


◇◇◇


ゆらり、ゆらり、ゆら……

暖かいな。
ハンモックのようなゆったりとした揺らぎに、ふにゃふにゃになっていく。

頭がもそもそする。
鬱陶しいーーー寝かせてくれよ。
毛布の中に、もそっと、更に潜り込もうとして動いて行き止まった。進めるスペースがない?

ん、んー。もぉぉぉぉぅぅぅ。

腹が立ってきて、毛布の中でモソモソしてたら、背中をぽふうん…ぽふんと心地いい振動が響いてきて、眠りに誘ってくる。
なんだ、なんなんだ、この気持ちいいヤツは?

ぷふぁっと毛布から顔出して、開かない目をシワシワとしてると石鹸の匂いのする温かい何かに包まれて、視界か暗くなった。

この匂い知ってる。

小宮か。

風呂上がりの匂いと小宮の匂いが混ざって、気持ちも落ち着いて、ますますふにゃふにゃだよ。

あったかいのな……。

襟足をサワサワ触ってるなと思ってると頸をもにゅもにゅ揉み始めた。
何それ気持ちいいんですけどぉぉ。
蕩けるぅぅぅ。

うふぅん。

気持ち良さに出た吐息は甘ったるい声を乗せて小宮の服に吸い込まれた。

うむむ……断じて誘ってないです。

小宮さん…ナニが当たってるような気がしますが、私はその気はないので悪しからず……。

「みのるさん」
甘ったるく耳元で囁かれる。

ふわふわあったかくて、トクトク規則正しい鼓動にうつらうつらしてきた。
程よい締め付けで抱きしめられて、更に意識がすーっと落ちていく。

「あんなとこで寝てたら、風邪引きますよ」
声の響きや振動も気持ちいい。
「今日はよく寝ますね」
もにゅもにゅされながら、優しく撫でられる。

年に一度か二度ごく稀に微睡ながら、長々と眠る事がある。それが今日だったみたいだ。

撫でる仕草は猫を撫でてるみたいだな。

私は、老猫だ。
優しくしてくれ。
頭やこめかみに吐息がかかる。
キスでもしてくれてるのだろうか。

すまない。
起きれそうにない。
瞼も重くて。
鼻をゴリラに擦るつける。
頬が擦れる服の摩擦も心地いい。
ここはとっても居心地が良くて、困る。
ホント、困ってるんだよ、小宮。

お前の思いのままに付き合ってやりたいとも思うが、ちょっと無理かな。

やりたいんだろうな。

別れてくれや。

私がお前から離れられなくなる前に。

な?

「離れませんよ」

眠い。
思ってるだけだと思ってたら、言葉が出てたのか。

じゃいいや。

したいんなら、寝ててもしたらいいぞ。

くすくす笑ってる。

何が可笑しいんだろう。

私は本気だが。

私の身体を使えばいいだろ。

ガタついてるが、まだ使えるだろう。

なんだ、苦しいじゃないか。
抱きしめられてる。締め付けられるな。
嫌な締め付けじゃない。
これ、好きかも。

もう少し寝ていいか。
抱きしめててくれてるか?

私の身体なんて好きにしてくれていいよ。

とは言え、目が覚めたら動けないまで使われてたら、怒るかもな。
うふふ…。


◇◇◇


んーーーーッ!

ぐいーーーーんと伸びをした!

寝た!
起きた!

パチクリと目を開くと、赤っぽいが明るい夜用の照明だった。
リビング?

ベッドでドロドロを覚悟してたんだが。毛布にくるまったまま、小宮に抱っこされてた。

「えーと、おはよう?」

ちょっと怖い顔の小宮。
寝すぎだと怒られるのかな。

「その辺転がしてくれてよかったのに」

怖い顔いやーんと手でゴリラの顔をマッサージ。
覚えてる範囲で16時間は寝てたみたいだな。
壁の時計を見てほぼ夜中の時間の表示に、申し訳なくなった。

「あ、雪どうだった?」
「積もってると思います。今も降ってるみたいです」
「明日まで残ってるかな。雪だるま作りたい」
あ、ちょっと表情緩んだ。
「子供ぽいって思ったか? おっさんだってはしゃぎたい時あるんだよ」
くふふと笑うと、雪の酷さを話し出した。
大変だったみたいだ。

「凄く吹雪いて、切り上げて帰ってきました。ずぶ濡れで、風呂入って、みのるさん見つけて。起きなくてツツいて遊んでました」

心配顔に、優しい顔に、思い返した感情が顔に出てる。
面白い。

「ポトフ出来てますが、食べますか?」
「この時間から食べたら、太るな。代謝が悪くなってるんだよな」
おっさん臭い事言ってる自覚はあるけど、事実だ。許せ。
このまま普通に寝てしまうか。

「運動したら、プラマイゼロですよ」
はひ?
あー、えーと、小宮さん?やるの?

えっ? えーーーっ?!

待ってたの?!

あー、その顔は確定なのね。

仕方がない。付き合いましょうか。

ナイショだけど、私もしたい。
えへッ。


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