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【本編】〇〇までのカウントダウン
1・キスまでのカウントダウン
しおりを挟む秋風、ちょっと肌寒い。
シミがある白いカーテンが揺れてる。
机に突っ伏す。
テスト終わったぁ~!
開放感!
結果は棚上げでよろしくです。
「帰るべ?」
上から声が降ってくる。
ちょっと掠れた声。変声期にやってしまったのだろうか?
でも、オレはこの声が好きだ。
「もうちょっと浸りたい……」
前の席の椅子を引く音が聞こえる。
オレの席の前が埋まる。
その席の主はもう帰った。
声をかけてきた彼が座ったのだ。
ドスッと荷物が置かれる。
チャックの開く音。
オレの周りだけ静寂が訪れた。
廊下や教室のあちこちで、テスト終わりの開放感からくる甲高い声などが騒がしく聞こえるが、オレには関係ない。
今、オレは、この空間を独り占めだ。
前に伸ばした手を机に戻し、手を組んで頬を乗せて、彼を見る。
文庫を読んでる。
小難しいのでも読んでるんだろうか。可愛い絵柄のライトノベルだろうか。
どっちでもいい。
オレよりも大柄で、姿勢が良くて、手が大きくて、指が長くて、顔が整っていて。
薄い唇や切長な目が冷たい印象を与える。
肩幅も筋肉もカッターシャツ越しにエロく見えます。
剣道のお陰なのかな…。
まつ毛長いのな……。
「トオル。寝るなら、家帰るべ?」
?
「寝てた?」
目を擦りつつ身体を起こす。
背中がバキバキだ。
両の手を突き上げて伸びようとして、手の甲が濡れてるのに気づいた。頬もちょっと冷たい。
慌てて引っ込めてじゅるっと拭う。
涎垂らして寝てたらしい。
昨日の一夜漬けがここに来て出たらしい。
ちょっと寝惚けてる。
「気づいたら、お前寝てた。みんな帰った。出ないと先生くる」
本をしまいながら、淡々と話す声がイイ。
オレはこの声に恋をしてる。
「おう…」
ふわぁ~と欠伸をしながら、荷物を纏めると、連れ立って教室を出た。
「お前また伸びた?」
「トオルの猫背が酷くなってるからじゃないか?」
「そうかなぁ。牛乳飲んでるのに、伸びねぇ」
「関係ないらしいぞ」
「マジィ? 腹緩くなるからやめようかな」
「緩くなるのか…。やめた方がいいな」
「だな。電車の時ドキドキだわ。あはは…」
声が聴きたいからクダラナイ話で言葉をつなぐ。
コホンと小さく咳。
ポケットからお決まりの飴を取り出し、彼に渡す。
「喋り過ぎた。ありがとう」
喋ってる内に入らないよ。
包み紙を剥いて口に押し込んだ。動く唇を眺めてしまった。
エロいな…。
「明日、どうする?」
明日は土曜。休みだ。
「どうするかなぁ。部活も無いし。ゲームでもしようか?」
「誘われてる?」
「誘ってる」
昇降口で下足箱から靴を落とし、彼の言葉に靴を履き損ねた。足がモソモソ。
「じゃぁあ、お邪魔します」
ドギマギしてしまった。初めてのお誘い。
「おう、お邪魔してくれ」
バス停まで、どんなゲームが好きかとか、色々訊かれる。
いつもはすぐ黙ってしまう彼。
声が聴きたくて、声をかけてるのに、さっきから彼から声をかけてくれる。
ちょーーーーラッキー!
薔薇色気分でバスの時間を過ごし、駅で上りと下りに分かれる。
待ち合わせは、改札前のカフェとなった。
私服の彼。センスいい。清潔感のある大人っぽい格好。
片やオレは、Tシャツにチノパン。色は上が紺、下は黒。スニーカーは通学に使ってる薄汚れた白。
ダサいよな。斜め掛けのバックの紐をきゅっと掴んだ。
実は、昨日帰ってからクローゼットの中漁った。
一周まわって、気負っても仕方がないじゃんて事で、こうなった。
だって、分かんなくなったんだよ!
カフェでコーヒー飲んでる姿も様になってる。文庫読んでる姿も。
窓辺に座ってたので、コツコツと指先でガラスを小さく叩いた。
顔を上げて、目が合うと笑った。
トキンと心臓が跳ねた。
店を出てきた彼と並んで改札を通る。
「今日、家族みんな出掛けちゃってさ。夜まで帰って来ないんだ」
言いにくそうに言ってきた。
どうしたのだろう?
「騒ぎ放題だな」
思ったままを言った。
「そうだな」
ああ、そうか。といった雰囲気が漂う。
あれ? オレは女子じゃないし。なんかあるのか? なんだこの雰囲気?
「駅前にコンビニある? なんか買って行こうよ」
電車に揺られながら話す。
「牛乳はなしな」
「あー、無しな。あはは…」
クダラナイ話も覚えてくれる律儀なヤツ。
「買い過ぎたかな」
「袋菓子ばかりだから、嵩張ってるだけだよ」
でも、二袋は…。
一袋ずつ下げて、タケシの家に向かう。
大きいのな。
庭付き一戸建て。塀も門も大きい。
若干引き気味で、お邪魔しまーすと上がる。
靴キチンと揃えたよ。
「俺の部屋、2階」
彼の後ろについていく。
「広いな…」
クッションが二つ。テレビの前に並んでる。
個人でテレビ持ってるのかよ。マジか…。
良くまぁ、オレと話合ってたな。
庶民派のオレ。隅っこでいいですって言っちゃいそう。
「ゲームすぐ出来るけど?」
ふとベッドに目が行く。
オレの二段ベッドとは雲泥の差。
むむむ…。やってみたい!
「ふかふかだったりする?」
「何が?」
「ベッド」
袋をクッション付近に置いて、そばのベッドを指差す。
「どうかな」
鞄を下ろすと、もう待てない!
「試せば分かる!」
エイ!とダイブした。
ぽふん。
気持ちいいぃぃぃ!
「はぁあああ、めっちゃいいなぁ。オレこれで寝たい」
タケシの匂いがする。
すりすりと顔を擦り付けて布の肌触りを、ふかふかを、堪能する。
「お…ぃ」
少し高く掠れた声。
「ん?」
ベッドの傍らに近づいてくる気配。
顔を上げると、真っ赤なタケシ。なんで?
「どうした?」
起き上がったら、顔が近くなってしまった。
彼の熱が移ったみたいに、こっちもポンと熱が上がってしまった。
「ゲーム、何があるんだ?」
返事を待たずに、質問してしまった。
キ、キスされるかと思ったッ!
なんでそう思ったのか謎だけど、そんな気がした。
タケシの横をすり抜けて、クッションに移動して、コンビニの袋を逆さにして袋菓子を出して振り出す。
適当に手に掴んだ袋を開ける。
「これ、カートゲームだけど、操作は簡単でさ…」
タケシが、のっそりと横に座って、ゲーム機を立ち上げ説明を始めた。
ドリフトを覚えて、使いまくる。
「ヤッタァー!!」
騒ぎ放題、最高!
ペットボトルを傾ける。
勢い余った。顎を水が流れた。
手で拭って、ティッシュを探す。
手を伸ばすも届かない。タケシが取ってくれる。
「ありがとう」
「なぁあ? 俺の事…」
ティッシュの箱を受け取りながら、タケシの声を聞く。
「ん?」
ポップコーンを口に放り込む。
「この前さ、俺の事、好きって…」
「え…、いつ?」
オレ、お前の声好きだ。なんなら、その体つきも好きだ。顔も。
でも、一度も好きだって言った事はない。
「昨日、好きだなぁって…」
顔が赤い。
「え、昨日?」
本読んでる彼を眺めながら、心の声が漏れちまったか?
「あ、ご、ごめん…。キモイよな」
なんなら、外見だけでなく、お前が好きなんだよ。でもこの気持ちは伝える気はなかったんだ。
「キモイなんて思ってない。俺もお前の事好きだし」
掠れた声。セクシーに聞こえる。
ヤベっ、勃ちそう。
ん?
好き???
「好き?」
「うん、好き」
「どこが?」
「全部。トオルは俺のどこが好き?」
真っ直ぐ見てくる。
「声。それから、指、手、腕、肩の線、姿勢がいいのとか、とか、いっぱいある。その唇も…」
タケシみたいにスマートに言えばよかった。唇なんて言ったもんだから、視線が釘付けで……。
「トオルは…こういう事したい?」
いつもいいなぁと見てた顔が近づいてくる。
ちょ、ちょっとぉぉぉ!
唇がフワッと触れて、離れた。
ちょっとカサついた唇が、プチュっと触れて、離れちゃった。タケシの唇。
思わず追いそうになっちゃった。
そんな諸々で、カッと顔が熱くなる。
「どう?」
「は、初めて…の、キス」
「はい?」
「キス初めて。ーーーお前と出来て、嬉しい…」
オレ何言ってんだろ…。
「俺も初めて。もっとする?」
コクっと頷いた。
ゲーム音楽が流れる部屋で、唇が重なった。
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