ニートだった俺が異世界転生したけどジョブがやっぱりニートだった件

滝川 海老郎

文字の大きさ
10 / 28

10 上級ハイポーションを作ろう

しおりを挟む
 やってきました。ポルポルンボン錬金術工房、その本店。
 この町で一番由緒正しい大きな錬金術工房だ。

「あ、会長」
「会長、お疲れ様です」
「会長。これはこれは、おはようございます」

 さすがにエルフは目立つ。みんな挨拶してくれる。しかも腰を折った本格的なやつで。
 俺は若干、居心地悪いものの、テリア会長さんはずんずん中に入っていく。
 しょうがないので俺もそれに続く。

 そして店内を通過して、奥へ向かう。
 倉庫っぽいところへ入ったと思ったら、すぐに出てきて、今度は立派な扉がある工房のほうへ行くようだ。

「職人衆を集めてくださいな。上級ハイポーションを作りますから」
「はっ、はい。すぐに集めます」

 テリアが後を追ってきた店員のメイドさんに命令を出す。

 他にも作業部屋がいくつかあり、錬金術師たちは、分かれて作業している。
 それをこの立派な錬金部屋に集めるらしい。

 すぐにぞろぞろと集まってくる。

「最近、あまり出番もなく、上級ハイポーションを作る機会もありませんでしたが、今日は材料のほうが手に入るため、作りたいと思います。見学したい人はどうぞ」
「お願いします」
「よろしく、お願いします」
「見学、お願いします」

 一人も出ていかず、全員が見学していくようだった。
 研究熱心なのは、悪くない。みんな職人の顔をしている。

「それじゃあ、アラリン。ハイルン草、出してね」
「ほいほい」

 俺は偽装バッグ経由でアイテムボックスからハイルン草という高級薬草を出す。

「これがハイルン草……」

 誰からともなく、声が漏れる。
 あまりにも出回らないため、本職の錬金術師でも、見たことがない人も大勢いるということらしい。
 ちなみにアイテムボックスは時間停止があるので、これは4年前に収穫したやつで、ちょっと古い。
 村から誰かに渡して届けてもらうと三日は掛かり、その間に効果が著しく落ちて、意味がなくなる。

 ハイルン草は環境をものすごく選ぶ植物の上、生育が悪く、収穫まで5年は掛かる。非常に入手性が悪い。
 そのため、ハイルン草を材料にした上級ハイポーションは、ほとんど出回らない。
 またこっちも高価だけど中級ハイポーションとかでも、部位欠損ぐらいなら治るので、だいたいの用は中級ハイポーションで足りる。
 上級ハイポーションは、ほとんど死んでるような状態からも復活する、奇跡のポーションだけど、出番はあまりない。
 ほとんど死んでる状況だと、ポーションが届く前に死んじゃったりするから、使い勝手も悪いというね。

「今日は、特別サービスでございます。なんと今なら、ハイルン草が、合計五つございます」
「「「おおおぉ」」」

 思わず歓声が上がる。
 俺も思わず「今ならなんと半額でご提供」みたいに、テレフォンショッピングしたくなってくる。

 実をいえば全部で十株、持ってきているので、これでも半分しか出していない。
 いつも予備は持っておく。転ばぬ先の杖、石橋を叩いて渡る。
 普段は行き当たりばったりの俺だけど、そういう保険はしている。

「ハイルン草は見たことがあるが、こんなに大きい根っこは初めて見るな」

 年配の錬金術師がつぶやいた。

 ハイルン草は地球でいうなら、ワサビのようなもので、その根っこに効果がある。
 葉っぱにもないことはないが、初級ハイポーションくらいの効果だと思う。

 葉っぱは毎年生え変わり、根っこは5年を掛けて大きくなる。
 栄養が良すぎるような場所では、3年ぐらいで花が咲いて枯れてしまう。
 3年でも種は採れるがポーションにはならないので、ほぼ無価値だ。
 だから種は思ったよりは簡単に入手できた。

 育成法のヒントや情報を得るのには苦労した。
 畑ではなく、木漏れ日の差す森の中で綺麗な湧き水とコケが生えるような場所を好むと突き止めて、なんとか栽培を成功させた。
 ということで、都市であるナレリーナで育てるのは、無理そうだ。
 俺はニートで大変暇だったので、なんとか研究できた。
 この辺は林は多いが、深い森がない。

 さすがポルポルンボン錬金術工房だけはある、他の上級ハイポーションの原材料は揃っていた。
 ムラクロという猿型モンスターの土属性上級魔石。保存性は問題ないのだが、レア度がかなり高い。
 ラメキメラの肝の塩漬け。モンスターとしても強く入手難易度が高い。ただし生息地はわかっているので、倒して持ってくることができれば入手はできる。保存性は一年ぐらい。

 一通り材料を並べ、下処理を終わらせたテリアが俺のほうを向いて、うなずいた。

「では、精霊水を出すからね」

 これが一般人には無理難題の精霊水だ。

「水の精霊よ。我の元に。――テリア・ポルポルンボン、aues tour licre rai more becue」

 水の精霊から得る精霊水。
 すでに何を言っているか、わからない。
 エルフ語ですらなく、古代からの精霊語だとかなんとか。
 エルフや聖女クラスの人にしか成せない。精霊から直接、精霊の祝福した水を貰う。

 それが精霊水だ。

 普通に妖精とかに水を貰っても、それはただの非常に綺麗な水だったりする。

 山奥の綺麗な泉とかにも精霊がいることがあるので、そういう場所で貰うことも可能ではあるが、まあ、この辺ではまず無理だろう。
 せめてハーフエルフとかの同行も必要だと思う。

 そして、俺には概要ぐらいしかわからない、錬金釜を使った錬成を経て、ここに十本の上級ハイポーションが出来上がった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

処理中です...