9 / 17
第9話 ジャガイモ畑
しおりを挟む
ガルドからこの辺りではマイナーなジャガイモを購入した。
まず近くのシャーリア村では扱っておらず、その向こうにあるデデム町にもなかったため、取り寄せをすることになり一か月ぐらい掛かった。
俺たちは魔石がたくさんあるのでお金は思った以上に裕福だ。
それで馬車一個分、まるごと買い付けることを条件に入手に成功したのだ。
「で、これがジャガイモです」
「おお、よく持ってきてくれた」
「これで全部じゃないので、毎週、持ってきます」
「おう、そうしてくれ」
俺は冬支度を始めたのだ。
小麦粉があるので主食はなんとかなるが、ビタミンなどは不足しがちだった。
そこで目を付けたのがジャガイモだ。
細切りにして炒めたり、鍋で蒸かすだけでもいい。
そしてなんといっても、この土地でも栽培できそうなのが最高だった。
「みんなでジャガイモを植えるぞ」
「おおおおお」
ということでさっそくジャガイモを四分の一に切って、城壁の外を耕して、そこへ植えていく。
すぐ先は森だけど、洞窟の入口の周りは俺たちが歩くため、草地が広がっているのだ。
ナイフを先端に縛った木の棒や槍を使って土を耕した。
ナイフもさらに追加で購入して、何人かに一人は持っている。
「ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪」
新しいものが大好きなグレアが、適当な節をつけて歌う。
それを大人が真似してみんなで歌いながら畑仕事になった。
こうして俺たちは狩猟採集生活から半分は農耕生活へと進化を果たしたのだった。
さて、この森の崖には俺たち以外にもゴブリン一家が何軒か住んでいる。
それから他にも洞窟はあり、そこにはシルクスパイダーという大型のクモ型モンスターが生息していた。
「ということでシルクスパイダーと仲良くなりに行きます」
「おおおおお」
俺たちのパーティー五人が目星をつけてあった洞窟へと移動する。
「敵だと思われたら、俺たちが不利だから気を付けてね」
「お、おう」
「怖い」
「まあ、大丈夫、大丈夫」
貴族だったころにシルクスパイダーのことは文献で読んだことがある。
約二メートルの巨体なので、ゴブリンや人間すら食べるという噂があるが、実際にはそういうことは敵対しない限りは大丈夫らしい。
村ぐるみで飼ってスパイダーシルクを貰って特産品にしているところがあるのだと書かれていた。
あれからどうやら五十年ほど経過しているようだが、今も同じだろう。
洞窟は俺たちのルフガルよりかなり小さい。
入口も狭く、人が一人通れる程度だ。
「ごめんください」
もちろんシルクスパイダーは言葉を理解したりはしない。
一本道の洞窟の奥まで行くと、そこには巨大な黒いクモが巣を張っていた。
「オオカミ肉をお持ちしました。どうぞ」
肉を前に差し出す。
すると巣からクモが降りてきて、肉をぐるぐる巻きにして持っていく。
ものの数分でオオカミ肉はミイラのようになってしまった。
似たようなミイラの古いものをクモが足で器用に運び、こちらへ落としてきた。
「えっと、これを貰っていいってことですか?」
「……」
クモは応えてくれないが、たぶんそう言うことだろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、洞窟を出る。
手元には中身が食べられて空洞になったスパイダーシルクの塊が残された。
「これだけあれば、かなりの金額になるな」
「ゴブゴブ!」
スパイダーシルクはシルクの王様だ。
最高級の糸であり、これでドレスを作れば一財産であった。
前世の子爵家でも結婚式のときに一着作ったことがあるだけだ。
ゴブリンは陽気なので、みんなで踊りながらルフガルに戻る。
このぐるぐる巻きをメスに渡す。
あとはリーリアたちの仕事だった。
木の棒に、探り当てたスパイダーシルクの先端からぐるぐると巻いていく。
糸巻の作業だ。
「きゃっきゃ」
白い光沢のある糸が巻き取られていく。
グレアも最初は興味深そうに見ていたが、だんだん飽きて今は周りで遊んでいる。
スパイダーシルクの糸は本当に長く、どんどんと巻き取られていくが、終わりが見えない。
こうして巨大な糸巻がいくつもできあがっていく。
後日。ガルドが来訪したときにスパイダーシルクの糸巻を見せる。
「ふむ。とてもいい品に見えますね」
「だろ、スパイダーシルクだもん」
「そうですか。ちょっと値段が分からないので、後払いでもいいですか。町で売ってみます」
「後払いでいいから、頼んだよ」
「任された」
というふうな会話あって、ガルドの持ち帰りとなった。
結果は次来る時となった。
まず近くのシャーリア村では扱っておらず、その向こうにあるデデム町にもなかったため、取り寄せをすることになり一か月ぐらい掛かった。
俺たちは魔石がたくさんあるのでお金は思った以上に裕福だ。
それで馬車一個分、まるごと買い付けることを条件に入手に成功したのだ。
「で、これがジャガイモです」
「おお、よく持ってきてくれた」
「これで全部じゃないので、毎週、持ってきます」
「おう、そうしてくれ」
俺は冬支度を始めたのだ。
小麦粉があるので主食はなんとかなるが、ビタミンなどは不足しがちだった。
そこで目を付けたのがジャガイモだ。
細切りにして炒めたり、鍋で蒸かすだけでもいい。
そしてなんといっても、この土地でも栽培できそうなのが最高だった。
「みんなでジャガイモを植えるぞ」
「おおおおお」
ということでさっそくジャガイモを四分の一に切って、城壁の外を耕して、そこへ植えていく。
すぐ先は森だけど、洞窟の入口の周りは俺たちが歩くため、草地が広がっているのだ。
ナイフを先端に縛った木の棒や槍を使って土を耕した。
ナイフもさらに追加で購入して、何人かに一人は持っている。
「ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪ ジャガイモ~♪」
新しいものが大好きなグレアが、適当な節をつけて歌う。
それを大人が真似してみんなで歌いながら畑仕事になった。
こうして俺たちは狩猟採集生活から半分は農耕生活へと進化を果たしたのだった。
さて、この森の崖には俺たち以外にもゴブリン一家が何軒か住んでいる。
それから他にも洞窟はあり、そこにはシルクスパイダーという大型のクモ型モンスターが生息していた。
「ということでシルクスパイダーと仲良くなりに行きます」
「おおおおお」
俺たちのパーティー五人が目星をつけてあった洞窟へと移動する。
「敵だと思われたら、俺たちが不利だから気を付けてね」
「お、おう」
「怖い」
「まあ、大丈夫、大丈夫」
貴族だったころにシルクスパイダーのことは文献で読んだことがある。
約二メートルの巨体なので、ゴブリンや人間すら食べるという噂があるが、実際にはそういうことは敵対しない限りは大丈夫らしい。
村ぐるみで飼ってスパイダーシルクを貰って特産品にしているところがあるのだと書かれていた。
あれからどうやら五十年ほど経過しているようだが、今も同じだろう。
洞窟は俺たちのルフガルよりかなり小さい。
入口も狭く、人が一人通れる程度だ。
「ごめんください」
もちろんシルクスパイダーは言葉を理解したりはしない。
一本道の洞窟の奥まで行くと、そこには巨大な黒いクモが巣を張っていた。
「オオカミ肉をお持ちしました。どうぞ」
肉を前に差し出す。
すると巣からクモが降りてきて、肉をぐるぐる巻きにして持っていく。
ものの数分でオオカミ肉はミイラのようになってしまった。
似たようなミイラの古いものをクモが足で器用に運び、こちらへ落としてきた。
「えっと、これを貰っていいってことですか?」
「……」
クモは応えてくれないが、たぶんそう言うことだろう。
「ありがとうございます」
お礼を言って、洞窟を出る。
手元には中身が食べられて空洞になったスパイダーシルクの塊が残された。
「これだけあれば、かなりの金額になるな」
「ゴブゴブ!」
スパイダーシルクはシルクの王様だ。
最高級の糸であり、これでドレスを作れば一財産であった。
前世の子爵家でも結婚式のときに一着作ったことがあるだけだ。
ゴブリンは陽気なので、みんなで踊りながらルフガルに戻る。
このぐるぐる巻きをメスに渡す。
あとはリーリアたちの仕事だった。
木の棒に、探り当てたスパイダーシルクの先端からぐるぐると巻いていく。
糸巻の作業だ。
「きゃっきゃ」
白い光沢のある糸が巻き取られていく。
グレアも最初は興味深そうに見ていたが、だんだん飽きて今は周りで遊んでいる。
スパイダーシルクの糸は本当に長く、どんどんと巻き取られていくが、終わりが見えない。
こうして巨大な糸巻がいくつもできあがっていく。
後日。ガルドが来訪したときにスパイダーシルクの糸巻を見せる。
「ふむ。とてもいい品に見えますね」
「だろ、スパイダーシルクだもん」
「そうですか。ちょっと値段が分からないので、後払いでもいいですか。町で売ってみます」
「後払いでいいから、頼んだよ」
「任された」
というふうな会話あって、ガルドの持ち帰りとなった。
結果は次来る時となった。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる