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それからというもの。
数人の出資者が集まり、資金提供が行われた。
研究所がレシピを完成させ、材料の仕入先が決まった。
工場が試作を始め、新たな製造工場の建設も決定した。
そして一ヶ月が経った。
「『夜の生活において伴侶に何らかの不満を持つ夫婦は五百組中、約三割という結果』……由々しき事態だな」
ベルタはアウリスを横目に見た。
「本当にあれを売るつもりなの?」
「せっかく作ったのだから世に広めなければ。人の役に立つしな」
資料の陰で白皙の美貌がいたずらっぽく笑む。ベルタは黙ってカーテンを開けて朝日を浴びせた。
書斎はこの一ヶ月の間に少し様子を変えている。ベルタやメルヴィンの出入りが多くなったことを受け、机の前にソファセットが増えた。また、複雑化した数字の仕事で使う帳簿のために、鍵付きの保管棚も置かれた。
古城の人々の方は変わらない。多少忙しくはなったが、山場を無事越えたことで以前の落ち着きを取り戻しつつある。
「早くお水をあげに行きましょうよ」
「ああ」
二人は書斎を出て温室へ向かった。
魔法の薔薇は成長が早く、数日で満開となる。その分、普通の薔薇より多く水を必要とするようだ。そのため朝食の前に薔薇へ水をやるのは二人の日課になっていた。
ホールに入る前にアウリスが大きなじょうろに水を貯める。ガラスのドアを開けるのはベルタの役割だ。
だが、ノブに手をかけたところでベルタは目を見開いた。
切り落とされた白薔薇が床に散らばっている。
「ベルタ?」
声をかけられ、困惑のままに振り返ったのがいけなかった。
紫色の瞳が温室の中をさまよい、そして凍える。
「……ベルタ、どいてくれ」
そっと道を開けると、アウリスはじょうろを置いて温室へ飛び込んだ。
むごたらしい光景だった。満開の花ばかりが花柄から切り取られており、踏みつけられた痕跡もある。残る花も乱暴に扱われたのだろう、なびいたり花びらが落ちたりと荒れている。
アウリスの背中が屈み、床からその一輪を掬い取った。
「鋏で切られている」
ベルタも一歩中へ入り、ドアの横にあるフックを見た。いつもそこに掛けているはずの鋏が今日は床に落ちている。
普段、ここに出入りするのはベルタとアウリス、それとメルヴィンくらいだ。だが温室のドアに鍵はない。入ろうと思えば誰でも入れる。
それに人目の少ない古城だ。誰にも気づかれずに入ることなど、やろうと思えばいくらでもできるだろう。しかし、一体誰がそんなことをしたがるというのか。
「最後にここに来たのは昨日の夜、君のために薔薇を取りに来た時だった。だから切られたのは夜中の内だ。つまり……」
続きを聞くことは絶望的な審判を受けることに似ていた。
「つまり、やろうと思えばこの城の誰にでもできる」
「アウリス」
ベルタは無理やり笑顔を作った。
「この城の誰もそんなことはしないわ。だって、ずっと一緒に協力しあってきた人ばかりじゃない」
「……そうだな。確かにそうだ」
凍れる表情が多少和らぐ。
「とにかく、片付けて水をやろう」
「ええ」
床の薔薇は拾い集めて取っておき、二人は残る薔薇に水を与えた。
小さな蕾の薔薇は全くの無事だった。きっと小さすぎて犯人の視界にも入っていなかっただろう。
――犯人。
嫌な響きだ。心が鉛のように重たくなる。
アウリスの方は一見冷静に見えるが、その内心が穏やかであるはずはない。
「夜までにどれだけ咲くかによるが……どうしても満開のものは用意できないだろう。今夜の夢は精度が落ちそうだ」
「分かったわ」
こちらを伺う視線に、ベルタは重ねて頷く。
「大丈夫。あなたといれば平気だから」
「ベルタ……」
「本当よ。それより今日はお客様を迎える準備があるんだから、もうご飯を食べないと」
アウリスは何かを言いたそうにしていたが、ベルタは笑顔で押し切った。
客人はその日の昼前に古城へ到着した。遠い鉱山町からやってきた医師で、三ヶ月前アウリスに新製品の開発を相談した人物だ。
レーヌ社にとっては開発協力者に当たる。もてなしと慰労を兼ねた昼食会が開かれ、メルヴィンとコルトに加え、ベルタも伯爵夫人として出席した。
「あの冷湿布は町の皆の必需品になっておりますよ。うちもせっせと作る手間が省けて本当に楽になりました」
医師の礼にメルヴィンが返す。
「我が社もこの度の開発を功績にできて嬉しく思っております」
「にしては冷静なんですね。色々とご苦労がおありだったとお察しします」
「そうですね。結果として社の経営方針が素晴らしく変わりました」
「噂ではどうやらますますご発展なさる予定があられるとか。嬉しいことです。家庭用医薬品の分野はまだ進歩の余地がありますから」
コルトが深々と相槌を打った。
「ですよねぇ。私もそういう理想の元で働いているんですよ。金のない患者が医者に見捨てられたりぼったくられたりされない世の中に……おっと」
咎める視線は執事のものだ。コルトが笑ってごまかそうとすると、医師は首を振った。
「いえ、そのとおりだと思います……だからこそ伯爵はご立派な方ですよ」
「全ては多くの支えがあってこそできたことです」
アウリスに目を向けられた時、ベルタは茫洋とキッシュの切れ端をつついていた。
「ベルタ」
机の下で膝を叩かれ、ようやく我に返る。
「え? ……あ、そうね。皆の力があってこそでした」
会話の中心がよそへ移ると、アウリスは気遣わしげな目配せを送ってきた。ベルタは小さく首を振ったが、内心はもう察せられているのだろう。
無残に捨てられた白薔薇たちの光景が頭にちらつく。
(誰が、なんのために?)
犯人探しなど無駄なことだろうとは思う。今は再発を防ぐための対策をする時だろう。
温室のドアに鍵をつけるのだ。
「――これでいい」
無骨な錠前がかけられたガラスのドアを眺め、アウリスはため息をついた。
「鍵はベルタとメルヴィンにも渡しておく。一応、常に持っていてくれ」
「分かりました」
チェーンで繋がれたものを渡され、ベルタたちはそれぞれ首にかけたり内ポケットに収めたりした。アウリスも自分のものをベストの裏に隠す。
「こんなことになるとはな」
主人の落胆に、メルヴィンが眉間の皺を厳しくする。
「最近は配達人や研究員の出入りが増えましたから、以前と違い昼間の戸締まりは不完全です。考えにくくはありますが、どこかが開いている隙に侵入者があったのかもしれません」
「では昼間も定期的にドアの閉め忘れがないか確認してくれ。夜、灯りを落とす前には君と私の他数人で城内を見回るとしよう」
「かしこまりました。皆に連絡してまいります」
大股な靴音がホールから出ていく。アウリスはベルタへ向いた。
「今日はなるべく一人きりにはならないでいてくれ。分かったな?」
「ええ……アウリスもよ」
侵入者がまだ城に潜んでいる可能性がある。最も考えたくないことだが、ありえないことではなかった。
不安に駆られて胸へ縋りつく。アウリスはかたく抱きとめてくれた。
「大丈夫だ。こんなことを二度も起こす方が大変だからな」
「……そうね」
「さあ、部屋に戻って茶でも飲もう」
アウリスは笑ってベルタの肩を抱いた。
このことを事件として処理するつもりがないような態度を取っているのは、周囲を落ち着かせるためなのだろう。得意の演技だ。
だからこそ心配だった。
切られていたのは満開の薔薇だけ――つまり犯人は魔術師の実在を知っているのだ。
数人の出資者が集まり、資金提供が行われた。
研究所がレシピを完成させ、材料の仕入先が決まった。
工場が試作を始め、新たな製造工場の建設も決定した。
そして一ヶ月が経った。
「『夜の生活において伴侶に何らかの不満を持つ夫婦は五百組中、約三割という結果』……由々しき事態だな」
ベルタはアウリスを横目に見た。
「本当にあれを売るつもりなの?」
「せっかく作ったのだから世に広めなければ。人の役に立つしな」
資料の陰で白皙の美貌がいたずらっぽく笑む。ベルタは黙ってカーテンを開けて朝日を浴びせた。
書斎はこの一ヶ月の間に少し様子を変えている。ベルタやメルヴィンの出入りが多くなったことを受け、机の前にソファセットが増えた。また、複雑化した数字の仕事で使う帳簿のために、鍵付きの保管棚も置かれた。
古城の人々の方は変わらない。多少忙しくはなったが、山場を無事越えたことで以前の落ち着きを取り戻しつつある。
「早くお水をあげに行きましょうよ」
「ああ」
二人は書斎を出て温室へ向かった。
魔法の薔薇は成長が早く、数日で満開となる。その分、普通の薔薇より多く水を必要とするようだ。そのため朝食の前に薔薇へ水をやるのは二人の日課になっていた。
ホールに入る前にアウリスが大きなじょうろに水を貯める。ガラスのドアを開けるのはベルタの役割だ。
だが、ノブに手をかけたところでベルタは目を見開いた。
切り落とされた白薔薇が床に散らばっている。
「ベルタ?」
声をかけられ、困惑のままに振り返ったのがいけなかった。
紫色の瞳が温室の中をさまよい、そして凍える。
「……ベルタ、どいてくれ」
そっと道を開けると、アウリスはじょうろを置いて温室へ飛び込んだ。
むごたらしい光景だった。満開の花ばかりが花柄から切り取られており、踏みつけられた痕跡もある。残る花も乱暴に扱われたのだろう、なびいたり花びらが落ちたりと荒れている。
アウリスの背中が屈み、床からその一輪を掬い取った。
「鋏で切られている」
ベルタも一歩中へ入り、ドアの横にあるフックを見た。いつもそこに掛けているはずの鋏が今日は床に落ちている。
普段、ここに出入りするのはベルタとアウリス、それとメルヴィンくらいだ。だが温室のドアに鍵はない。入ろうと思えば誰でも入れる。
それに人目の少ない古城だ。誰にも気づかれずに入ることなど、やろうと思えばいくらでもできるだろう。しかし、一体誰がそんなことをしたがるというのか。
「最後にここに来たのは昨日の夜、君のために薔薇を取りに来た時だった。だから切られたのは夜中の内だ。つまり……」
続きを聞くことは絶望的な審判を受けることに似ていた。
「つまり、やろうと思えばこの城の誰にでもできる」
「アウリス」
ベルタは無理やり笑顔を作った。
「この城の誰もそんなことはしないわ。だって、ずっと一緒に協力しあってきた人ばかりじゃない」
「……そうだな。確かにそうだ」
凍れる表情が多少和らぐ。
「とにかく、片付けて水をやろう」
「ええ」
床の薔薇は拾い集めて取っておき、二人は残る薔薇に水を与えた。
小さな蕾の薔薇は全くの無事だった。きっと小さすぎて犯人の視界にも入っていなかっただろう。
――犯人。
嫌な響きだ。心が鉛のように重たくなる。
アウリスの方は一見冷静に見えるが、その内心が穏やかであるはずはない。
「夜までにどれだけ咲くかによるが……どうしても満開のものは用意できないだろう。今夜の夢は精度が落ちそうだ」
「分かったわ」
こちらを伺う視線に、ベルタは重ねて頷く。
「大丈夫。あなたといれば平気だから」
「ベルタ……」
「本当よ。それより今日はお客様を迎える準備があるんだから、もうご飯を食べないと」
アウリスは何かを言いたそうにしていたが、ベルタは笑顔で押し切った。
客人はその日の昼前に古城へ到着した。遠い鉱山町からやってきた医師で、三ヶ月前アウリスに新製品の開発を相談した人物だ。
レーヌ社にとっては開発協力者に当たる。もてなしと慰労を兼ねた昼食会が開かれ、メルヴィンとコルトに加え、ベルタも伯爵夫人として出席した。
「あの冷湿布は町の皆の必需品になっておりますよ。うちもせっせと作る手間が省けて本当に楽になりました」
医師の礼にメルヴィンが返す。
「我が社もこの度の開発を功績にできて嬉しく思っております」
「にしては冷静なんですね。色々とご苦労がおありだったとお察しします」
「そうですね。結果として社の経営方針が素晴らしく変わりました」
「噂ではどうやらますますご発展なさる予定があられるとか。嬉しいことです。家庭用医薬品の分野はまだ進歩の余地がありますから」
コルトが深々と相槌を打った。
「ですよねぇ。私もそういう理想の元で働いているんですよ。金のない患者が医者に見捨てられたりぼったくられたりされない世の中に……おっと」
咎める視線は執事のものだ。コルトが笑ってごまかそうとすると、医師は首を振った。
「いえ、そのとおりだと思います……だからこそ伯爵はご立派な方ですよ」
「全ては多くの支えがあってこそできたことです」
アウリスに目を向けられた時、ベルタは茫洋とキッシュの切れ端をつついていた。
「ベルタ」
机の下で膝を叩かれ、ようやく我に返る。
「え? ……あ、そうね。皆の力があってこそでした」
会話の中心がよそへ移ると、アウリスは気遣わしげな目配せを送ってきた。ベルタは小さく首を振ったが、内心はもう察せられているのだろう。
無残に捨てられた白薔薇たちの光景が頭にちらつく。
(誰が、なんのために?)
犯人探しなど無駄なことだろうとは思う。今は再発を防ぐための対策をする時だろう。
温室のドアに鍵をつけるのだ。
「――これでいい」
無骨な錠前がかけられたガラスのドアを眺め、アウリスはため息をついた。
「鍵はベルタとメルヴィンにも渡しておく。一応、常に持っていてくれ」
「分かりました」
チェーンで繋がれたものを渡され、ベルタたちはそれぞれ首にかけたり内ポケットに収めたりした。アウリスも自分のものをベストの裏に隠す。
「こんなことになるとはな」
主人の落胆に、メルヴィンが眉間の皺を厳しくする。
「最近は配達人や研究員の出入りが増えましたから、以前と違い昼間の戸締まりは不完全です。考えにくくはありますが、どこかが開いている隙に侵入者があったのかもしれません」
「では昼間も定期的にドアの閉め忘れがないか確認してくれ。夜、灯りを落とす前には君と私の他数人で城内を見回るとしよう」
「かしこまりました。皆に連絡してまいります」
大股な靴音がホールから出ていく。アウリスはベルタへ向いた。
「今日はなるべく一人きりにはならないでいてくれ。分かったな?」
「ええ……アウリスもよ」
侵入者がまだ城に潜んでいる可能性がある。最も考えたくないことだが、ありえないことではなかった。
不安に駆られて胸へ縋りつく。アウリスはかたく抱きとめてくれた。
「大丈夫だ。こんなことを二度も起こす方が大変だからな」
「……そうね」
「さあ、部屋に戻って茶でも飲もう」
アウリスは笑ってベルタの肩を抱いた。
このことを事件として処理するつもりがないような態度を取っているのは、周囲を落ち着かせるためなのだろう。得意の演技だ。
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