44 / 47
42
しおりを挟む
パトリック・シムノンは書斎の窓から遠くの空を見た。
林の向こうに一筋の煙が薄っすらと立ち上っている。狼煙だ。分隊がアラステアを捕らえたという報告を受けたのはつい先程のことだった。
扉が叩かれ、シムノン司祭は振り返る。
「どうぞ」
入ってきた聖騎士は緊張の面持ちで報告した。
「ベルタを捕らえました」
「ええ。ここから見ました」
司祭は万感のこもるため息をつき、机の上から十字架を取り上げた。
年季の入った金色の十字架は、十分な手入れのおかげで清廉な輝きを放っている。司祭はそれを真っ白な祭服の胸へかけた。
「始めましょう」
ベルタは坂を登りきったところで馬から降ろされた。
城門は様変わりしていた。聖騎士団の旗が掲げられた下には、これ見よがしに武器が立てかけられている。見張りの騎士も物々しい格好だ。
「ここで待て」
トウ隊長はベルタの背後に立った。見えない威圧感が背中をじりじりと焼くようだ。
勝手なものだ。城を占領した挙げ句、好きなように飾り付けて、おまけに住人を締め出すなんて。
やがて扉が開いて司祭が姿を現す。相変わらずの爽やかな面構えを見たら余計に怒りが募った。
「お帰りなさい、ベルタさん。いえ、奥様とお呼びすべきですね。貴方はまだ未亡人ではありませんから」
「それが本性なのね」
司祭は目元を三日月の形にして笑った。
「この間のお返しですよ。それにしても、どちらへ行かれていたんですか? 奥様がいないせいで随分退屈していたんですよ」
「アウリスがいたじゃない」
「彼とは三日話してません。私を無視することに決めたみたいです」
口の端に意地の悪さが滲んでいる。ぞっとするほどの変わり身だ。
「それより、ここで時間を潰していていいのかしら? 予定があるんでしょう?」
司祭が首をかしげる。
「国王陛下主催のお茶会よ。その案内のためにあなたはここへ来たのでしょう、忘れたの?」
「おや……こちらこそ、お二人とも忘れてしまっているのかと心配していたところです」
「忘れてなんてないわ。わたしはそのために準備していたんだもの」
「さようですか?」
「そうよ。だからあとはアウリスの潔白を証明するだけ」
司祭の青い瞳は完璧に冷静だった。
「何の話です?」
「もうとぼけなくていいわ。あなたはアウリスが魔術師だと疑っているんでしょう? 魔術師の家系の一人で、身内に呪われたせいでこの城から出られないんだって。お茶会を断ったのはそのせいだって考えているのでしょう」
返事はない。ベルタは構わず続ける。
「全部あなたの妄想よ。魔法なんてないし、魔術師の一族なんて存在しないの。だからアウリスはこの城から出られる。証明できるわ」
「はぁ」
はじめこそ気のないふりをしていた司祭だったが、こらえきれなくなったのか、とうとうおかしそうに笑いだした。
「……面白いですね。そんな口上のために夫婦ふたりで知恵を絞ったわけですか。アウリスは囮に、貴方はアラステアの協力を取り付けに。確かに私は見事に出し抜かれました」
「…………」
「でも無駄ですよ。城から出られたとて、待っているのはお茶会じゃありません。審問です」
「……!」
審問――過去、実際に行われていたことは拷問だったという。あくまで過去の話だが、今の司祭を見るに何かを用意していてもおかしくない。
ベルタの表情がこわばる手前、司祭は両手を広げる。
「まあ、ここで多少なりとも何かを証明できるというなら、それに越したことはありませんね。言っておきますが、私には貴方の言い分を聞くことに何の義理もないのですよ」
「……御慈悲に感謝するわ」
好ましい微笑みを見せた後、司祭は両開きの正面扉を両腕で押しのけた。
「貴方に神の御加護がありますように」
司祭が背後へ合図を送って退くと、玄関ホールに朝日が差し込んだ。扉の形に光が伸びた先に見慣れた姿を見つける。
「アウリス……!」
思わず一歩踏み出すと、トウ隊長がすかさず腕をつかんできた。
ベルタはアウリスの姿に目を凝らした。項垂れて立ちすくんでいるのだろうか。いや、それにしてはおかしい。
よく見るとアウリスの身は台と棒の簡素な仕組みに張り付いている。縛り付けられているのだと分かったのは、聖騎士が後ろ手の拘束を切った直後、その細身が膝から崩折れた時だった。
アウリスは聖騎士らに両脇を抱えられても自ら歩こうとしなかった。扉の前まで引きずられてくると、聖騎士らが支えるのをやめた途端、重力に従って床に体を叩きつける。そしてぴくりとも動かない。
ベルタは自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。
「アウリス……?」
背中を凝視しても息をしている確信が持てない。痛めつけられた跡はないようだ。だがあんなに痩せていただろうか。
銀色の頭の横へ靴が並ぶ。司祭が身をかがめて言う。
「これが最後の機会ですよ」
ベルタの視界が滲んだ。
「アウリス、こっちを見て!」
夫は微動だにしない。
ベルタはトウ隊長を振り切ろうとしたが、横から飛び出してきた鋭い光が喉元に当たり、腕を下ろした。
剣だ。冷たい切っ先が肌に食い込んでいるのが分かる。
「……っアウリス……!」
恐怖で声がか細くなる。悔しいのに、どうしてもその場から動けない。
司祭が身を起こした。
「慈悲をかけても、かけなくても何も変わらない。興味深いことです」
十字架を握り、足元を見下ろす。
「やはり神の罰は絶対なのですね。私たちの使命は……」
瞑目の後、青い瞳が振り返った。
「その魔女を斬りなさい」
ベルタは両腕を背中で一絡げにされ、跪かされた。耳元で風が鳴ったのは、トウ隊長が剣を逆手に握り直したからだろう。
「お……お願い」
全身がぶるぶると震える。目の前が白黒していて、全然力が入らない。
背中に力が伸し掛かってきた。前傾姿勢を取らされ、刃が振りかぶられたのを感じる。
(これで終わるなんて――そんなはずない)
ベルタは顔を上げ、大きく息を吸って叫んだ。
「――アウリス、助けてっ!」
涙が頬をこぼれ落ちた。
一瞬止まったように感じられた時が一秒、また一秒と経ったが、ベルタはまだ生きていた。知らない間に閉じていた目を開けてみて、驚きのあまり何度か瞬く。
「あ……」
アウリスが床から身を起こしている。そばにいた司祭を支えに使いながら片膝を突き、片脚を立てる。そして両足で立ち上がる。
司祭の肩から手を離した後の歩みは今にも倒れそうなほど覚束なかった。乱れた髪に視界が埋もれているが、それを払う力はありそうにない。気力だけで前へ、光の方へと進んでいる。
その脚が走り出した。
ベルタは全力で拘束を押しのけ立ち上がった。両腕を広げて一歩踏み出した瞬間、どこかから薔薇の香りがした。
「撃てーッ!」
その時、城門に控えていた聖騎士がアウリスの背めがけて撃ったクロスボウのボルトは、二人を避けるように不自然に軌道を曲げた。
その時、アウリスに抱きつかれて姿勢を崩したベルタの鞄から薄桃色の薔薇が飛び出して宙を舞った。
ボルトは軌道上に飛び出してきた薔薇を散らすと、あらぬ方向へ飛んでいく。
ベルタは力なく覆いかぶさってきたアウリスを受け止めようとしたが、もがけばもがくほど体格の差を知るだけだった。仲良く地面に倒れ込んだ後、すぐに痩せた体の下から這い出し仰向けにする。
「アウリス!」
銀髪を払いのけるが、茫洋とした瞳はこちらを見てくれない。ただ太陽の光を浴びて、宝石のように輝いている。
「空、だ」
乾いた唇が呟き、帳のように瞼が下りた。
林の向こうに一筋の煙が薄っすらと立ち上っている。狼煙だ。分隊がアラステアを捕らえたという報告を受けたのはつい先程のことだった。
扉が叩かれ、シムノン司祭は振り返る。
「どうぞ」
入ってきた聖騎士は緊張の面持ちで報告した。
「ベルタを捕らえました」
「ええ。ここから見ました」
司祭は万感のこもるため息をつき、机の上から十字架を取り上げた。
年季の入った金色の十字架は、十分な手入れのおかげで清廉な輝きを放っている。司祭はそれを真っ白な祭服の胸へかけた。
「始めましょう」
ベルタは坂を登りきったところで馬から降ろされた。
城門は様変わりしていた。聖騎士団の旗が掲げられた下には、これ見よがしに武器が立てかけられている。見張りの騎士も物々しい格好だ。
「ここで待て」
トウ隊長はベルタの背後に立った。見えない威圧感が背中をじりじりと焼くようだ。
勝手なものだ。城を占領した挙げ句、好きなように飾り付けて、おまけに住人を締め出すなんて。
やがて扉が開いて司祭が姿を現す。相変わらずの爽やかな面構えを見たら余計に怒りが募った。
「お帰りなさい、ベルタさん。いえ、奥様とお呼びすべきですね。貴方はまだ未亡人ではありませんから」
「それが本性なのね」
司祭は目元を三日月の形にして笑った。
「この間のお返しですよ。それにしても、どちらへ行かれていたんですか? 奥様がいないせいで随分退屈していたんですよ」
「アウリスがいたじゃない」
「彼とは三日話してません。私を無視することに決めたみたいです」
口の端に意地の悪さが滲んでいる。ぞっとするほどの変わり身だ。
「それより、ここで時間を潰していていいのかしら? 予定があるんでしょう?」
司祭が首をかしげる。
「国王陛下主催のお茶会よ。その案内のためにあなたはここへ来たのでしょう、忘れたの?」
「おや……こちらこそ、お二人とも忘れてしまっているのかと心配していたところです」
「忘れてなんてないわ。わたしはそのために準備していたんだもの」
「さようですか?」
「そうよ。だからあとはアウリスの潔白を証明するだけ」
司祭の青い瞳は完璧に冷静だった。
「何の話です?」
「もうとぼけなくていいわ。あなたはアウリスが魔術師だと疑っているんでしょう? 魔術師の家系の一人で、身内に呪われたせいでこの城から出られないんだって。お茶会を断ったのはそのせいだって考えているのでしょう」
返事はない。ベルタは構わず続ける。
「全部あなたの妄想よ。魔法なんてないし、魔術師の一族なんて存在しないの。だからアウリスはこの城から出られる。証明できるわ」
「はぁ」
はじめこそ気のないふりをしていた司祭だったが、こらえきれなくなったのか、とうとうおかしそうに笑いだした。
「……面白いですね。そんな口上のために夫婦ふたりで知恵を絞ったわけですか。アウリスは囮に、貴方はアラステアの協力を取り付けに。確かに私は見事に出し抜かれました」
「…………」
「でも無駄ですよ。城から出られたとて、待っているのはお茶会じゃありません。審問です」
「……!」
審問――過去、実際に行われていたことは拷問だったという。あくまで過去の話だが、今の司祭を見るに何かを用意していてもおかしくない。
ベルタの表情がこわばる手前、司祭は両手を広げる。
「まあ、ここで多少なりとも何かを証明できるというなら、それに越したことはありませんね。言っておきますが、私には貴方の言い分を聞くことに何の義理もないのですよ」
「……御慈悲に感謝するわ」
好ましい微笑みを見せた後、司祭は両開きの正面扉を両腕で押しのけた。
「貴方に神の御加護がありますように」
司祭が背後へ合図を送って退くと、玄関ホールに朝日が差し込んだ。扉の形に光が伸びた先に見慣れた姿を見つける。
「アウリス……!」
思わず一歩踏み出すと、トウ隊長がすかさず腕をつかんできた。
ベルタはアウリスの姿に目を凝らした。項垂れて立ちすくんでいるのだろうか。いや、それにしてはおかしい。
よく見るとアウリスの身は台と棒の簡素な仕組みに張り付いている。縛り付けられているのだと分かったのは、聖騎士が後ろ手の拘束を切った直後、その細身が膝から崩折れた時だった。
アウリスは聖騎士らに両脇を抱えられても自ら歩こうとしなかった。扉の前まで引きずられてくると、聖騎士らが支えるのをやめた途端、重力に従って床に体を叩きつける。そしてぴくりとも動かない。
ベルタは自分の顔から血の気が引いていくのを感じた。
「アウリス……?」
背中を凝視しても息をしている確信が持てない。痛めつけられた跡はないようだ。だがあんなに痩せていただろうか。
銀色の頭の横へ靴が並ぶ。司祭が身をかがめて言う。
「これが最後の機会ですよ」
ベルタの視界が滲んだ。
「アウリス、こっちを見て!」
夫は微動だにしない。
ベルタはトウ隊長を振り切ろうとしたが、横から飛び出してきた鋭い光が喉元に当たり、腕を下ろした。
剣だ。冷たい切っ先が肌に食い込んでいるのが分かる。
「……っアウリス……!」
恐怖で声がか細くなる。悔しいのに、どうしてもその場から動けない。
司祭が身を起こした。
「慈悲をかけても、かけなくても何も変わらない。興味深いことです」
十字架を握り、足元を見下ろす。
「やはり神の罰は絶対なのですね。私たちの使命は……」
瞑目の後、青い瞳が振り返った。
「その魔女を斬りなさい」
ベルタは両腕を背中で一絡げにされ、跪かされた。耳元で風が鳴ったのは、トウ隊長が剣を逆手に握り直したからだろう。
「お……お願い」
全身がぶるぶると震える。目の前が白黒していて、全然力が入らない。
背中に力が伸し掛かってきた。前傾姿勢を取らされ、刃が振りかぶられたのを感じる。
(これで終わるなんて――そんなはずない)
ベルタは顔を上げ、大きく息を吸って叫んだ。
「――アウリス、助けてっ!」
涙が頬をこぼれ落ちた。
一瞬止まったように感じられた時が一秒、また一秒と経ったが、ベルタはまだ生きていた。知らない間に閉じていた目を開けてみて、驚きのあまり何度か瞬く。
「あ……」
アウリスが床から身を起こしている。そばにいた司祭を支えに使いながら片膝を突き、片脚を立てる。そして両足で立ち上がる。
司祭の肩から手を離した後の歩みは今にも倒れそうなほど覚束なかった。乱れた髪に視界が埋もれているが、それを払う力はありそうにない。気力だけで前へ、光の方へと進んでいる。
その脚が走り出した。
ベルタは全力で拘束を押しのけ立ち上がった。両腕を広げて一歩踏み出した瞬間、どこかから薔薇の香りがした。
「撃てーッ!」
その時、城門に控えていた聖騎士がアウリスの背めがけて撃ったクロスボウのボルトは、二人を避けるように不自然に軌道を曲げた。
その時、アウリスに抱きつかれて姿勢を崩したベルタの鞄から薄桃色の薔薇が飛び出して宙を舞った。
ボルトは軌道上に飛び出してきた薔薇を散らすと、あらぬ方向へ飛んでいく。
ベルタは力なく覆いかぶさってきたアウリスを受け止めようとしたが、もがけばもがくほど体格の差を知るだけだった。仲良く地面に倒れ込んだ後、すぐに痩せた体の下から這い出し仰向けにする。
「アウリス!」
銀髪を払いのけるが、茫洋とした瞳はこちらを見てくれない。ただ太陽の光を浴びて、宝石のように輝いている。
「空、だ」
乾いた唇が呟き、帳のように瞼が下りた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
俺様御曹司は十二歳年上妻に生涯の愛を誓う
ラヴ KAZU
恋愛
藤城美希 三十八歳独身
大学卒業後入社した鏑木建設会社で16年間経理部にて勤めている。
会社では若い女性社員に囲まれて、お局様状態。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな美希の前に現れたのが、俺様御曹司鏑木蓮
「明日から俺の秘書な、よろしく」
経理部の美希は蓮の秘書を命じられた。
鏑木 蓮 二十六歳独身
鏑木建設会社社長 バイク事故を起こし美希に命を救われる。
親の脛をかじって生きてきた蓮はこの出来事で人生が大きく動き出す。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は事あるごとに愛を囁き溺愛が始まる。
蓮の言うことが信じられなかった美希の気持ちに変化が......
望月 楓 二十六歳独身
蓮とは大学の時からの付き合いで、かれこれ八年になる。
密かに美希に惚れていた。
蓮と違い、奨学金で大学へ行き、実家は農家をしており苦労して育った。
蓮を忘れさせる為に麗子に近づいた。
「麗子、俺を好きになれ」
美希への気持ちが冷めぬまま麗子と結婚したが、徐々に麗子への気持ちに変化が現れる。
面倒見の良い頼れる存在である。
藤城美希は三十八歳独身。大学卒業後、入社した会社で十六年間経理部で働いている。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな時、俺様御曹司鏑木蓮二十六歳が現れた。
社長就任挨拶の日、美希に「明日から俺の秘書なよろしく」と告げた。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は美希に愛を囁く
実は蓮と美希は初対面ではない、その事実に美希は気づかなかった。
そして蓮は美希に驚きの事を言う、それは......
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
姉の婚約者の公爵令息は、この関係を終わらせない
七転び八起き
恋愛
伯爵令嬢のユミリアと、姉の婚約者の公爵令息カリウスの禁断のラブロマンス。
主人公のユミリアは、友人のソフィアと行った秘密の夜会で、姉の婚約者のカウリスと再会する。
カウリスの秘密を知ったユミリアは、だんだんと彼に日常を侵食され始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる