後悔 「あるゲイの回想」短編集

ryuuza

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第2話 「大学の先輩」

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田舎から大学に通うために上京した僕は、高校時代に好きになったノンケの同級生の面影を引きずってテニス部に入部した。
なぜなら、高校時代、片思いだったノンケの彼がテニス部だったから、もしかしてテニスを覚えれば、将来、彼と一緒にテニスをする機会があるかもしれないと言う下心からだった。
中学、高校と吹奏楽部だった僕にとって、初めての体育会系の部活だった。
大体、運動神経ゼロの僕である。
初心者歓迎と誘い文句に書いてあるものの、冷静に考えれば無理な話だった。

内気な僕は、テニス部でも、同期の部員の男(もちろんノンケ)にも、可愛いと言って大切にされていた。
そう言えば同じ学部内の同級生にも、可愛いと言って寄ってきた男がいた。
その男はタイプでもなかったし、普通の友達になった。

別の同級生は、上京して間もない僕が、何事につけてもおどおどしているのを見て「お前、もうちょっと堂々としろよ、かっこいいんだからさ」と言ってくれた。
僕って、東京の人には可愛いとか、かっこいいって思ってもらえるのかな?と当時、自分に全く自信がなかった僕は不思議な感じがした。

そんな思ってもいないことをと思われるかもしれないが、当時の僕は本当にそう思っていた。
実際、高校時代の僕の友達は、可愛い、かっこいいやつが多く、僕は一番目立っていなくて、そう言う経験をしたことがなかったのも原因だったかもしれない。
そうでなくても、10代の頃って、みんな、自分に何かしらのコンプレックスを持っていて、自分の良さを認識していない人が多いと思う。

そんな僕は、テニス部に入ったものの、練習しても上手くいかず、怒られることも多く、あまり面白いとも思わなかったし、やる気がある訳でもなかった。
ただ、高校時代の片思いの男が忘れられないで入っただけの部活だったから。

でも、テニス部の先輩は、なかなかいい男が揃っていた。
その中でも1年上のK先輩は、特に僕のタイプだった。
テニス部では、夏休みに合宿があった。

6月下旬、憧れのK先輩が僕のところに来て

「おい、お前、見たところ毛が薄そうだけど、腿に毛が生えているか?」

と変なことを聞かれた。

「いや、毛は殆どありません」

と僕が答えると

「そうだと思った。
合宿の夜は楽しみにしとけよ。
俺も毛が薄いんだ。
毛が薄い同士、擦り合わせると気持ちいいんだよな。
いや楽しみだな」

と、訳が分からないことを言われた。
K先輩は、僕の頭を撫でて去っていったが、何のこと?とさっぱり分からなかった。
今考えると、K先輩はバイか、又は男同士でも、気持ち良いことができると思っていたのか、どっちかだったと思う。

ところが僕は7月、夏休みが始まる前に、テニス部をやめてしまった。
元々運動神経が良い訳でもないし、根っからの文科系の僕には、体育会系の部活はきつかったし、合宿も重荷だった。
それに、もう高校時代の初恋の相手を心の中で追い求めるのは、やめにしようと決心したのが大きかったと思う。

結局、同期の部員や、何名かの先輩に引き留められた(僕が惜しいのではなく、部員が少なかったから)けど、結果的には退部した。
この判断自体は今考えても仕方なかったと思う。
人には向き不向きがある。
僕には体育会系の部活は所詮無理だった。

でももし、合宿までテニス部にいたら、K先輩に夜、いたずらされていたかもしれない。
それは、男性経験ゼロだった僕には忘れられない良い思い出になったかもしれない。
それから後も、何かしらの進展も望めたかもしれない。

そう思うと、K先輩のことを思い出して、合宿行った方が良かったかなと、今更ながら後悔する僕だった。
K先輩、カッコ良かったもの。
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