後悔 「あるゲイの回想」短編集

ryuuza

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第6話 「初めての男(前半)」

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ゲイ友Kに初めて連れて行ってもらった新宿二丁目。
遊び人のKは毎週土曜日、僕を誘った。
その時、ああ、もう会わなくなった高校時代のゲイのもう一人の友達とKも一緒だと感じた。
Kは自分の引き立て役に僕を連れて行っているんだと。
実際、Kと一緒にいると彼ばかりに声がかかった。
その度僕は一人ぼっちになった。
それでも初めて知ったゲイの世界は僕には魅力的だった。

「ここにいる人、みんな僕と同じゲイなんだ」

そう思うだけで、日常の疎外感から解放された。

それでも僕は最近のLGBTには嫌悪感を持っている。
あれは多分に行き過ぎで、政治的だ。
同性愛者が正常だとは当事者である僕も思っていない。
同性愛者の権利がどうとかバカじゃないのと思う。
ある政治家が「同性愛者は生産性がない」と言って叩かれていたが、僕はその通りだと思う。
だって同性愛者から子供は生まれないもの。
同性愛は気持ち悪いと発言しても叩かれる。
面と向かって言われれば別だが、一般的にそう言われても普通の人にとってはさもあらんと思う。
ゲイもレズも日陰の身で十分だ。
その方が都合が良いことだってたくさんある。
ゲイの世界は本来、もっとドロドロしたものだ。
最近はやりのBLは女性が作り出した偶像だ。
悪いけど現実とはかけ離れている。
でもLGBTに比べればBLはまだ表現の自由の範囲内だとは思う。

もちろん、僕が新宿二丁目に行き始めた頃は、LGBTやBLなんてなかった。
ゲイやレズはいたが、そんな言葉も概念もなかった。

土曜日ごとにKと一緒に新宿二丁目に行くようになって1か月くらい経った頃だろうか。
一人の男が僕に声を掛けてきた。

『一緒に踊らない?』

いつも店の隅っこでぼうっと立ってるだけだった僕が、その男に手を引かれて初めて店の中央に行った。
踊り方もよく分からなかったが見よう見まねで体を動かした。

『名前は何て言うの?』

「Tです」

『T君はいくつ?』

「20歳です」

『僕は君のことがとてもタイプなんだけど、君は僕をどう思う?』

正直、かっこ可愛い人だなあとは思ったけど、よく分からなかった。

『今夜、君と一緒にいたいんだけど、どう?』

もう胸がドキドキして何が何だかって感じになった。

「友達と帰らなきゃいけない」

とっさに僕はそう答えた。

『じゃ、君の電話番号教えてくれる?』

僕は、電話番号だけ教えた。
そして友達Kと一緒に家に帰った。

Kが僕に

「あの人、確か30歳過ぎてるはずだよ」

と僕に教えてくれた。
そんなに歳なんだ。そうは見えないなあと僕は思った。

次の日の夜、彼は電話をかけてきた。

『今からT君の家に行っちゃだめ?』

「あ、友達がいるから」

『会うだけでいいから』

そう言われて僕はOKし、住所を教えた。

彼の名前はH。横浜の三ツ境と言うところに住んでいた。
僕は埼玉県の所沢市に住んでいた。
かなり距離があったが、Hは車を飛ばして僕に会いに来てくれた。

部屋には友達のKがいるので、彼の車の中で話をした。

Hは僕を二丁目の店で見かけて、一目で好きになったと言ってくれた。
Hの車の助手席に座っていた僕は心臓バクバク状態だった。
いきなりHが僕にキスをした。
20歳にもなってと思うだろうが、僕にとって生まれて初めてのキスだった。
長い長いキスだった。
Hは慣れているのか、舌を僕の口の中に入れて絡めてきた。
キスってこんなに興奮するんだと驚きだった。
もっと驚きだったのは、僕のチンポがもうビンビンに勃ってしまって、キスされただけでイキそうだった。
長いキスをされて、自然と僕の目から涙が出てきた。

Hは「どうして泣くの?」と聞いた。

僕は「生まれて初めてのキスだから」

と答えた。

Hは、思い切り僕を抱きしめてくれた。

Hはこの時32歳。僕より12歳も年上だった。
でも僕にとっては生まれて初めて面と向かって「好きだ」と言ってくれた男だった。
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