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結託された

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本来、杖爺の声が聞けるのは聖女に選ばれた者だけ。
だが、間違いなくアルフレードと杖爺は会話が成り立っていた。

私の言葉で初めて杖爺の声が聞こえている事に気づいたアルフレードは「まさか……そんな……」と驚きを隠せていない。
かたや杖爺はあまり驚いていない様子。

『──恐らく、お主への怒りが互いに同調したのじゃろう。こんな事、何百年と生きてきた中で初めてじゃ』

杖爺は呆れたように溜息を吐いているが、ある意味凄い発見なんじゃないの?
聖女以外にも杖爺と話せる人が出来たんだよ?
そのきっかけを作ってあげたんだから感謝して欲しいよねぇ。

『──ともあれ、いつまで儂の声が小僧に届くかは分からん。数分後には聞こえんくなるやもしれんし、何日も聞こえるのかもしれん』

なるほど、一時的なものなのね。
まあ、そうだよね。今回のは単なる事故だもんね。

「では、杖殿の声が聞こえるのは今だけかも知らぬと言うことか。ならば一つ聞きたいことがある」
『なんじゃ?』
「目の前のこいつは本当に聖女なのか?」

アルフレードはド直球で杖爺に尋ねた。
いや、まあ、聞かれるんじゃないかなぁ?とは思ってた。
けどこれは私からしたら渡りに船!!
杖爺が言えば間違いなく証明されて、晴れて聖女ライフが送れる。

『……あぁ~、まあ、認めたくはないんじゃがは聖女枠じゃな』
「ちょっと、悪意のある言い方しないでくれる?」
「そうか……杖殿がとはいえ認めたのならば仕方がない」

困惑しながらも、認めてくれたらしい。
なんだか、あんまり嬉しくない……

これでアルフレードとのわだかまりも溶けた事だし、魔法も使えるようになった事だし、魔王の所へいざ!!

『──行けるわけなかろう』
「なんで!?」

私の言いたいことが分かったのか杖爺がすぐに止めてきた。

ぶっちゃけ私の魔法結構いい出来だったんじゃない?攻撃力抜群じゃん。

「杖殿が仰る通りだ。こんな無茶苦茶な魔法で行かれたら、味方部隊も巻き込まれて全滅する」
『お主はまずは魔力の基礎を覚える必要がある』
「杖殿、私が責任を持ってこいつに基礎を叩き込みます」
『やってくれるか!?頼むぞ小僧』
「はっ!!」

アルフレードは杖爺と握手を交わすように、杖を握りしめた。

あれ?おかしいぞ?アルフレードと杖爺が結託して私をいぶろうとしてる……

「いや、あの、アルフレード殿下はお忙しいと思いますので、基礎はそこの杖爺に教えて──……」
「遠慮するな。体力づくりはクラウドに任せ切りだったからな。今回は私がみっちり教えてやる。その無茶苦茶な魔力を二日でコントロール出来るようにしてやる」

私が断ろうとしたとこで、アルフレードに遮られた。
しかも、二日で習得させると断言しやがった。

「習得するのは私であってアルフレードあんたじゃないでしょ!?私の都合も考えてよ!!」って思いっきり叫びたかったが、アルフレードの眼力に負けた。




◇◆◇◆



その頃魔王城では──

「──やはり、無茶苦茶な奴だな」

俺は今、魔法の鏡で王城にいる聖女の様子を眺めて微笑んだ。
やはり今回の聖女は今までの聖女とは違っていた。
今までの聖女は魔力も上手く使いこなせていたが、今回は魔力の使い方がまるでなっていない。

「部屋の中で竜巻を起こすなど、初めて見たぞ。それに、あの小賢しい王子の顔。傑作だな」

くっくっくっと笑いながら鏡を見つめていた。

言っておくが、これは決して覗きとかそういうやましい気持ちで見ているのでは無い。これは……そう、あれだ、偵察!!
敵の動向を探る為、見ているのだ。

「──……魔王様、何をしておられるんですか?」

不意に背後から声がかかり、慌てて振り返ると宰相であるシャルが怪訝な顔をしながら立っていた。

「……あ、いや、こ、これは違うぞ!!」

慌てて魔法の鏡に映っていた聖女の姿を消したが、しっかり見られていたらしい。

「あぁ~なんて事でしょう。いくら気になるからと女性のプライベートを覗き見るとは……」
「だからそうでは無い!!これは敵の動向を見る為に仕方なくだな……」
「言い訳は結構です!!魔王ともあろうお方が、なんとも嘆かわしい……」

更には軽蔑するかのように溜息混じりに言われた。

見ていた現場を押えられたから否定はしない。
だが、断じて気になるからでは無い。
確かに、聖女を見ていると面白い奴だと思うし、俺も話してみたいなんて思う事もあるが、決して覗きでは無い!!

「……これだから初恋が遅いと面倒臭い……」
「何か言ったか?」
「いえ、何も……それよりも、魔王様。こんな鏡で見るよりも実際に会いに行かれたらいかがです?」

シャルの言葉に思わず固まった。
確かに、何度か会いに行こうか考えたことがあったが、相手は聖女で俺は魔王だ。
敵対する相手に会って嬉しいのだろうか……

そう思うと一歩が踏み出せず、こうやって鏡で近況を得る事しか出来なかった。

「貴方は魔王様なんですよ?この魔城の主で、魔族のトップです。何をそんなに恐れているのです?」

溜息混じりに言われて「ハッ!!」とした。
そうだ、俺は魔王だ。
聖女と言えど、ただの小娘。
そんな小娘一人何も恐れることなどない。

そう思ったら今まで考えていたのが馬鹿らしく思えてきた。

「そうだな!!俺は魔王だ!!小娘ごとき恐るるに足らん!!わははははは!!」

「……全く、本当に手のかかる……」

シャルが何やら呟いた様な気がしたが俺には聞こえなかった。
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