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この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。
その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。
その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。
前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。
父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。
そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。
組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。
この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。
その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。
──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。
昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。
原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。
それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。
※
「レーナ、何してるんだい?」
「兄様」
この人は、前世の記憶を呼び起こしてくれた張本人。
ロベルト・セルヴィロ、私の二つ上の兄だ。
「剣の手入れをしておりました」
記憶が戻ってから、私は父様にお願いして剣術を習い始めた。
──刀の形は違えど、同じ刃物だからな。扱いには慣れている。
「レーナは女の子なんだよ?剣術なんて必要ないでしょ?」
「いいえ、兄様。この先何があるか分かりません。私は自分の身は自分で守りたいのです」
悪役令嬢から足を洗いたいが、小説の強制補正がかかってしまうと、どうしようもない。
だから、もしもの事があっても少しは足掻きたい。
「まだ5歳の女の子が、剣術なんて聞いたことないよ」
「お兄様。常識なんてあっても、ないようなものなんですよ」
「……たまにレーナが妹か、分からなくなる時がある」
そりゃ外見は5歳ですけど、中身は32のアラサー極道ですから。
「そろそろ一息つかないかい?お茶を用意させたんだ」
「いただきます」
剣を鞘に戻し、兄様と一緒に屋敷に戻った。
ここ、セルヴィロ家は父アルティエロ・セルヴィロが当主を勤めている。
母は、私が幼い頃に病で亡くなった。
原作では、母親を幼くしてなくしたミレーナを不憫に思い、父と兄がこよなく愛し、甘やかして育てた。
その為ミレーナは女王様気質になり、皆の注目を浴びるヒロインを妬むのだ。
「兄様。そろそろ私に構わず兄様は、兄様のやりたい事をしてくださっていいのですよ?」
「おかしなことを言うね?レーナはまだ5歳なんだ。僕が見ていないと危ないでしょ?」
「しかし、兄様は次期当主です。私のせいで勉学が遅れたりしたら申し訳なくて……」
これは口実。できるだけ私から離れてもらいたい。
「心配は無用だよ。こう見えて僕は成績優秀なんだ。レーナ一人に構ったぐらいじゃ、どうもならないよ」
そうだった。この男は成績優秀、文武両道、いうことなしだった。
「……それとも、レーナは僕が嫌いなのかな?」
「いいえ!そんなことはありません」
「そう。それなら良かった。レーナに嫌われたら生きていけないからね」
──妹離れは失敗か
その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。
その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。
前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。
父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。
そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。
組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。
この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。
その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。
──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。
昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。
原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。
それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。
※
「レーナ、何してるんだい?」
「兄様」
この人は、前世の記憶を呼び起こしてくれた張本人。
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「剣の手入れをしておりました」
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──刀の形は違えど、同じ刃物だからな。扱いには慣れている。
「レーナは女の子なんだよ?剣術なんて必要ないでしょ?」
「いいえ、兄様。この先何があるか分かりません。私は自分の身は自分で守りたいのです」
悪役令嬢から足を洗いたいが、小説の強制補正がかかってしまうと、どうしようもない。
だから、もしもの事があっても少しは足掻きたい。
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「お兄様。常識なんてあっても、ないようなものなんですよ」
「……たまにレーナが妹か、分からなくなる時がある」
そりゃ外見は5歳ですけど、中身は32のアラサー極道ですから。
「そろそろ一息つかないかい?お茶を用意させたんだ」
「いただきます」
剣を鞘に戻し、兄様と一緒に屋敷に戻った。
ここ、セルヴィロ家は父アルティエロ・セルヴィロが当主を勤めている。
母は、私が幼い頃に病で亡くなった。
原作では、母親を幼くしてなくしたミレーナを不憫に思い、父と兄がこよなく愛し、甘やかして育てた。
その為ミレーナは女王様気質になり、皆の注目を浴びるヒロインを妬むのだ。
「兄様。そろそろ私に構わず兄様は、兄様のやりたい事をしてくださっていいのですよ?」
「おかしなことを言うね?レーナはまだ5歳なんだ。僕が見ていないと危ないでしょ?」
「しかし、兄様は次期当主です。私のせいで勉学が遅れたりしたら申し訳なくて……」
これは口実。できるだけ私から離れてもらいたい。
「心配は無用だよ。こう見えて僕は成績優秀なんだ。レーナ一人に構ったぐらいじゃ、どうもならないよ」
そうだった。この男は成績優秀、文武両道、いうことなしだった。
「……それとも、レーナは僕が嫌いなのかな?」
「いいえ!そんなことはありません」
「そう。それなら良かった。レーナに嫌われたら生きていけないからね」
──妹離れは失敗か
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