申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧

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次の日、父様と一緒に登城した。

「セルヴィロ嬢、わざわざすまなかったな」

「いえ。滅相もありません」

まずは陛下に挨拶だ。

「どうも息子は、セルヴィロ嬢の噂を耳にしていたらしくてな」

「噂ですか?」

「ああ。セルヴィロ家の令嬢は、聡明で美しい。しかも剣の腕前は騎士より強く、剣を振るう姿は戦の女神のようだ。とな」

なんだその噂?
私の耳には一度も入っていてきない。

「噂は所詮噂です。真意の分からぬうちは、あまり本気にしない方がよろしいかと」

噂を本気にしてると痛い目を見る。
そんな奴を何人も見てきたからな。

「あははは!そうだな。しかし、聡明なのは確からしいな。アルティエロは鼻が高かろう」

「はい。ミレーナは常日頃剣術や書斎を漁っては、様々なことを学んでおります。親としては、もう少し年相応に育って欲しかった部分もありますが、今思えばそれも個性。私の娘はどこに出しても恥ずかしくない、自慢の娘でございます」

そんな風に思っていたのか。
まぁそうだろうな、子供のくせに口だけは達者だったからな。

「うんうん。セルヴィロ嬢が私の娘になってくれると言うならば、そんな嬉しいことは無い。しかし、こればかり双方の気持ち次第。無理強いはしたくはない」

私は王妃になるつもりなど毛頭ない。

「息子は自室にいるはずだ、部屋まで送らせよう」

「はい。お気遣い、ありがとうございます」

騎士の一人が出てきた。先導してくれるらしい。

「それでは、陛下。失礼致します」

「ああ。いつでも訪ねてくるといい」

一礼し、騎士の後をついて行く。



コンコン

「殿下、セルヴィロ嬢をお連れしました」

「……入れ」

「失礼します」

扉を開けてもらい、殿下の部屋へと招かれた。

「初めまして殿下。私セルヴィロ家の長女ミレーナ・セルヴィロと申します」

「私はこの国の第一王子アレッシオ・カルネラだ。今日は呼び出して、すまなかった」

「いえ。とんでもございません」

一礼し、挨拶をすませ、ソファへと足を運んだ。

「セルヴィロ嬢の噂をよく耳にしてな。一度会ってみたかったのだ。ロベルトにも散々言ったのだが、会わせてくれなくてな」

そういえば、殿下と兄様は同い歳。
学園でも同じクラスだったはずだ。

「あいつは妹のことを自慢するくせに、会わせようとは絶対しない」

「私は、自慢するほどの妹ではありませんよ」

──噂の根源は兄様か。

「それに、噂は所詮噂に過ぎません。殿下はこれから、この国を守っていく身。噂に惑わされてはいけません」

「ああ、分かっている。だから直接本人を呼び出したのだ」

なるほど、真意を確かめる為の呼び出しか。

「では、噂は間違いだと改めてください。このままでは、噂ばかりが先行してしまいます」

「イヤ、噂は間違ってなどいなかった。そなたは美しく聡明だと見受けられる」

「外見はともかく、少し話した位で結論を出すのは如何なものかと思いますが?」

「イヤ。王子の私に媚びを売らない女など初めてだ。それも悪い噂でなく、いい噂なのに、その噂を改めろとまで言う」

──この流れはまずいな。

「単刀直入に言う。私の婚約者になってはくれないだろうか?」

──やっぱり

「殿下、私は父様と婚約者について決まり事があります」

「なんだ?」

「私の婚約者は、私自身で見つける。というものです。ですので、殿下の申し入れは大変嬉しく思いますが、これから先出会いは山のようにあります。その出会いの中で、私が好いた男性と婚約したいと思っております」

「……なるほどな」

これで諦めてくれるのならばいいのだが。

「では、セルヴィロ嬢の出会いの中に、私も含まれたということになるな?」

「あっ。そう……なりますね」

しまった。ドジを踏んだ。
今さら言ってしまったことに、取り消しはきかない。

「私も、セルヴィロ嬢の婚約者候補の一人と言う訳か」

「殿下にも出会いの場は沢山あります。私との出会いなど、すぐに忘れますよ」

そう。来年にはヒロインが登場する。
そして、ヒロインと結ばれるのだから。

──私は殿下と婚約などしない。

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