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園遊会も終わり、ある日校舎の二階を歩いていると、中庭で声がした。
覗いてみると、カナリヤが数名の令嬢に囲まれていた。
──あの子は中庭に縁があるのかねぇ?
そんな風に思っていたら一人の令嬢が、片手で髪をつかみ、もう片手には……ハサミ!?
まずい!!
思うより先に二階から飛び降りていた。
シュタンッ!!
バシッ!
降り立ってすぐハサミをたたき落とす。
「あんたら何してんだい!?」
「あんた……今どっから……?」
「そんなことは、どうでもいいんだよ!今何しようと、してたのか聞いてるんだ!!」
あまりの剣幕に女共がビクッとする。
「……この女が……たかが男爵家のくせに殿下の側にいたから……」
一人の令嬢が、おずおずしながら言った。
「……そうよ!この女が悪いのよ!たかが男爵家の癖に殿下の側にいるなんて!殿下の側に相応しいのは私、マリア・ガーディニアよ!」
こいつ、原作でミレーナの取り巻きだった奴か。
なるほど。二番手を悪役に持ってきたか。
「あんたら、身分が低いのどうのこうの言う前に、人として最低なことしてんのが、わかんないのか?」
「はっ?」
「いいかい、刃物は傷つけるじゃない。人を殺すことだってできるんだ!あんたらは傷つけるだけの、つもりだったかもしれないが、もし誤って殺してしまったらどうするんだい!?人殺しにもなる覚悟があって刃物を出したんだろ!?」
「………」
ほらみな、なにも言えないじゃないか。
「そんな半端な覚悟で、子供が刃物なんて出すんじゃないよ!」
後ろの子らは泣き出したが、そんなこと構ってる暇はないね。
「殿下に見初めてもらいたいなら、まずその根性をどうにかしてからにしな!」
「…………」
マリアが顔を真っ赤にして睨んでいるが、そんなことは知ったこちゃない。
「わかったら、去りな!」
勝てないと思ったんだろう。素早く逃げて行った。
「はぁ。大丈夫かい?」
「あっ……ありがとうございます。ミレーナ様……ですよね?」
「ん?」
しまった!!思わず口調が、若い衆を叱る時になってた!!
「あっあの、これは、オホホホ!」
もうどうしようもない。笑って誤魔化す。
「ふふっ。訳ありですか?どんなミレーナ様でも、大好きなミレーナ様には変わりありません」
「そう……ですか?」
パチパチパチ!!
頭上から拍手が聞こえる。
「いや~昼寝しようとしてましたけど、いいものが見れましたね」
ガサガサと木の上から降りてきたのは、隣国の第三王子カルロ。
──しまった!見られたか!
「セルヴィロ嬢……いや、ミレーナ。君、面白い子ですね。それに強い」
この男……。
「あっ、告げ口しようなんて思ってませんよ!ただ、君に興味が湧いただけです」
顔は笑っているが、目が笑っていない。
何を企んでいる?
「そんな警戒しないでください。まぁ今度ゆっくり話しがしたいですね」
冗談じゃない!いくら原作では好きだったとは言え、ここは現実だ。
下手に行動して、自分の首を絞めるのは勘弁したい。
「いえ、私のような者が王子の相手など滅相もありません」
「カルロ」
「え?」
「王子ではないです、カルロって呼んでください」
「……カルロ……様」
「あはははは!まぁ、それでいいです。じゃ私は行きますね……今後、頭上にも気おつけた方がいいですよ?」
──やっちまった……。
覗いてみると、カナリヤが数名の令嬢に囲まれていた。
──あの子は中庭に縁があるのかねぇ?
そんな風に思っていたら一人の令嬢が、片手で髪をつかみ、もう片手には……ハサミ!?
まずい!!
思うより先に二階から飛び降りていた。
シュタンッ!!
バシッ!
降り立ってすぐハサミをたたき落とす。
「あんたら何してんだい!?」
「あんた……今どっから……?」
「そんなことは、どうでもいいんだよ!今何しようと、してたのか聞いてるんだ!!」
あまりの剣幕に女共がビクッとする。
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一人の令嬢が、おずおずしながら言った。
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こいつ、原作でミレーナの取り巻きだった奴か。
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「はっ?」
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「………」
ほらみな、なにも言えないじゃないか。
「そんな半端な覚悟で、子供が刃物なんて出すんじゃないよ!」
後ろの子らは泣き出したが、そんなこと構ってる暇はないね。
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「…………」
マリアが顔を真っ赤にして睨んでいるが、そんなことは知ったこちゃない。
「わかったら、去りな!」
勝てないと思ったんだろう。素早く逃げて行った。
「はぁ。大丈夫かい?」
「あっ……ありがとうございます。ミレーナ様……ですよね?」
「ん?」
しまった!!思わず口調が、若い衆を叱る時になってた!!
「あっあの、これは、オホホホ!」
もうどうしようもない。笑って誤魔化す。
「ふふっ。訳ありですか?どんなミレーナ様でも、大好きなミレーナ様には変わりありません」
「そう……ですか?」
パチパチパチ!!
頭上から拍手が聞こえる。
「いや~昼寝しようとしてましたけど、いいものが見れましたね」
ガサガサと木の上から降りてきたのは、隣国の第三王子カルロ。
──しまった!見られたか!
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この男……。
「あっ、告げ口しようなんて思ってませんよ!ただ、君に興味が湧いただけです」
顔は笑っているが、目が笑っていない。
何を企んでいる?
「そんな警戒しないでください。まぁ今度ゆっくり話しがしたいですね」
冗談じゃない!いくら原作では好きだったとは言え、ここは現実だ。
下手に行動して、自分の首を絞めるのは勘弁したい。
「いえ、私のような者が王子の相手など滅相もありません」
「カルロ」
「え?」
「王子ではないです、カルロって呼んでください」
「……カルロ……様」
「あはははは!まぁ、それでいいです。じゃ私は行きますね……今後、頭上にも気おつけた方がいいですよ?」
──やっちまった……。
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