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「レーナ!!演習場に行ったんだって!?」

あれから、サラを捕まえて屋敷へと帰ってきた。
兄様にバレるとうるさいと思い、早く部屋に戻って服を着替えなければ。
と思っていた矢先に声ががった。

「あんな所に行くなんて!レーナはセルヴィロ家の令嬢なんだよ!?」

「わかってます。しかし、ジルベルト様と約束していたので。約束を破るのは私の意思に反します」

「しかもその格好は何!?男物じゃないか!」

やはり、突っ込まれたか。
しかし、下手な言い訳は性にあわない。
それに嘘をついても、いずれバレる。

「汗をかいたので、ジルベルト様にお借りしました」

「……レーナ。とりあえず、着替えて僕の部屋へ来なさい」

「……はい」

これは説教2時間コースか?



あれから、兄様にこってり3時間お説教を受けた。
はぁ、参った。
妹思いなのはいいが、行き過ぎる。
正直ウザイ。

「ミレーナ様。お茶はいかがです?」

「いただくわ」

「そういえば、ロベルト様に婚約のお話が出てるみたいですよ?」

「えっ?」

ここに来て、婚約の話か。
確か伯爵家の娘だったはずだが……。

「アルカンディニ家のご令嬢、ソニア様らしいです」

ああ。そうだ、ミレーナが嫁いびりしていた人物だ。
とても可愛らしく、優しい令嬢。
ミレーナがいびっても反抗せず、それに従っていたと言うのに離婚されてしまう。
ソニアは被害者だ。
良いように使われて、要らなくなったら棄てる。
それが、原作のミレーナ。

──大丈夫。今のミレーナは私だ。

「それで、しばらくセルヴィロ家に滞在するみたいです」

「はっ?」

間抜けな返事と共に、扉が鳴った。

コンコン

「はい?」

「ミレーナ様、お初にお目にかかります。ソニア・アルカンディニと申します。この度ロベルト様と婚約させていただきました。以後お見知りおきを」

この娘がソニア……。
確かに優しそうだが……。
なぜだ?
昔の勘が信用するなと言っている。

「ミレーナ・セルヴィロと申します。兄様とのご婚約おめでとうございます。義妹として、よろしくお願いします」

「ええ。仲良くしましょうね」

それだけ言うと、ソニアはその場から立ち去った。
おかしな所はなかった。
昔の勘も、鈍ったね。
人を見る目は確かだったがな。

「とても可愛らしい方でしたね」

「ええ。そうね……」

「なんですか?ロベルト様が取られると思ってるんですか?」

サラがニヤニヤしながら言ってくる。
腹の立つ笑顔だ。

「そんな訳ないでしょ。ようやく妹離れしてくれて、清々するわ」

──杞憂に終わればいいが。
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