申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧

文字の大きさ
34 / 46

34

しおりを挟む
夕方過ぎにエリオが戻ってきた。
さすが、暗躍部隊。素早いねぇ。
普通の人なら丸一日かかるよ?

「ご苦労さま。随分急いで戻ってきたねぇ。もっとゆっくりで良かったのに」

「ゆっくりしてたら置いてかれそうですから」

こいつは私らの事なんだと思ってるのかねぇ。
仲間なんだから置いてかないよ。

「で、兄様は何と?」

「ああ、すぐ用意するって言ってましたよ。ま、掻い摘んで言っときましたけど、一応伝言で『 帰ってきたら話をしよう』て言ってましたよ」

「……そうか……」

これは、だいぶご立腹と見える。
エリオはどういう説明をしたんだ?

──帰りたいけど、帰りたくない。

「物資が到着するのは、早くて明日だね。それまではここに留まろう。エリオ帰ってきて早々悪いけど、カルロに伝達入れといてくれ」

「はぁぁぁ!?いや、人使い荒すぎですって!もうちょっと労わってくださいよ!」

「悪いね。疲れてるのは承知の上なんだ。エリオが頼りなんだよ~」

「しょ、しょうがないですねぇ。分かりましたよ、行ってますよ」

ちょっと上目遣いで胸を押し当てて言うと、エリオは顔を真っ赤して、渋々外に出て行く。

──ふっ、チョロいね。



次の日の昼過ぎには、兄様が用意した物資が届いた。
すぐさま手配してくれんだろうな。

「ミレーナ様、屋敷の者数人がもうすぐ到着予定です」

「良かった。これなら早めにここを出れそうだね」

「お姉ちゃん、ここ出てくの?ここにいないの?」

リリがそばに寄ってきて、泣きそうな顔で言ってきた。
小さい子の涙は苦手なんだよ。

「大丈夫だよ。お姉ちゃんの代わりに違うお姉ちゃん達が来てくれるからね」

自慢じゃないが、うちの侍女達は優秀だ。なんでも出来る。
ここもすぐに見違える程綺麗になるだろう。
そうすれば俄然住みやすくなる。

「こら、リリ。お嬢を困らせてはいけませんよ」

マウロがリリを宥めにやって来てくれた。
助かった。

「しかし、そんなすぐに旅立つんですか?」

「ああ、ちと待たせてる奴がいるもんでね」

一応、遅れるとは伝達してもらっているけど、あんまり待たせるのは性にあわない。

「あの、私も連れて行ってもらえませんか?」

「は?」

「私はお嬢の下に就いた者です。護衛……にはならないかもしれませんが、少しでもお役にちたいんです!」

「それなら俺も行くぜ!」

後ろからダンテが声を上げた。
聞いてたのかい。

「俺も一緒に連れてってくれよ!お嬢!」

「いや、あんたら二人抜けたら、ここはどうすんだい?」

「大丈夫だ。これまでもたまに、数日ここを空けることがあったんだが、こいつらはちゃんとやってくれていた」

そうは言うがねぇ。
困ったねぇ……。

「ミレーナ様、連れて行ってみればよろしいかと」

「おいおい。サラ本気かい?」

「ええ。ここは屋敷者が来るので安心でしょう。それに、こいつらが実際どの程度使えるかどうか判断するには、ちょうど良い機会かと」

サラは、ダンテらを厳しい目で見ながら言った。
確かに、サラの言うことも一理ある。
私の事を知ってもらうにも、ちょうど良いかもしれないね。

「……わかった。連れていこう。しかし、その小汚い格好ではダメだね。これから行くところは、アルデガニ国の王宮だ」

「「えっ?」」

「私が待たせてる奴は、アルデガニ国第三王子のカルロだよ」

「「え----!?」」

ダンテとマウロは、まさかこんな大物の名前が出てくるとは思わなかたっんだろ。顔が青くなってるよ。
ふふ、中々面白い反応してくれたねぇ。
もう今更無理は聞かないよ。

──さぁ、ちゃんと護衛しておくれよ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢だけど、男主人公の様子がおかしい

真咲
恋愛
主人公ライナスを学生時代にいびる悪役令嬢、フェリシアに転生した。 原作通り、ライナスに嫌味を言っていたはずだけど。 「俺、貴族らしくなるから。お前が認めるくらい、立派な貴族になる。そして、勿論、この学園を卒業して実力のある騎士にもなる」 「だから、俺を見ていてほしい。……今は、それで十分だから」 こんなシーン、原作にあったっけ? 私は上手く、悪役令嬢をやれてるわよね?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ
恋愛
2022/04/07 小説ホットランキング女性向け1位に入ることができました。皆様の応援のおかげです。ありがとうございます。 第3回 一二三書房WEB小説大賞の最終選考作品です。(5,668作品のなかで45作品) ※コメント欄でネタバレしています。私のミスです。ネタバレしたくない方は読み終わったあとにコメントをご覧ください。 原因不明の病により、余命3ヶ月と診断された公爵令嬢のフェイト・アシュフォード。 よりによって今日は、王太子殿下とフェイトの婚約が発表されるパーティの日。 王太子殿下のことを考えれば、わたくしは身を引いたほうが良い。 どうやって婚約をお断りしようかと考えていると、王太子殿下の横には容姿端麗の女性が。逆に婚約破棄されて傷心するフェイト。 家に帰り、一冊の本をとりだす。それはフェイトが敬愛する、悪役令嬢とよばれた公爵令嬢ヴァイオレットが活躍する物語。そのなかに、【死ぬまでにしたい10のこと】を決める描写があり、フェイトはそれを真似してリストを作り、生きる指針とする。 1.余命のことは絶対にだれにも知られないこと。 2.悪役令嬢ヴァイオレットになりきる。あえて人から嫌われることで、自分が死んだ時の悲しみを減らす。(これは実行できなくて、後で変更することになる) 3.必ず病気の原因を突き止め、治療法を見つけだし、他の人が病気にならないようにする。 4.ノブレス・オブリージュ 公爵令嬢としての責務をいつもどおり果たす。 5.お父様と弟の問題を解決する。 それと、目に入れても痛くない、白蛇のイタムの新しい飼い主を探さねばなりませんし、恋……というものもしてみたいし、矛盾していますけれど、友達も欲しい。etc. リストに従い、持ち前の執務能力、するどい観察眼を持って、人々の問題や悩みを解決していくフェイト。 ただし、悪役令嬢の振りをして、人から嫌われることは上手くいかない。逆に好かれてしまう! では、リストを変更しよう。わたくしの身代わりを立て、遠くに嫁いでもらうのはどうでしょう? たとえ失敗しても10のリストを修正し、最善を尽くすフェイト。 これはフェイトが、余命3ヶ月で10のしたいことを実行する物語。皆を自らの死によって悲しませない為に足掻き、運命に立ち向かう、逆転劇。 【注意点】 恋愛要素は弱め。 設定はかなりゆるめに作っています。 1人か、2人、苛立つキャラクターが出てくると思いますが、爽快なざまぁはありません。 2章以降だいぶ殺伐として、不穏な感じになりますので、合わないと思ったら辞めることをお勧めします。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない

あーもんど
恋愛
ある日、悪役令嬢に憑依してしまった主人公。 困惑するものの、わりとすんなり状況を受け入れ、『必ず幸せになる!』と決意。 さあ、第二の人生の幕開けよ!────と意気込むものの、人生そう上手くいかず…… ────えっ?悪役令嬢って、家族と不仲だったの? ────ヒロインに『悪役になりきれ』って言われたけど、どうすれば……? などと悩みながらも、真っ向から人と向き合い、自分なりの道を模索していく。 そんな主人公に惹かれたのか、皆だんだん優しくなっていき……? ついには、主人公を溺愛するように! ────これは孤独だった悪役令嬢が家族に、攻略対象者に、ヒロインに愛されまくるお語。 ◆小説家になろう様にて、先行公開中◆

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...