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夕方過ぎにエリオが戻ってきた。
さすが、暗躍部隊。素早いねぇ。
普通の人なら丸一日かかるよ?
「ご苦労さま。随分急いで戻ってきたねぇ。もっとゆっくりで良かったのに」
「ゆっくりしてたら置いてかれそうですから」
こいつは私らの事なんだと思ってるのかねぇ。
仲間なんだから置いてかないよ。
「で、兄様は何と?」
「ああ、すぐ用意するって言ってましたよ。ま、掻い摘んで言っときましたけど、一応伝言で『 帰ってきたらゆっくり話をしよう』て言ってましたよ」
「……そうか……」
これは、だいぶご立腹と見える。
エリオはどういう説明をしたんだ?
──帰りたいけど、帰りたくない。
「物資が到着するのは、早くて明日だね。それまではここに留まろう。エリオ帰ってきて早々悪いけど、カルロに伝達入れといてくれ」
「はぁぁぁ!?いや、人使い荒すぎですって!もうちょっと労わってくださいよ!」
「悪いね。疲れてるのは承知の上なんだ。エリオだけが頼りなんだよ~」
「しょ、しょうがないですねぇ。分かりましたよ、行ってますよ」
ちょっと上目遣いで胸を押し当てて言うと、エリオは顔を真っ赤して、渋々外に出て行く。
──ふっ、チョロいね。
※
次の日の昼過ぎには、兄様が用意した物資が届いた。
すぐさま手配してくれんだろうな。
「ミレーナ様、屋敷の者数人がもうすぐ到着予定です」
「良かった。これなら早めにここを出れそうだね」
「お姉ちゃん、ここ出てくの?ここにいないの?」
リリがそばに寄ってきて、泣きそうな顔で言ってきた。
小さい子の涙は苦手なんだよ。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんの代わりに違うお姉ちゃん達が来てくれるからね」
自慢じゃないが、うちの侍女達は優秀だ。なんでも出来る。
ここもすぐに見違える程綺麗になるだろう。
そうすれば俄然住みやすくなる。
「こら、リリ。お嬢を困らせてはいけませんよ」
マウロがリリを宥めにやって来てくれた。
助かった。
「しかし、そんなすぐに旅立つんですか?」
「ああ、ちと待たせてる奴がいるもんでね」
一応、遅れるとは伝達してもらっているけど、あんまり待たせるのは性にあわない。
「あの、私も連れて行ってもらえませんか?」
「は?」
「私はお嬢の下に就いた者です。護衛……にはならないかもしれませんが、少しでもお役にちたいんです!」
「それなら俺も行くぜ!」
後ろからダンテが声を上げた。
聞いてたのかい。
「俺も一緒に連れてってくれよ!お嬢!」
「いや、あんたら二人抜けたら、ここはどうすんだい?」
「大丈夫だ。これまでもたまに、数日ここを空けることがあったんだが、こいつらはちゃんとやってくれていた」
そうは言うがねぇ。
困ったねぇ……。
「ミレーナ様、連れて行ってみればよろしいかと」
「おいおい。サラ本気かい?」
「ええ。ここは屋敷者が来るので安心でしょう。それに、こいつらが実際どの程度使えるかどうか判断するには、ちょうど良い機会かと」
サラは、ダンテらを厳しい目で見ながら言った。
確かに、サラの言うことも一理ある。
私の事を知ってもらうにも、ちょうど良いかもしれないね。
「……わかった。連れていこう。しかし、その小汚い格好ではダメだね。これから行くところは、アルデガニ国の王宮だ」
「「えっ?」」
「私が待たせてる奴は、アルデガニ国第三王子のカルロだよ」
「「え----!?」」
ダンテとマウロは、まさかこんな大物の名前が出てくるとは思わなかたっんだろ。顔が青くなってるよ。
ふふ、中々面白い反応してくれたねぇ。
もう今更無理は聞かないよ。
──さぁ、ちゃんと護衛しておくれよ?
さすが、暗躍部隊。素早いねぇ。
普通の人なら丸一日かかるよ?
「ご苦労さま。随分急いで戻ってきたねぇ。もっとゆっくりで良かったのに」
「ゆっくりしてたら置いてかれそうですから」
こいつは私らの事なんだと思ってるのかねぇ。
仲間なんだから置いてかないよ。
「で、兄様は何と?」
「ああ、すぐ用意するって言ってましたよ。ま、掻い摘んで言っときましたけど、一応伝言で『 帰ってきたらゆっくり話をしよう』て言ってましたよ」
「……そうか……」
これは、だいぶご立腹と見える。
エリオはどういう説明をしたんだ?
──帰りたいけど、帰りたくない。
「物資が到着するのは、早くて明日だね。それまではここに留まろう。エリオ帰ってきて早々悪いけど、カルロに伝達入れといてくれ」
「はぁぁぁ!?いや、人使い荒すぎですって!もうちょっと労わってくださいよ!」
「悪いね。疲れてるのは承知の上なんだ。エリオだけが頼りなんだよ~」
「しょ、しょうがないですねぇ。分かりましたよ、行ってますよ」
ちょっと上目遣いで胸を押し当てて言うと、エリオは顔を真っ赤して、渋々外に出て行く。
──ふっ、チョロいね。
※
次の日の昼過ぎには、兄様が用意した物資が届いた。
すぐさま手配してくれんだろうな。
「ミレーナ様、屋敷の者数人がもうすぐ到着予定です」
「良かった。これなら早めにここを出れそうだね」
「お姉ちゃん、ここ出てくの?ここにいないの?」
リリがそばに寄ってきて、泣きそうな顔で言ってきた。
小さい子の涙は苦手なんだよ。
「大丈夫だよ。お姉ちゃんの代わりに違うお姉ちゃん達が来てくれるからね」
自慢じゃないが、うちの侍女達は優秀だ。なんでも出来る。
ここもすぐに見違える程綺麗になるだろう。
そうすれば俄然住みやすくなる。
「こら、リリ。お嬢を困らせてはいけませんよ」
マウロがリリを宥めにやって来てくれた。
助かった。
「しかし、そんなすぐに旅立つんですか?」
「ああ、ちと待たせてる奴がいるもんでね」
一応、遅れるとは伝達してもらっているけど、あんまり待たせるのは性にあわない。
「あの、私も連れて行ってもらえませんか?」
「は?」
「私はお嬢の下に就いた者です。護衛……にはならないかもしれませんが、少しでもお役にちたいんです!」
「それなら俺も行くぜ!」
後ろからダンテが声を上げた。
聞いてたのかい。
「俺も一緒に連れてってくれよ!お嬢!」
「いや、あんたら二人抜けたら、ここはどうすんだい?」
「大丈夫だ。これまでもたまに、数日ここを空けることがあったんだが、こいつらはちゃんとやってくれていた」
そうは言うがねぇ。
困ったねぇ……。
「ミレーナ様、連れて行ってみればよろしいかと」
「おいおい。サラ本気かい?」
「ええ。ここは屋敷者が来るので安心でしょう。それに、こいつらが実際どの程度使えるかどうか判断するには、ちょうど良い機会かと」
サラは、ダンテらを厳しい目で見ながら言った。
確かに、サラの言うことも一理ある。
私の事を知ってもらうにも、ちょうど良いかもしれないね。
「……わかった。連れていこう。しかし、その小汚い格好ではダメだね。これから行くところは、アルデガニ国の王宮だ」
「「えっ?」」
「私が待たせてる奴は、アルデガニ国第三王子のカルロだよ」
「「え----!?」」
ダンテとマウロは、まさかこんな大物の名前が出てくるとは思わなかたっんだろ。顔が青くなってるよ。
ふふ、中々面白い反応してくれたねぇ。
もう今更無理は聞かないよ。
──さぁ、ちゃんと護衛しておくれよ?
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