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第27話
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「アルエ!!!!!!アルエ---!!!」
「──なんだ、なんだ!?」
ある日の早朝、階下から母の焦りを含んだ叫び声に飛び起きた。
何が何だか分からずにベッドの上で呆けていると、母よりも先にジェフリー君がやって来た。
すると、まだベッドの上にいる私を見て呆れたように溜息を吐きながら言ってきた。
「あんた、今日何の日か知ってる?」
「……え?あ~と、誰かの誕生日だっけ?」
「はぁぁぁぁ~~………殿下から舞踏会の招待状渡されたでしょ?──それ、今日ね」
「…………………ん゛あ゛!?」
慌てて引き出しから招待状を引っ張り出し日付を確認した。
──……ほんまや……
ということは、母が慌てている原因は……
チラッとジェフリー君の方を確認するように見ると「城から迎えが来たんでしょ」サラッと言ってくれちゃった。
その瞬間、サァーと全身の血の気が引いたのが分かった。
舞踏会の事を忘れていたのもあるけど、まさか本当に迎えを寄越すとは思ってもみなかったからだ。
「ど、どどどどどどど、どうしよう!!ジェフリー君!!!」
「いや、どうするも何も行くしかないでしょ?」
行くしかないって……今私は起きたばかりで、髪はぐちゃぐちゃ、顔も洗ってない。よだれの跡が付いてないか気が気じゃない。
私が部屋でパニックになっていると、母が鬼の形相で部屋に入って来るなりパジャマの襟を掴み上げて、問答無用で外に放り投げられた。
「──……黙って行ってきなさい」
ギロっと睨まれた私は抵抗する間もなく、ジェフリー君によりパジャマのまま馬車の中に押し込められた。
「あんたの母親、怖いのな……」
「分かってくれる?」
馬車の中にあった朝食用のパンを頬張りながら返事を返した。
きっと、母が先に乗せておいてくれたのだろう。
……こういう優しさはあるんだよなぁ。
そう思いながら、城へと向かった。
◆◆◆
「無理無理無理無理無理!!!!!」
「我慢してください!!もうちょっとです!!」
城に着くなり私はすぐさまお風呂へ直行。
城のお風呂ってものすんごいの!!
湯船に花びら浮いてんの!!
しかもめちゃくちゃデカくて、めちゃくちゃいい匂いする!!
(こりゃ朝から天国じゃ……)
なんて思いながら湯に浸かっていたら、侍女さん数人入ってきて、私の体を磨きまくったよね。
「自分で出来ます!!」って叫んだけど、聞く耳持たねぇの。
磨き過ぎて、若干ヒリヒリする肌に香油を擦り込まれて、鼻が馬鹿になりそう……
そして今、私の身体にコルセットがギュウギュウに締め付けられている。
(こんなのして舞踏会に出るの!?)
世のご令嬢はこんな苦行を行っているのかと思っているうちに、準備が整ったらしい。
「わぁぁ~」
鏡に映った自分を見て驚いた。
前に行った夜会とは比べ物にはならないぐらい変身していた。
それはもう、原型が分からないほど。
(えぇ~、写真に残しておきたい!!)
鏡の前でクルクルしていると「何しているんです?」と冷たい声が聞こえた。
こんな言葉をかけてくる人物は、私の知る限り一人しかいない。
「……フリッツ様、女性の部屋に入る前にはノックは必須だと言うことを知らないのですか?」
「おや?私に助言ですか?貴方が?」
クスクスと相変わらず人を小馬鹿にした態度に腹が立つ。だが、ここは大人しくしておく。だって今の私は、なんちゃって淑女だから。
フリッツは言い返して来ない私を意外そうに見てきたが「準備が出来たのなら行きますよ」と手を差し出してきた。
まさかこの人がエスコート役なのか!?と困惑していると、横から大きな手が差し出された。
「中々化けたじゃないか。見違えたぞ?」
「ダンさん!!」
「フリッツ殿、アルエは私が……」
ダンさんがフリッツにそう伝えると、フリッツは「……そうですか」と部屋を出て行った。
ホッと胸を撫で下ろすしていると、ダンさんがすかさず私の手を取って来た。
「さあ、参りましょうか、お姫様?」
身なりを整えて正装しているダンさんは目のやり場に困るほどかっこいい。
そんなダンさんの手を顔を真っ赤にしながら取った。
(頼むから持ってくれ、私の心臓!!)
「──なんだ、なんだ!?」
ある日の早朝、階下から母の焦りを含んだ叫び声に飛び起きた。
何が何だか分からずにベッドの上で呆けていると、母よりも先にジェフリー君がやって来た。
すると、まだベッドの上にいる私を見て呆れたように溜息を吐きながら言ってきた。
「あんた、今日何の日か知ってる?」
「……え?あ~と、誰かの誕生日だっけ?」
「はぁぁぁぁ~~………殿下から舞踏会の招待状渡されたでしょ?──それ、今日ね」
「…………………ん゛あ゛!?」
慌てて引き出しから招待状を引っ張り出し日付を確認した。
──……ほんまや……
ということは、母が慌てている原因は……
チラッとジェフリー君の方を確認するように見ると「城から迎えが来たんでしょ」サラッと言ってくれちゃった。
その瞬間、サァーと全身の血の気が引いたのが分かった。
舞踏会の事を忘れていたのもあるけど、まさか本当に迎えを寄越すとは思ってもみなかったからだ。
「ど、どどどどどどど、どうしよう!!ジェフリー君!!!」
「いや、どうするも何も行くしかないでしょ?」
行くしかないって……今私は起きたばかりで、髪はぐちゃぐちゃ、顔も洗ってない。よだれの跡が付いてないか気が気じゃない。
私が部屋でパニックになっていると、母が鬼の形相で部屋に入って来るなりパジャマの襟を掴み上げて、問答無用で外に放り投げられた。
「──……黙って行ってきなさい」
ギロっと睨まれた私は抵抗する間もなく、ジェフリー君によりパジャマのまま馬車の中に押し込められた。
「あんたの母親、怖いのな……」
「分かってくれる?」
馬車の中にあった朝食用のパンを頬張りながら返事を返した。
きっと、母が先に乗せておいてくれたのだろう。
……こういう優しさはあるんだよなぁ。
そう思いながら、城へと向かった。
◆◆◆
「無理無理無理無理無理!!!!!」
「我慢してください!!もうちょっとです!!」
城に着くなり私はすぐさまお風呂へ直行。
城のお風呂ってものすんごいの!!
湯船に花びら浮いてんの!!
しかもめちゃくちゃデカくて、めちゃくちゃいい匂いする!!
(こりゃ朝から天国じゃ……)
なんて思いながら湯に浸かっていたら、侍女さん数人入ってきて、私の体を磨きまくったよね。
「自分で出来ます!!」って叫んだけど、聞く耳持たねぇの。
磨き過ぎて、若干ヒリヒリする肌に香油を擦り込まれて、鼻が馬鹿になりそう……
そして今、私の身体にコルセットがギュウギュウに締め付けられている。
(こんなのして舞踏会に出るの!?)
世のご令嬢はこんな苦行を行っているのかと思っているうちに、準備が整ったらしい。
「わぁぁ~」
鏡に映った自分を見て驚いた。
前に行った夜会とは比べ物にはならないぐらい変身していた。
それはもう、原型が分からないほど。
(えぇ~、写真に残しておきたい!!)
鏡の前でクルクルしていると「何しているんです?」と冷たい声が聞こえた。
こんな言葉をかけてくる人物は、私の知る限り一人しかいない。
「……フリッツ様、女性の部屋に入る前にはノックは必須だと言うことを知らないのですか?」
「おや?私に助言ですか?貴方が?」
クスクスと相変わらず人を小馬鹿にした態度に腹が立つ。だが、ここは大人しくしておく。だって今の私は、なんちゃって淑女だから。
フリッツは言い返して来ない私を意外そうに見てきたが「準備が出来たのなら行きますよ」と手を差し出してきた。
まさかこの人がエスコート役なのか!?と困惑していると、横から大きな手が差し出された。
「中々化けたじゃないか。見違えたぞ?」
「ダンさん!!」
「フリッツ殿、アルエは私が……」
ダンさんがフリッツにそう伝えると、フリッツは「……そうですか」と部屋を出て行った。
ホッと胸を撫で下ろすしていると、ダンさんがすかさず私の手を取って来た。
「さあ、参りましょうか、お姫様?」
身なりを整えて正装しているダンさんは目のやり場に困るほどかっこいい。
そんなダンさんの手を顔を真っ赤にしながら取った。
(頼むから持ってくれ、私の心臓!!)
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