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第33話
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頬を染め、照れたように言っているリリアンを冷めた目で見ている王子とその他諸々。
(あ……これは、またあのパターン……)
「あ~と、リリアン嬢?ヤキモチとは……?」
「いいの!!分かってる!!」
「いや、絶対分かってないよね?」
殿下とリリアンのお決まりの言い合いですね。
「まさかここで、嫉妬イベントが来るなんて予定外だけど、いいわ!!このイベント見事攻略してみせる!!」
すべてを知っている私なら話が通じるけど、乙女ゲームなど知らない目の前の方達からすれば、訳の分からないことを話す頭のおかしい令嬢でしかない。
「……えっと、リリアン嬢?イベント?攻略?がよく分からないんだけど、ちょっと落ち着いてくれるかな?」
王子が苦笑いでリリアンを落ち着かせようとしたが、そんな簡単にリリアンは止まらない。
「でも、ごめんなさい。私はみんなのものなの。分かってくれる?」
なに、その売れないアイドルみたいな台詞は……
あっ、王子が頭を抱え始めた。
これは、くる。あいつが……
「──貴方の妄想は本当に面白いですね。逆に尊敬してしまいますよ」
「あんたには言ってないのよクソ眼鏡」
やっぱり口を開いたのはフリッツだった。
フリッツとリリアンの間にバチバチと火花が飛んでいるのが見える……
このままじゃ埒が明かないと思ったのか、リリアンの扱いに一番慣れているグレッグさんが渋々ご機嫌取りにやって来た。
するとあっさりグレッグさんの腕に絡みつき、毒牙が抜けた。
グレッグさんには悪いけど、しばらくリリアンのお守り役としていてもらうことにした。
落ち着いたところで、再び本題へ……
「えぇ~と、シュアさんですよね。シュアさんは兄みたいな存在です」
これは、ちょっと前にダンさんにも言った言葉。
あの時は咄嗟に出た口からでまかせだったけど、今は本当に兄みたいな存在だと思ってる。
「……ふ~ん。それだけ?」
「え?……他に何が……?」
王子が問いかけてきたが、何が言いたいのか分からない。
「なければいいよ。えっと、じやあ、話をまとめると……ジョシュアはアルエにとって兄みたいな存在。その兄が自分を庇って死にかけたからルカリオに助けを求めた。そして無事に生還したことに感極まって抱きついたと?」
「そうですけど?」
何故ジェフリー君の事じゃなくてシュアさんの事を聞かれるのか分からないが、その内容で間違いない。
私が返事を返すと、先程とは打って変わって笑顔の王子に「そう」と返された。
「じゃあ、聴取はこれで終わり」
「「は?」」
その言葉に私もリリアンも一瞬耳を疑った。
こんな簡素な聴取の為に私達は残されたのか?そんな言葉が頭をよぎったが、どんな小さな事件でも事情聴取は付き物だからなと、自分を無理やり納得させた。
それよりも、早く帰って休みたい気持ちが勝ったってのが正直な所。
「……まあ、じゃあ、リリアン帰りますか?」
「えぇ~?今から?家に着くの夜中になっちゃうじゃない。ってかさぁ、こんな遅くに女の子を帰す方もどうかと思うわよ?」
リリアンが何か言いたげに目線を王子とフリッツに向けると、フリッツが大きな溜息を吐いた。
「そう言うと思って、予め部屋を用意しておきました。まあ、貴方を女の子の部類に入れていいものか考えものですがね……」
「用意がいいじゃない」
リリアンが当然の権利の様に言っておりますが、泊まるの?城に?
前世で旅行はそれなりに行ってたけど、こんな煌びやかな宿は泊まったことがない。
いや、そんな事は問題じゃない。
一緒に泊まる相手が問題。
城は唯一対象者が全員揃っている場所。そんな場所に一泊!?
ウサギが入っている檻にライオンを入れるようなものでしょ……無理無理無理!!
(休まるものも休まらない……)
今から夜道を帰る方が幾分かマシ。
「いや、リリアンちょっと!!」
私はリリアンの腕を掴み、壁際へと寄った。
「いいですか、落ち着いて考えてください。ここは城ですよ?普通の宿じゃないんです」
「分かってるわよ。城に泊まれるなんてラッキーじゃない」
「無理ですよ!!」
……寝ずの番をして貴方を見張るのは……
「折角の好意を無駄にするの?部屋を綺麗にしてくれた侍女達が可哀想だとは思わない?」
「──ぐっ」
「ちょっとグレードの高いホテルだと思えばいいじゃない」
そこまで言われると、私としても言い返す言葉ない。
私が言い返さなくなると、リリアンが「はい、決定~!!」と大層嬉しそうにフリッツに部屋に案内するように言っていた。
……これは、長い夜になりそうだ……
(あ……これは、またあのパターン……)
「あ~と、リリアン嬢?ヤキモチとは……?」
「いいの!!分かってる!!」
「いや、絶対分かってないよね?」
殿下とリリアンのお決まりの言い合いですね。
「まさかここで、嫉妬イベントが来るなんて予定外だけど、いいわ!!このイベント見事攻略してみせる!!」
すべてを知っている私なら話が通じるけど、乙女ゲームなど知らない目の前の方達からすれば、訳の分からないことを話す頭のおかしい令嬢でしかない。
「……えっと、リリアン嬢?イベント?攻略?がよく分からないんだけど、ちょっと落ち着いてくれるかな?」
王子が苦笑いでリリアンを落ち着かせようとしたが、そんな簡単にリリアンは止まらない。
「でも、ごめんなさい。私はみんなのものなの。分かってくれる?」
なに、その売れないアイドルみたいな台詞は……
あっ、王子が頭を抱え始めた。
これは、くる。あいつが……
「──貴方の妄想は本当に面白いですね。逆に尊敬してしまいますよ」
「あんたには言ってないのよクソ眼鏡」
やっぱり口を開いたのはフリッツだった。
フリッツとリリアンの間にバチバチと火花が飛んでいるのが見える……
このままじゃ埒が明かないと思ったのか、リリアンの扱いに一番慣れているグレッグさんが渋々ご機嫌取りにやって来た。
するとあっさりグレッグさんの腕に絡みつき、毒牙が抜けた。
グレッグさんには悪いけど、しばらくリリアンのお守り役としていてもらうことにした。
落ち着いたところで、再び本題へ……
「えぇ~と、シュアさんですよね。シュアさんは兄みたいな存在です」
これは、ちょっと前にダンさんにも言った言葉。
あの時は咄嗟に出た口からでまかせだったけど、今は本当に兄みたいな存在だと思ってる。
「……ふ~ん。それだけ?」
「え?……他に何が……?」
王子が問いかけてきたが、何が言いたいのか分からない。
「なければいいよ。えっと、じやあ、話をまとめると……ジョシュアはアルエにとって兄みたいな存在。その兄が自分を庇って死にかけたからルカリオに助けを求めた。そして無事に生還したことに感極まって抱きついたと?」
「そうですけど?」
何故ジェフリー君の事じゃなくてシュアさんの事を聞かれるのか分からないが、その内容で間違いない。
私が返事を返すと、先程とは打って変わって笑顔の王子に「そう」と返された。
「じゃあ、聴取はこれで終わり」
「「は?」」
その言葉に私もリリアンも一瞬耳を疑った。
こんな簡素な聴取の為に私達は残されたのか?そんな言葉が頭をよぎったが、どんな小さな事件でも事情聴取は付き物だからなと、自分を無理やり納得させた。
それよりも、早く帰って休みたい気持ちが勝ったってのが正直な所。
「……まあ、じゃあ、リリアン帰りますか?」
「えぇ~?今から?家に着くの夜中になっちゃうじゃない。ってかさぁ、こんな遅くに女の子を帰す方もどうかと思うわよ?」
リリアンが何か言いたげに目線を王子とフリッツに向けると、フリッツが大きな溜息を吐いた。
「そう言うと思って、予め部屋を用意しておきました。まあ、貴方を女の子の部類に入れていいものか考えものですがね……」
「用意がいいじゃない」
リリアンが当然の権利の様に言っておりますが、泊まるの?城に?
前世で旅行はそれなりに行ってたけど、こんな煌びやかな宿は泊まったことがない。
いや、そんな事は問題じゃない。
一緒に泊まる相手が問題。
城は唯一対象者が全員揃っている場所。そんな場所に一泊!?
ウサギが入っている檻にライオンを入れるようなものでしょ……無理無理無理!!
(休まるものも休まらない……)
今から夜道を帰る方が幾分かマシ。
「いや、リリアンちょっと!!」
私はリリアンの腕を掴み、壁際へと寄った。
「いいですか、落ち着いて考えてください。ここは城ですよ?普通の宿じゃないんです」
「分かってるわよ。城に泊まれるなんてラッキーじゃない」
「無理ですよ!!」
……寝ずの番をして貴方を見張るのは……
「折角の好意を無駄にするの?部屋を綺麗にしてくれた侍女達が可哀想だとは思わない?」
「──ぐっ」
「ちょっとグレードの高いホテルだと思えばいいじゃない」
そこまで言われると、私としても言い返す言葉ない。
私が言い返さなくなると、リリアンが「はい、決定~!!」と大層嬉しそうにフリッツに部屋に案内するように言っていた。
……これは、長い夜になりそうだ……
応援ありがとうございます!
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おもしろいわ~~!アルエ、ガンバレ😄😄
こちらもありがとうございます⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾
これも頑張って完結させますので、最後までお付き合い頂けると幸いです(_;´꒳`;):_