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荒れ狂う海を断崖絶壁の崖の上から見下ろしているのは、この国の聖女であるシャルル・デュラック。
後ろでは、この村の住人達が心配そうにこちらを見つめている。
「この海を鎮めるには、村の子供3人を差し出すしか方法がないようです」
「は!?」
あまりにも惨い事を淡々とした態度で言われ、女衆は我が子を護るように抱き抱え、男衆は怒号を浴びせてくる。
「子供を差し出せだって!?ふざけんな!」
「聖女の言い草じゃねぇ!あんた本当に聖女か!?」
シャルルは黙って村の者に向き合った。
この村に呼ばれたのは、この荒れ狂う海を元の穏やかな海に戻して欲しいと、依頼を受けての事。
ここの人達は漁業を生業にしていて、この数ヶ月は見ての通りの荒れ模様で漁に出られていない。このままでは明日の食う物にも困り、私を頼って来たらしいのだが……
「凄ェ聖女が来るってんで期待してたのに、とんだ肩透かしだったぜ」
ピクッ
「人柱を立てろなんて普通の聖女は言わねぇよ」
「偽物にしても、もっと上手いこと言うよなぁ?」
あははは!と嘲る村人に、ピクピクッとシャルルの眉間にシワが寄る。
「聖女様」
引き攣りながら笑顔を浮かべているシャルルを見て、側仕えのルイスが恐る恐る声をかけてくる。
「お願いですから堪えてください」
コソッと耳打ちされた。
残念ながら、ここまで言われて黙っていれるような聖人の域には達していない。
「分かりました」
ニッコリと満面の笑みを浮かべれば、流石に何かを察した村人らもヒュッと息を飲んだ。
「そこまで言うのなら、勝手にして下さって結構」
元はと言えば、海がこんなにも荒れている原因はここの村人達にある。
漁師と言う生業をしておきながら、命の源である海をぞんざいに扱い、獲るだけ獲って感謝の一つもしない。そりゃぁ、海の神様だって堪忍袋の緒が切れる。
おまけに、収入源が無くなり日々の生活に困った村人は、あろう事か自分の子供を売り飛ばし始めた。
口減らしも出来ていい金になると言って、真似る者が多く出た。そのせいで今、村に残る子供は3人だけ。
そう、子供を寄越せと言ったのは人柱にする為じゃない。
村の奴らが私を悪者にして子供差し出さないのは、子供を護る為じゃない。いざと言う時、自分らの生活を守るため。
(腐りきってますわ….)
シャルルは小さく舌打ちすると、子供達へと目をやった。大人と比べると随分やせ細り、艶のない髪を無造作に束ね、光の灯っていない瞳を見れば、どんな暮らしぶりをしているのかは歴然だった。
「私はあくまでもお告げとして言ったまで。実際に行うかは貴方達次第。……ですが、楽して稼ぐことは百害あって一利なし。いい加減その暮らしぶりを変えないと痛い目を見ますわよ?」
警告とも取れる言葉を残し、振り返らずに村を去った。
……──と言うのが、数分前。
今、私達は鍬や鎌を持った村人らに追われている。
「ほんと勘弁してくださいよぉ!」
「無駄口叩いてると舌を噛みますわよ」
泣き言を口にするルイスを軽くあしらいながら全力で逃走中だ。
私が言い放った最後の言葉が効いたのかどうかは分からないが、村人は子供を海へと捧げた。
だが、海は鎮まるどころか荒れる一方で、ようやく騙されたと知った時には後の祭り。当然、村人の怒りの矛先は私に向けられる。
「偽聖女め!舐めやがって!生かしちゃおかねぇ!」
鬼気迫る形相で追いかけてくる。
「捕まったら嬲り殺しでは済まない勢いですわね」
「なに呑気に恐ろしいこと言ってんですか!」
半泣きになりながらも並走してくるルイスは流石だと言える。
「男子が泣き言を言うものじゃありませんよ。それに……──あぁ、良かった。間に合いましたね」
足を止めて振り返ると、そこには一人の騎士が威圧感を放ちながら村人達の前に立ちはだかっていた。
後ろでは、この村の住人達が心配そうにこちらを見つめている。
「この海を鎮めるには、村の子供3人を差し出すしか方法がないようです」
「は!?」
あまりにも惨い事を淡々とした態度で言われ、女衆は我が子を護るように抱き抱え、男衆は怒号を浴びせてくる。
「子供を差し出せだって!?ふざけんな!」
「聖女の言い草じゃねぇ!あんた本当に聖女か!?」
シャルルは黙って村の者に向き合った。
この村に呼ばれたのは、この荒れ狂う海を元の穏やかな海に戻して欲しいと、依頼を受けての事。
ここの人達は漁業を生業にしていて、この数ヶ月は見ての通りの荒れ模様で漁に出られていない。このままでは明日の食う物にも困り、私を頼って来たらしいのだが……
「凄ェ聖女が来るってんで期待してたのに、とんだ肩透かしだったぜ」
ピクッ
「人柱を立てろなんて普通の聖女は言わねぇよ」
「偽物にしても、もっと上手いこと言うよなぁ?」
あははは!と嘲る村人に、ピクピクッとシャルルの眉間にシワが寄る。
「聖女様」
引き攣りながら笑顔を浮かべているシャルルを見て、側仕えのルイスが恐る恐る声をかけてくる。
「お願いですから堪えてください」
コソッと耳打ちされた。
残念ながら、ここまで言われて黙っていれるような聖人の域には達していない。
「分かりました」
ニッコリと満面の笑みを浮かべれば、流石に何かを察した村人らもヒュッと息を飲んだ。
「そこまで言うのなら、勝手にして下さって結構」
元はと言えば、海がこんなにも荒れている原因はここの村人達にある。
漁師と言う生業をしておきながら、命の源である海をぞんざいに扱い、獲るだけ獲って感謝の一つもしない。そりゃぁ、海の神様だって堪忍袋の緒が切れる。
おまけに、収入源が無くなり日々の生活に困った村人は、あろう事か自分の子供を売り飛ばし始めた。
口減らしも出来ていい金になると言って、真似る者が多く出た。そのせいで今、村に残る子供は3人だけ。
そう、子供を寄越せと言ったのは人柱にする為じゃない。
村の奴らが私を悪者にして子供差し出さないのは、子供を護る為じゃない。いざと言う時、自分らの生活を守るため。
(腐りきってますわ….)
シャルルは小さく舌打ちすると、子供達へと目をやった。大人と比べると随分やせ細り、艶のない髪を無造作に束ね、光の灯っていない瞳を見れば、どんな暮らしぶりをしているのかは歴然だった。
「私はあくまでもお告げとして言ったまで。実際に行うかは貴方達次第。……ですが、楽して稼ぐことは百害あって一利なし。いい加減その暮らしぶりを変えないと痛い目を見ますわよ?」
警告とも取れる言葉を残し、振り返らずに村を去った。
……──と言うのが、数分前。
今、私達は鍬や鎌を持った村人らに追われている。
「ほんと勘弁してくださいよぉ!」
「無駄口叩いてると舌を噛みますわよ」
泣き言を口にするルイスを軽くあしらいながら全力で逃走中だ。
私が言い放った最後の言葉が効いたのかどうかは分からないが、村人は子供を海へと捧げた。
だが、海は鎮まるどころか荒れる一方で、ようやく騙されたと知った時には後の祭り。当然、村人の怒りの矛先は私に向けられる。
「偽聖女め!舐めやがって!生かしちゃおかねぇ!」
鬼気迫る形相で追いかけてくる。
「捕まったら嬲り殺しでは済まない勢いですわね」
「なに呑気に恐ろしいこと言ってんですか!」
半泣きになりながらも並走してくるルイスは流石だと言える。
「男子が泣き言を言うものじゃありませんよ。それに……──あぁ、良かった。間に合いましたね」
足を止めて振り返ると、そこには一人の騎士が威圧感を放ちながら村人達の前に立ちはだかっていた。
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